見出し画像

海賊

 海賊が歌う。死者を弔うために。右手には、サーベルを持った。左手にはジョッキを掲げた。荒々しい海賊たち。
 一人の若い海賊が、マストを登った。マストの先端から、遠くを眺めた。空の果てまで見えるような気がした。これが俺の生きる世界だ。
 男の目には海が映っていた。不安ももちろんあった。しかし、それ以上に希望が男の前に広がっていた。
 波がうなる。太陽が注ぐ。海面が金色に輝く。まるで財宝のようだ。
  男はデッキに降り立ち、酒をあおった。太陽の熱と、アルコールで頭がどうにかなりそうだった。男は自分に酔った。希望に満ちた明日が、男の前に広がっていた。
 命をかけるしかない。それがこの船に乗るときに誓った掟だ。命なんて、そらへんにある雑草と同じだ。踏みつけられてこそ、草である。自分も同じだ。
 海賊の目には、勇気が光る。 
 海の向こうに、陸の果てに。生死の境に自分の人生があるのだ。

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?