つきのむら

25

むーちゃん

「むーちゃん!」
 スーパーマーケットの入り口で、いきなり背後から肩を叩かれた。振り向くと、白髪頭の小柄な老婆が立っていて、私と目が合うと、しわくちゃの笑顔になった。
「やっぱりむーちゃんだ! 心配してたのよ、いきなりいなくなるんだもの」
 私はこの老婆をまったく知らない。“人違いです”と告げる間もなく、老婆は自動販売機の前まで走っていき、2本の缶コーヒーを両手に持って戻ってきた。

「少しくらい

もっとみる
ありがとうございます!ステキな日々をお過ごしください♡
2

飛行機雲

 青い空に、一筋の飛行機雲が流れていた。
「そろそろ行くわよ」
 母親に言われて振り向いた。両親の離婚のため、俺は母親に連れられて母親の実家に行く。中学進学の時期に合わせて引っ越しするのだ。そこにはあんまり会ったことがない婆ちゃんが住んでいる。
「田中君に挨拶したの?」
「ううん、後で電話する」
「そう」
 俺のつまらなそうな口調に合わせるように、母親も口をとがらせた。田中とは小学校の6年間、ずっ

もっとみる
ありがとうございます!ステキな日々をお過ごしください♡
4

しりとりあそび

「しりとりをしよう」とケースケが言い出した。
 不思議な感性を持っているところが気に入って付き合い始めたけれど、最近は疲れてきて別れを切り出すタイミングを計っている。
 この「しりとり遊び」を最後に別れよう。そうしよう。

 休日の朝、ラインがきた。『駅前の本屋まで』

 本屋の前に立っていると、またライン。『でも雨が降りそうで心配だあ』

 そっか、最初のラインの最後の文字「で」と、今来たライン

もっとみる
うわ~!!ありがとうございます!!いいこと、たくさんありますように☆
3

逆回転

 もうおしまいだ。
 俺はアクセルを思い切り踏んだが、車輪は空回りするばかりだった。
 なんでこんなことになってしまったんだろう? 時間をさかのぼってみる。

 半年前、大学時代から恋人同士だったユキと同棲を始めた。

 3か月前、俺は上司と喧嘩をし、勤めていた会社を辞めて、ユキが立ち上げたばかりの事務所の仕事を手伝うことになった。ユキは「これからは二人分、稼がなくちゃね」と気丈な笑顔を見せた。

もっとみる
ありがとうございます!ステキな日々をお過ごしください♡
1

メッセージ

 待ち合わせ時間より早くに着いてしまった。
 私と彼は毎週金曜日の午後7時に駅前で落ち合う。その約束は習慣のようになっていた。

 時間潰しに、本屋に入った。本棚に手を伸ばし、指先に触れた薄い本を手にとり、少ないページを繰る。毛糸を売りに来ている羊飼いの少年と、その町に住む少女の物語だった。

************

「こんにちは」
 少女は、毛糸を前に佇む少年に声をかけた。少年は山をひとつ越

もっとみる
ありがとうございます!ステキな日々をお過ごしください♡
1

ノウガ ツルツルノ ムノウナ オトコ

 あたしは小さな喫茶店のママさん。
 路地の奥で営業している隠れ家的な店なんで、来るのは常連さんばかり。
 これはプチ自慢だけど、ほとんど存在を知られていないせいか、芸能人も結構来るんだよ。
 誰にも言えない悩みを抱えてね。
 ほら、今日もまた一人、やってきた。

「ママ―、聞いてよー!」
 勢いよく扉を開けて入ってきたのは、恋愛のカリスマと世間で騒がれている女性タレント、かえでちゃん。カウンター

もっとみる
ありがとうございます!ステキな日々をお過ごしください♡
1

ばけもの

 同棲していた彼女と別れることになった。
 彼女は複雑な育ち方をしていて、付き合い始めたころから、
「結婚はできない」
 と言っていた。
 それでも俺は彼女の良いところをたくさん知っていたし、彼女が作るご飯は美味しかったし、彼女の笑顔が好きだったから、一緒にいたいと思った。
「複雑な事情を持った異性とは付き合わないほうがいい」
 なんていう一般論もあったが、関係ない。俺は彼女と一緒に生きていきたい

もっとみる
うわ~!!ありがとうございます!!いいこと、たくさんありますように☆
4

夢の卵がつるん

「自己アピールが足らないんだよ。もっと、自分の得意をアピールして、仕事を取るようにしないと!」
 同居人のマサトが言う。
 俺は勤めていた事務所をクビになって半年。会社勤めが向いていないと感じたので、フリーランスとして仕事ができないかと悪戦苦闘していた。しかし、元々、自己主張ができない性格のせいなのか、営業が苦手で、仕事を1本も取れていない。

「ユースケ、なにができるんだっけ? えーと、WEBデ

もっとみる
うわ~!!ありがとうございます!!いいこと、たくさんありますように☆
1

こんなとき、どうする?

「ねえ、みんなに聞きたいことがあるんだけど」
 と切り出されたのは、会社帰りのショットバーだった。ビール1杯でも気軽に寄れるこの店。いつも1人で通ううちに顔見知りになって、言葉を交わすようになったメンバーがそこにはいた。
私を含め女性3人、男性1人。話を切り出したのは、そのうちの1人の女性だった。
「夜、道を歩いていたら、すれ違ったおじさんに声をかけられたの。田舎から出てきて仕事を探して1日中歩

もっとみる
うわ~!!ありがとうございます!!いいこと、たくさんありますように☆
4

恩着せがましい

「昨日もね、夜遅くまで町内会のお祭りのチラシ作りをしていたの。誰もやる気がないみたいだから、町内会のためにやることにしたけど、意外と大変」
 私は休日の夫のための昼食づくりをしながら、言った。夫は手伝うでもなく、食卓の椅子に座ってテレビを観ている。
「お義姉さんからメールがきてたから、返事もしなくちゃならない。お義姉さん、愚痴っぽいからなだめるのが大変なの。まったく、あの人、小さいころからあんなな

もっとみる
うわ~!!ありがとうございます!!いいこと、たくさんありますように☆
2