僕は骨を噛む　7　（了）

　　七、

　ふと誰かが廊下で僕を呼んでいるのに気付いた。父が呼んでいるような気がした。

　空耳か。いや、違う。意識をそちらに傾けると声の主が兄であることに気付いた。

　何だい？　大きい声を出して答えると、大股で歩いてきた兄が部屋の戸を開けて言った。すぐ降りてこい、父ちゃんが死んだ、と。

　降りていくと皆が父のベッドの周りに集まっていた。

　座って虚ろな眼で父を見る母、亡骸にすがって泣く姉

僕は骨を噛む　6

　　六、

　母が朝食を食べさせ始めたので、僕は二階にある自分の部屋に上がっていった。

　父が言ってきた言葉を思い出していたが、その意味を考えまいとしていた。そして絵を描き始めた。またもニキ・ラウダとフェラーリの絵だった。

　しかし、何故かいつものようにいかなかった。タイヤの楕円形やバックミラーの微妙な曲線がうまく描けない。地面と平行に浮かぶウイングがぶれてしまう。ヘルメットが美しい曲面を成さ

僕は骨を噛む　5

　　五、

　父とはそれきり散歩に出かけていない。翌日から数日間雨が降り続き、晴れたらまた出かけよう、と言っているうちに十月になり、寒くなり始めていた。

母には散歩を禁じられ、二人でＦ—一レースを観に出かける計画など一笑に付されてしまった。散歩の話は話題にも上らなくなってしまった。

　ニキ・ラウダはアメリカ東ＧＰで四位に入り、二戦を残してチャンピオンを決めた。

それを報告する頃には、病状

僕は骨を噛む　 4

　　四、

　病室に戻ると、父はとっくに昼食を済ませていた。どこへ行ってたの、と母が訊いてきた。あちこち行きすぎて迷っちゃったんだ、と僕は答えた。

　お前は本当にここに飽きないなあ、と父が言った。死体を見てきたことは言わなかった。

　それ以降、病院には行かなかった。

　母にどうしてか聞かれたが、もう飽きたんだと適当に答えておいた。僕がいかなくなった代わりに、不承不承ながらも兄と姉が週変わりの

僕は骨を噛む　 3

瑞穂　陽尺

　　三、

　彼と一緒に歩いていると、本当は自分に目的があって病院内を徘徊していたように思えてきた。

　僕は何か捜していたのではないか。死の匂いをどこかで嗅ぎつけていてその源泉を突き止めてみたかったのではないか。彼の申し出に飛びついたのは、そういうことなのではないか。ずっと前から死体を見たかったのではないか。

　そう自分に問いかけながら胸は暗く高鳴っていた。

　荷物用エレベータ

9月に諏訪湖へ行ってから、また行きたいなーと思い続けてます。
下社と上社に行けたからなのか、いろいろと力が漲り直った気がして仕方がありません。縄文の昔には一大文化圏でもあったとかあるのかな。写真はスマホで撮影したから販売サイトに掲載できなかった諏訪湖の夕景です。諏訪湖いいとこ。

僕は骨を噛む　2

瑞穂　陽尺

　　二、

　ニキ・ラウダはこの年、奇跡的な復活劇を演じてみせた。この後の二戦中に一度入賞を果たし、チャンピオンに望みをつないで最終戦の日本ＧＰに臨んだ。

　しかし、富士スピードウエイで行われた決勝はコース上に川ができるほどの豪雨となった。通常なら中止になって当然の天候だったが、主催者はレースを強行した。

　しかい、ニキ・ラウダはコース状態があまりに危険だと判断し、スタートしてか

やはりnoteへの投稿は難しい。慣れの問題かもしれないけど、縦書きでないと雰囲気が出ない気がして仕方がない。あと、改行マージンの広さ。画像で投稿した方がいいのかなー。いっそのことePubを埋め込んでしまえる仕様にしてもらうとか。などとWebサービスに求めすぎだろうと自己ツッコミ。

僕は骨を噛む　1

瑞穂　陽尺

　　一、

　閉めきった部屋の中を漂う空気には形にならない父の言葉と思いがないまぜに漂い散らばっていた。

　胸と腹を侵し続ける病魔とそれに抗じる薬へ戦場を提供する痛み、変わり果てた自分への苛立ちと以前の自分への憧憬、呪いにも似た嘆き。澱んだ空気は、そこへ足を踏み入れる僕の心にいつしか忍び込み、何かを語りかけようとしてくる。

　しかし、忍び込んできた空気は何も訴えては来ない。形にな

とても長いご無沙汰の後に　m(_ _)m

こんばんは。

とても長いご無沙汰の後で申し訳ないくらいなのですが、このnoteの空気が好きなので帰ってきました。

フォローいただいた方にフォローバックもしないままで申し訳ありません。

振り返れば二年。この間にいろいろとありまして(^_^;)

マルゴ書雲としてではないのですが、電子書籍の事業案を自治体の創業支援の端くれに加えてもらって、よーし頑張りますぞと勢いはついたのですが・・。

生活を

ダウンロードとUnlimitedご購読のお礼

あれ？

のっけから疑問形で始まりますが、Amazon KDPの無料期間が過ぎているはずなのに、まだ無料のままなところです。

時間帯の問題かな・・。まあ、調べて自己解決します。

五日間の無料期間に結構な数のダウンロードをいただき、ありがとうございます。読み終えられましたらレビューをいただけると、ありがたく思います。

それに加えて、Amazon Unlimitedの方でもご利用いただきました。

ファンタジーに取り組んでおりまして

ファンタジー。数多の面白い作品が出ていますが、新しめのは十分にはついていけていません。読む時間がないと言い訳めいたことを口にしつつ。

トールキンの指輪物語、ルイスのナルニア国物語、ルグェンのゲド戦記のような定番は繰り返して読んでいるのですが、なかなか新しい世界観にスッと入っていけなくて。

忙しさもあるのですが、オツムも固くなっているのかなと反省しているこの頃です。読みたいものは、たくさんあるの

やや遅れて電子書籍リリースのご報告2

もののついでに、もう二冊も紹介いたします。こちらは瑞穂陽尺＝私が書いた「ナポリッ・カプリッ」。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%8A%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%83-%E3%82%AB%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%83-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B4%E6%9B%B8%E9%9B%B2-%E7%91

やや遅れて電子書籍リリースのご報告 1

（とても）ご無沙汰しております。

はっちいさん、野田きりんさん、スピカさん。皆様お元気そうで何よりです。男前のまやひさんは、元気どころか大活躍中だ（　‘д‘）よ。

本来の仕事の忙しさに加え、作家さん＆作品の獲得活動で半年近くが過ぎてしまいました。本来、考えていたことの実現については、芳しいようなそうでないような・・といったあたりはまた後日、ご報告させていただきますね。

マルゴ（＝丸く収まるに

公開一旦停止のお知らせ

ご無沙汰しております。

公開していた文面を一旦、公開停止いたします。

スキをいただいたりフォローしていただいていた皆様、ごめんなさい。

過去のものを含め、可能なものは再度公開させていただければと思います。