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monogatari

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記事一覧

わたし

わたし

 わたしは、夢をよく見る。夜の深い場所で、誰にも知られないようにこっそりと。
 誰も、その夢には入れない。それは、わたしだけの世界。
 なりたい自分になれる。それが夢の世界なの。
 
 そこにあなたが現れた。
 土足で、わたしの心に入ってくる。ひび割れた鏡のように、歪んだ世界を持ち込んで。
 私の夢は輝いていた。
 かつて、そこはわたしの場所だったのだ。それなのに、夜の深みにあなたがいる。ヘビのよ

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あのね

あのね

 彼女はずいぶん深く頭を下げた。
 何を祈っているのだろう。僕は頭を垂れた彼女の姿をじっと見つめていた。
 ふっと顔を上げ、僕の方を見た。泣きそうな、笑いそうな不思議な顔をしていた。感情の上で左右対称の表情だ。
 ただ、その性善とした感情の在り方がかえって、僕を不安にさせた。
 彼女はいつもそうだった。
 いつでも中庸で、まん中にいた。右にも左にも、どこにも傾くことはなかった(無論、観念的な意味で

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tatoeba

tatoeba

 例えば、僕が君に対して、昔話をしたとしよう。君はつまらない話だと笑うかおしれない。しかし、それでも、君は僕の話をじっと聞いてくれるだろう。
 それがとても大切なことなのだ思う。この時間を、小さな幸せを持つということが。
 君は、銀座の小さなカフェで働いていて、夕方になると店を出る。その後、家に帰ってから、ランニングを射時間ほどして、シャワーを浴びてから僕の家にやってくる。
 世間は僕らをカップル

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小説 sorehodo

小説 sorehodo

 それほどでもないよ。別に、この部屋から離れるのが寂しいわけじゃない。
 ただ、立地はよかったし、スーパーも近かった。その意味で暮らしやすい場所だったとは思うよ。
 でも、二人で暮らすには、少し狭かった。そして、少し古かった。日本堤の端っこで、小さな暮らしを始めた時、こんなに長く住むとは思っていなかった。もう4年になる。随分前の話だ。大学を卒業してすぐの時だった。僕らはまだ何も知らなかった。この世

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海賊

海賊

 海賊が歌う。死者を弔うために。右手には、サーベルを持った。左手にはジョッキを掲げた。荒々しい海賊たち。
 一人の若い海賊が、マストを登った。マストの先端から、遠くを眺めた。空の果てまで見えるような気がした。これが俺の生きる世界だ。
 男の目には海が映っていた。不安ももちろんあった。しかし、それ以上に希望が男の前に広がっていた。
 波がうなる。太陽が注ぐ。海面が金色に輝く。まるで財宝のようだ。
 

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namida

namida

 涙が落ちた。静かに落ちた。重力に逆らうことなどできない。なぜ、君は泣いていたのだ。最後に、そう聞けば良かった。
 吉祥寺の駅で、君と別れた。君が泣いていたと思っていた。しかし、僕も泣いていた。涙は、滴ばかりではない。心もまた泣くのだ。そう思った。
 井の頭公園をうろついた。無気力の世界をさまよって、気付けば一時間ほど経っていた。ほとんど記憶がない。ただ、肉体の意思に任せて彷徨した。何度か、自転車

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