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小田急線、通過

一年前の自分が、一年後のいまの自分を少しでも想像してくれていたら


君がいない夏を迎えようとしている

連絡を経ってから、梅雨前の暑さが妙に心地悪くてストロベリームーンを理由にまた連絡してもいいかな

大好きだった曲を聴いたら君と出会う前のことまで思い出しちゃった
君と出会ってからその曲たちを忘れていたことに気がついた

会っている間、私は多くのことを忘れていた
奇しくもその曲たちは君に当てはまることばかりでいろんなこと気づかせてくれたよ


初めて会ったとき、駅近チェーンの居酒屋を出た時にはもう深夜で、君はホテル代を用意するためだけにATMでお金を下ろす

Googleマップで慣れた手つきで検索したワード「ラブホ」忘れられないな

初対面で妙に馴れ馴れしいし、手つきがいやらしい、でもそれが嫌じゃない

緊張しているのは私だけで、君が被っている帽子のワンポイントを見るので精一杯、けどそのワンポイントの絵がなんだったのか最後まで思い出せなかった

透明ガラスで囲まれたお風呂
「こっち覗かないでね」

口約束を頑なに守る同士、雰囲気に合わないビートルズに陶酔する自分を今なら馬鹿だと思える

翌朝、通勤ラッシュの改札で行き交う人々と逆方向を歩く私達は人差し指でしか繋がっていない、簡単に逸れる関係性

誰もいない深夜の恋人繋ぎはなんだったの

お互い予定はないのに期末の勉強をするという理由で駅で解散した

私のこれからの一日をどうしてくれる?
電気のいらない自然光で君を目の前にご飯を食べたかった


君がいない夏、ちょっと不安だな
あの歌を聴くと全部思い出してしまうから、しばらく聴けてないの

どこかでのうのうと暮らしている君を、一方通行の私の想いを、小田急線に乗せて

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