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愛着って?〜親との関係をよくしたい人のための「愛着理論」の説明書2〜

親との関係をよくしたい人のための「愛着理論」の説明書

本マガジンでは、【親との関係をよくしたい人のための愛着理論の説明書】と題して、愛着理論について、できるだけわかりやすく解説していく。

対象としては、以下のような人に向けて、愛着理論を紹介する記事を書いていく。

✔︎親との関係をよくしたい人
✔︎子育て中の人

親との関係がうまくいかない人にとって、愛着理論の考え方は役に立つことがあるかもしれない。

親との関係は子育てに影響を与えることがわかっているから、子育て中の人にも役に立つことがあるかもしれない。

親子間の愛着の形の一致率は約70%(van IJzendoorn, 1995)

自分と親との関係を、『愛着理論』というものさしを使って客観的に眺めることで、少し冷静になって親と自分を捉えることができるだろう。
そのことが、親との関係性に何らかの変化を生じさせるかもしれない。

少なくとも自分は、愛着理論を学んで、親との関係がよくなった気がしている。

是非、一緒に学びを深めていきましょう。

■愛着って?

愛着(attachment)とは、心理学者のBowlbyによって、以下のように定義されている。

特定の他者との間の強い心理的な絆
(Bowlby, 1979/1989)

ここでもBowlbyの理論を前提として、愛着について考えていくこととしたい。

■愛着形成のメカニズム~愛着システムの作動~

赤ちゃんが危機を感じたとき、赤ちゃんは泣いて周囲に助けを求める。

その赤ちゃんの求めに応じるかたちで、周囲の大人(赤ちゃんにとって信頼できる大人)が危機を取り除くことで、赤ちゃんは平穏を取り戻し、安心を感じる。

この一連の流れは、愛着システムと呼ばれている。



たとえば、

お腹がすいたとき、赤ちゃんは餓死してしまうかもしれないという恐怖を感じる。

その恐怖に自分では対処できないため、泣いて周囲に助けを求める。

すると、お母さんがそれに気付き、お乳をのませてくれる。

結果、餓死してしまうかもしれないという赤ちゃんの恐怖が取り除かれ、平穏な状態となり安心を感じる。

この一連の流れがスムーズにいけば、それは愛着システムが正常に作動したということになる。


愛着システムが正常にくり返し作動することで、赤ちゃんの中に安定した愛着が形成されていく。

安定した愛着が形成されてくると、赤ちゃんは、「信頼のおけるあの人のところに帰れば、安心を感じることができる」という確信を持つことができる。

赤ちゃんにとっては、その信頼のおける大人が、安心を感じられる基地(愛着対象)になるということである。

そして3歳頃になって愛着の形が安定してくると、子どもの心の中に安心の基地ができてくる。

イメージとしての安心の基地が、心の中に形成されてくるということである。

■歪な愛着形成のメカニズム~愛着システムの誤作動~

赤ちゃんが危機を感じ、泣いて周囲に助けを求めたときに、誰も危機を取り除いてくれなかったり、助けを求めたにもかかわらずさらにひどい仕打ちを受けた場合、赤ちゃんは安心を感じられず絶望する。

それは、愛着システムが通常とは異なる形で作動するということである。

そのような異常な愛着システムがくり返し作動した時、赤ちゃんの中には、歪んだ形の愛着が形成されることになる。

■愛着が発達に与える影響

愛着は、育ちに影響を与えると言われている。

愛着形成と関連の深い、子どもの頃の逆境体験は、様々な精神疾患のリスクであるということが近年研究でも証明され、話題になっている。

愛着と発達との関連については、以下の4つの視点で語られることが多い。

①人を信頼するという感覚の形成

愛着は、他者を信頼することの基礎となるものである。

<危機を感じて助けを求める⇒求めに応じて信頼のおける大人が危機を取り除いてくれる⇒安心を感じる>という一連の流れ(愛着システム)が繰り返される中で、愛着が形成され、他者を信頼するという感覚が育つ。

逆に言えば、このシステムが正常に作動しなければ、他者を信頼するという感覚は育たないということである。

誰も信頼できないということは、自分にとって安心を感じられる場所がなく、常に戦闘態勢でいなければならないということでもあり、常にストレスにさらされている状態とも言える。

②自律性の促進

愛着は、自律の問題とも大きくかかわる。

赤ちゃんは、前述したように、信頼のおける大人と実際に関わりながら愛着を形成していく。3歳を過ぎて愛着が形成されてくると、子どもは自分の内面に母親イメージ(安心できる基地のイメージ)を持つ。

そうすると、実際にそばに母親がいなくても、自分の内面の母親イメージと対話をしながら、自分で自分を調節したり、コントロールしたりできるようになってくる。

それは、自分で自分を律する力、自律の力がついてくるということである。

歪な愛着が形成され、内面に適切な母親イメージを持つことができない場合には、自律性を身に着けることも難しくなってしまう。

非行などの問題行動の背景に、愛着の問題が隠れていることは非常に多い。

③共感する力の発達

親子の関係性の中で、とくに乳児期において、母親は子どもの苦痛をまるで自分のことのように感じることがある。そして、その苦痛を言葉にして赤ちゃんに返している。

「お腹がすいたね」

「オムツが濡れて気持ち悪かったね」

「痛かったね」

愛着システムが作動する中で、このようなかかわりが自然に行われているということである。

自分のよくわからない苦痛な感覚を、信頼できる大人にわかってもらえて、その苦痛に名前を付けてもらえるということ。

そのような経験をくり返す中で、共感性が育まれる。

自分の気持ちに名前を付けてもらえるということはすごく重要で、気持ちに名前が付くことで自分の気持ちを意識でき、扱えるようになる。

気持ちを扱えないと、ただ苦痛な感覚に囚われるままとなってしまう。

愛着関係をベースとして、自分が共感してもらうという経験をしていなければ、自分の気持ちもよくわからないという状態のまま成長してしまうということであり、そのような状態であれば、他者に共感するというのは難しいだろう。

④脳と身体の発達への影響

近年、脳画像研究が盛んになっており、様々な精神症状や身体症状と、脳の神経系との関連が明らかになってきている。

これまでの研究によって、不適切な養育が、脳や交感神経へ影響を与えることがわかっている。

たとえば、幼少期の親からの暴言によって、脳が委縮し、言葉やコミュニケーションをつかさどる領域に影響を与えるということは脳画像とともに示されている。

また、眠りが浅くなったり、睡眠のリズムが整わないなど、愛着が交感神経系に与える影響も示唆されている。


と、ここまで述べてきたように、愛着は育ちに様々な影響を与える。

発達障害の子が急激に増えているという話を聞くが、発達障害と診断されている子の中には、実は愛着関係に障害を抱えている子が相当数いる。

ベースは発達障害ではなく愛着障害なのだけれど、症状としては発達障害のような症状が表に出ているだけという子が少なくないのである。

自分や子どものニーズはどこにあるのか、生きづらさの背景にもし愛着の問題がありそうなら、まずはそこから意識してみるのも良いかもしれない。

次回予告

今回は、愛着の基本的な理論についての概要を述べてきた。

次回は『愛着のタイプ』についてまとめてみたい。

愛着の形にはいくつかのタイプがある。

親のどのような関わりによって、子どもの中にどのような愛着が形成されるのかについて見ていきたい。

その次は、『親の愛着スタイルが子に影響を与える』

親との関係が、今の自分にどのような影響を与えているかということを振り返って考えてもらう回としたい。

本マガジンでは、全5回の構成で愛着の理論的なところを概観したいと思うが、より理解を深めたり、自分に引き付けて考えられるようになるためには、【事例編】を設定してカウンセリングのやりとりなどを公開する方が良いかもしれないと感じた。

もし『親との関係をよくしたい人のための愛着理論の説明書【事例編】』マガジンを公開する時がきたら、是非よろしくお願いいたします。


▼親との関係をよくしたい人のための「愛着理論」の説明書


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