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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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#極真

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第10話 七転八倒編(3)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第10話 七転八倒編(3)

【肉体改造】ウエイトトレーニングに没頭するフリムンに、師範から昇段審査を受けるよう指令が出た。

弐段を許されてから5年後のことであった。

前回の審査の時と違い、現役を退いてからかなりの年月が経っていた事もあり、フリムンは審査に向けある事に着手した。

そう、筋肉の質を変える「肉体改造」である。

空手用の筋肉とパワー用の筋肉は全く違う。

パワー競技に筋持久力やスタミナは必要ないが、空手の試合

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第6話 帰省編(1)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第6話 帰省編(1)

巧の技

はじまりnoはじまり今から32年前の1991年。2m100kgクラスの超大型外国人選手も出場する4年に一度の「極真世界大会」で、僅か165cm70kgの日本人選手が見事頂点に立った。

フリムン(当時25歳)が石垣島に帰省して直ぐの事である。東京に住む友人からその報せを受けたフリムンは、体を震わせながらこう呟いた。

「俺はいったい何やってんだ…」

主治医から「過度な運動は一生禁止」

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(1)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(1)

【カチコミ前日】父の眠る仏壇に手を合わせ、神妙な面持ちで物思いに耽っていたフリムン。これまで生きてきた27年と10か月という人生の中で、父と過ごしたのは僅か2年。

よって彼の記憶の中に、写真以外の父の姿は存在しない。

子を授かり、親となって初めて父の無念さを痛いほど感じることができたフリムン。

「きっと、親父も我が子に背中を見せたかったに違いない」

そう思うと、志半ばでこの世を去った父が不

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(1)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(1)

【支部最速】僅か3ヶ月で「緑帯」を取得したのは、後にも先にも沖縄支部ではフリムンただ一人。離島からの通いという特典を差っ引いても、これは快挙であった。

そのまま天狗になってもおかしくなかったが、心の中では既に黒帯のつもりでいたので、逆に物足りなさを感じていたフリムン。

そう思っても不思議ではないほど、まだまだ精神的未熟さを残していた。

そんなフリムンに対し、武の神様は容赦しなかった。

それ

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(4)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(4)

【初来島】石垣島に、師範が初めて足を踏み入れる日がやってきた。

同好会初の審査会のためである。

何だかんだで会員数も爆上がりし、同好会ながら他の空手道場よりも活気に溢れていた石垣同好会。

しかし、流石にフリムンと同じく那覇で審査を受けさせる訳にはいかないので、師範の配慮により石垣島で受けられる事となった。

ただ、大変なのはフリムンの方だ。

那覇に行けば、諸先輩方が常に近くに居るが、石垣島

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(4)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(4)

祖母の涙孫やひ孫の活躍だけでなく、道場生の育成や社会貢献に奔走するフリムンを見て、これまで空手に反対していた祖母が突如フリムンにこう言った。

「ゴメンね」
「本当に空手が好きだったんだね」
「なのに反対ばかりしてゴメンね」

そう言って涙を流し、フリムンの頬を撫でた。

祖母にようやく認めてもらえたフリムンは、今まで以上に本気で空手に打ち込もうと決意。

自身の修業だけでなく、道場生の育成、青

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第10話 七転八倒編(1)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第10話 七転八倒編(1)

転落人生20人組手を完遂して弐段位を許されたフリムンであったが、その翌年、GYMでのトレーニング中にまたもや悲劇に見舞われる。

ウエイト制県大会(今回は重量級)に向け更にパワーアップするため、当時ベンチプレスのMAXであった150㎏を持ち上げようとしたその刹那であった。

肩甲骨付近の筋肉に激痛が走り、そのまま力尽きて撃沈。その痛みたるや、まるで日本刀で切り付けられたようであった。

(切られた

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