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毎週ショートショートnote

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たらはかに(田原にか)さんのゆる募企画、毎週ショートショートnoteに参加させていただいたものをまとめております。
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#短編小説

小説(SS) 「ドローンの課長」@毎週ショートショートnote #ドローンの課長

小説(SS) 「ドローンの課長」@毎週ショートショートnote #ドローンの課長

お題// ドローンの課長

  
 課長はいつも、ハエのように飛び回っている。
 小うるさいプロペラ音を響かせ、この大型倉庫で入庫作業をしているわたしたちの頭上を一日に何度も通過するのである。
 こちらの仕事ぶりを監視するために、遠隔地からドローンを操作しているらしいのだが、わたしたちにとっては邪魔以外のなにものでもない。
 どうせ課長はドローンの向こうで寝っ転がったりお菓子をぽりぽり食べているの

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小説(SS) 「会員制の粉雪」@毎週ショートショートnote #会員制の粉雪

小説(SS) 「会員制の粉雪」@毎週ショートショートnote #会員制の粉雪

お題// 会員制の粉雪
 

 その会員制サウナには、今日もたくさんのお客が集まっていた。
 体験入店にきていた宇那礼二は、店員の退屈きわまりない説明を聞き流すと、すぐに服を脱ぎ捨ててサウナ室へと繰り出した。
 五分とたたないうちに、全身から汗が吹き出してくる。頭にのしかかっていたモヤモヤも、外からの熱に意識が向いていくことで、不思議となくなっていく。エネルギーの高まり。礼二は、ここだというタイミ

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小説(SS) 「夜光おみくじ」@毎週ショートショートnote #夜光おみくじ

小説(SS) 「夜光おみくじ」@毎週ショートショートnote #夜光おみくじ

お題// 夜光おみくじ


 新年、明けましておめでとうございます。
 ということで早速、初詣にやってまいりました!
 ここ夜光神社では、一風変わったおみくじを引くことができるようです。どのようなものか、神主さんにうかがってみましょう!

「この夜光神社には、山で遭難した旅人がホタルの光に導かれたことで人里に無事たどり着けたという言い伝えが残されています。その光は、龍のように一筋に伸びたとされて

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小説(SS) 「助手席の天使」@毎週ショートショートnote #助手席の異世界転生

小説(SS) 「助手席の天使」@毎週ショートショートnote #助手席の異世界転生

お題// 助手席の異世界転生
 

 二つの世界の秩序を守るため、私たち天使には、とても重要な役割が与えられています。
 それは、混沌とする異世界に光をもたらす英雄をこの世界から送り込むことです。つまりは、特殊なトラックを使って人を適度に轢いていくのです。
 轢かれた人は、異世界で特殊な力を手にして転生するので、たいてい喜んでいます。特にここ日本では異世界願望が抜きん出て強いので、絶好の市場として

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小説(SS) 「僕のゲーム機」@毎週ショートショートnote #着の身着のままゲーム機

小説(SS) 「僕のゲーム機」@毎週ショートショートnote #着の身着のままゲーム機

お題// 着の身着のままゲーム機
 

 ゲームのセーブを終え、ヘッドホンを取ったときにようやく異変に気付いた。
 我が家の一階が火事になっている。少し前から臭いがおかしいと思っていたが、おばあちゃんが料理を焦がしたのだろうと思っていた。
 しかし部屋から降りようとしたときには、すでに火の手がそこへ迫っていた。煙で階段も見えなくなっている。ここからは逃げられないと思い、部屋に戻って窓を開けた。家の

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小説(SS) 「ハトたちのクリスマス」@毎週ショートショートnote #クリスマスカラス

小説(SS) 「ハトたちのクリスマス」@毎週ショートショートnote #クリスマスカラス

お題// クリスマスカラス  ※4,000字ほど
 

 その夜。
 ケーラと八羽の子バトたちは、多くの人で賑わうクリスマスマーケットの様子を、冬枯れの木から眺めていました。
 黄金色にきらめく屋台から、焼いたソーセージやチキンの香ばしい煙が立ち昇り、風に乗って流されてきます。
 ケーラは、ごくりと喉を鳴らしました。大きく息を吸うと、その中に甘い香りも混じっていることに気づきます。どうやら、ベリー

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小説(SS) 「あやしいタイムスリップコップ」@毎週ショートショートnote

小説(SS) 「あやしいタイムスリップコップ」@毎週ショートショートnote

お題// タイムスリップコップ

「ほう、このコップをシェイクするだけでいいのか」
「ああ。だが途中で止めたら、カウントはそこまでだ」

 繁華街のある駅の高架下を歩いていたら、路上に机と椅子を出している露天商に呼び止められた。

 いつもなら無視して通り過ぎるとこだが、妙に小綺麗な印象のある、サテン地のブルーシャツを着たガンジー似のおじいさんだったからか、促されるまま椅子に座ってしまった。

 

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小説(SS) 「一撃滅却フシギドライバー」@毎週ショートショートnote

小説(SS) 「一撃滅却フシギドライバー」@毎週ショートショートnote

お題// フシギドライバー

「これを使って、君も戦士になるミュ!」

 自室のデスクから見える窓際に現れたのは、人語を話すペンギンだった。
 そいつは、目を離すとぼくの膝の上に乗っていて、どこから取り出したのか、重そうにゴルフ器具を手渡してきた。

「不死を疑うドライバー――〈フシギドライバー〉だミュ。これを使えば、人間に化けてこの世界に潜り込んでいる吸血鬼たちをやっつけられるんだミュ」

 な

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