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一生ボロアパートでよかった

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あらすじ:自慢だった新築の白い家が、ゴミ屋敷に変貌していく。父はアル中になり、母は蒸発し、私は孤独になった。ーーー1人の女性が過去を振り返っていく。 連載シリーズをまとめました…
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2024年1月の記事一覧

一生ボロアパートでよかった⑤

一生ボロアパートでよかった⑤

 物置部屋掃除の後、私はお茶漬けを食べて、シャワーを浴びて、母の部屋で寝ました。
 私がベットに入った時、母はもう寝ていました。母はいつもクイーンサイズのベットの片側に寄って寝てくれるのですが、その日はベットの真ん中で寝ていました。きっと、私が物置部屋で寝ると思っていたのでしょう。床掃除をして、来客用の布団を出せばあの部屋で寝られないこともありませんでしたが、あの日は無性に母のベットで寝たかったの

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一生ボロアパートでよかった④

一生ボロアパートでよかった④

 ハナがいなくなってから、母はずっとイライラしていたし、父はずっと酔っ払っていて、私はずっと孤独でした。
 母が何に対してイライラしていたのかわかりませんでした。何故モノに八つ当たりするかのように大きな物音を立てて、そのイライラを私や父にアピールするのかわかりませんでした。派手な服を着る日、どこに行っていたのかわかりませんでした。何故仕事の時間がどんどん伸びていったのでしょうか。なぜどんどん笑わな

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一生ボロアパートでよかった③

一生ボロアパートでよかった③

 自分の部屋が欲しいと言った時、父は「中学生になったらお前の部屋をあげようと思ってたんだ」と、ヘラっと笑いながら私に言いました。父はこの日もお酒を飲んでいて、帰宅後ずっとダイニングテーブルの椅子に座ってテレビを見ていました。テレビ前のソファに座れば良いのに、わざわざテレビから遠いダイニングテーブルの椅子に座って、いつもぼーっとテレビを見ているのです。
 母は眉間に深いしわをつくり、わかりやすく嫌な

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