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(36)赤毛のアナとの最接近ーーchinko to america by mano
12月になり、ジュニアとしての秋学期も終わろうとしていた。ファイナルテストを済ませれば、無事に冬休みを迎えられる。
このころのオレは、初めての映画デートの相手だったフランス語講師のアナとカフェテリアでよく話をするようになっていた。彼女を映画に誘ったのは、ソフモーになったばかりのころだ。あれからもう1年以上が過ぎている。当時に比べるとオレの英語力はかなり上達し、「英語ができないから、女性と話すのは苦手」という状態からは脱していた。
たった一度だけでも、一緒に食事をして映画を見たという事実はオレの中に大きな安心感を与えてくれているようで、アナが相手だと変な気構えをせずにいつもリラックスして話ができた。彼女も多少は親近感を覚えてくれているのか、キャンパスで顔を合わせると昔からの友だちのように接してくれる。
大学に入学してから約2年半が経ち、オレはこの土地に住むことに何とも言えない居心地の良さを感じている。アナはもちろんのこと、ここには他にもアメリカ人や留学生たちの友だちや知り合いがたくさんいる。キャンパスや町中で彼らと出くわせば、すぐに歩み寄って挨拶をし、二言、三言、言葉を交わすことが自然にできるようになった。
こうした場面が1日に何度か繰り返されると、「オレもようやくこのコミュニティの一部になれたんだな」という実感が湧いてくる。アナとのちょっとした日々の会話も、居心地の良さを感じさせてくれる大きな要因の1つだ。
アナはステファンやジャンたちのグループのパーティーによく顔を出していて、オレがたまに彼らのパーティーに遊びに行くと、楽しそうにしている彼女の姿をよく見かけた。アナは以前、ステファンのことが気になってしかたがないようだったが、2人が付き合っている様子はない。おそらく今は仲のいい友だち同士という関係なのだろう。
ある日の昼、午後の授業が始める前にカフェテリアでランチを食べていると、アナがふらりとやって来た。赤毛のアナが目の前に現れると、オレはいつもわくわくし始める。
「ヘイ、アナ! 元気?」
「うん、元気。今、午前中の授業が終わって、ランチを食べに来たの」
一仕事を終えたような表情をしながらアナは答えた。
最初は当たり障りのない話をしていたのだが、しばらくするとアナは少し嬉しそうな顔になり、朗らかな様子で話し始める。
「マノ、聞いて。実は私、来学期から2年の予定でスイスに留学することになったの!」
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