田辺マモル

シンガー・ソングライターのような者です。

田辺マモル

シンガー・ソングライターのような者です。

最近の記事

あなたのすべてを好きになるまで

僕の歌に「ラブストーリー」というのがあるんですけど、もともとはこんな歌でした。 あなたのすべてを好きになるまで Capo=2 僕はあなたの声が好きです C 初めて電話をしたときから Fmaj7 C それは気持ちよく晴れた春の朝でした Fmaj7 C Am うしろで小鳥のさえずりが聴こえました Dm7 G7 僕が「おはようございます」と言うと Fmaj7 C あなたは「おはよ」って言いました E7 Am とてもすがすがしい声でした Fmaj7 G7 あなたの声は C 僕はあなたの脚が好きです はじめてドライブしたときから あなたはショートパンツをはいてました 僕の助手席に座った初めての女性でした それはセクシーというよりも 少年のように健康的で まぶしいほどまっすぐな脚でした あなたの脚は 僕はあなたのしぐさが好きです いっしょにモス・バーガーを食べたときから あなたはこんもり挟まったレタスのかたまりを 崩さずきれいに食べようとがんばっていました 雀みたいなかわいい口もとが もぐもぐとお行儀よく動いて ハンバーガーごと食べてしまいたいほどでした あなたのしぐさは 僕があなたのすべてを好きになるまで Fmaj7 時間は要りませんでした C C7 そばにあなたがいれば他には何もいらない Fmaj7 そう思えるまで C いっしょに図書館へ行って Dm7 G7 いっしょにビリヤードをして Em A7 いっしょに夕陽をながめて D7 G その日一日で充分だったんです F G C あなたのすべてを好きになるまで Dm7 G7 C 僕はあなたのぬくもりが好きです 今でもソファに寝っころがって 背中や足をくっつけて本や映画を 観て過ごす休日が一番やすらぎます もちろんはだかのあなたのぬくもりも好きです あなたはパジャマ越しに伝わる ぬくもりの方が好きだって言うけど あなたのぬくもりが好きです 僕はあなたのまじめさが好きです 二十歳のあなたに愛してるって言ったとき そんな言葉は一生に一度言われればいいんだと 「ありがたみがなくなるじゃない」って怒られました 二人が初めて出会ったときから 20年目の誕生日おめでとう 僕はとってもうれしいんです 誕生日おめでとう 僕はあなたの顔が好きです こないだ電車で見かけた若い子に 惹かれてしまって見惚れていたら あなたに似ていることに気づきました 今もう一度出会ったとしても またあなたを好きになるんだなって思うと うれしくなってにやけていたら その子ににらまれました 僕があなたのすべてを好きになるまで 時間は要りませんでした そばにあなたがいれば他には何もいらない そう思えるまで いっしょに図書館へ行って いっしょにビリヤードをして いっしょに夕陽をながめて その日一日で充分だったんです あなたのすべてを好きになるまで 僕はあなたの思い出が好きです いつか僕の頭が呆けてしまったり 心が石のようにかたくなって 何も感じなくなってしまっても あなたへの気持ちとあなたの記憶を 失わないようにこの歌を作りました 歌えば僕は思い出します あなたのすべてを そのときに言ってもいいですか? 愛してますと

    • さよならライブ

      いつもライブが始まると G Bm7 Em 君がどこかで C D7 見ていてくれるからって Bm7 Em Cmaj7 思っていたよ B7 君の姿をみつけたら 曲を変えて いつもあの歌うたって みつめていたよ そんな君をさがす癖が C G 今も身について離れない F#m7-5 B7 Em Em7 君がくれたこのタオルも Cmaj7 G 色があせてさえ使ってるのは F#m7-5 B7 Em D バカだな Cmaj7 D7 夜毎 街をさまよっては 歌える場所を 探してる 君にもう一度 会える気がして 最後に別れの歌ひとつぐらい 僕に歌わせてくれたっていいじゃない 涙で喉をつまらせたり 声をふるわせたりしないように 歌うから 今もライブが始まると G Bm7 Em 君がどこかで C D7 見ていてくれるかなって Bm7 Em Cmaj7 思っているよ B7

      • ひとりで歩いていた

        野球関連の写真が続いていますが、たまたまです。若い頃はどちらかと言えばサッカーをやっていました。 この歌を書いたのはもう30年ぐらい前ですけど、今読むとなんだか自己憐憫が過ぎる感じがしますね。こういう歌を作ろうと思って作ったわけではなくて、ただなんとなく心に溜まっていた気持ちを吐き出して形にしたら、こんなんできてしまいましたということかなと思います。久しぶりに歌いました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ひとりで歩いていた いろんな関係を G D なおそうと努めてみても C G D 今では遅すぎて G D なにひとつ取り戻せない C G D 悲しみに G ひとりで取り残された F#m7-5 B7 Em 明日を見つめるのも C G つらすぎるよ Am7 D7 ひとりじゃ G C D7 G 僕らは別々の 生き方を探していた 日比谷の図書館で 見送った後ろ姿 思い出の中 ひとりで歩いていたら 明日を生きることも だるくなった ひとりじゃ あれほど好きだと C Bm7 誓い合った二人が Am B7 Em これほど遠いところで C Bm7 他人のふりをして Am A7 D7 期待も憧れも 擦り切れた心には 朝日のまぶしさが ひりひりと痛いほど 1995年 『目覚めたまま眠る生活』 収録曲

        • バッティングセンターに通って

          バッティングセンターに通って 今日もまた G バッティングセンターに通って Cm 135キロのボールを打ち続ける G フェンスの向こうのネットに G 156センチの君の面影を重ねている Cm G 的を狙って D 来た球を打ち続けている C Em A7 ひとりごとを言いながら C D7 B♭ 君しかいないんだよ A♭ G 僕には君しかいないんだよ B♭ A♭ G 今日もまた 街を歩いていても 気がつけば君の姿ばかりをさがしている 後ろをついていったりしてさ ふと我に返る 君がここにいるはずはない 麻薬のような中毒を紛らわすために 僕は打ち続けている 君しかいないんだよ 僕には君しかいないんだよ やっぱり君しかいないんだよ 激しく君しかいないんだよ この悲しい気持ちを Em D まぎらわすために C Cm G 今日もまた

        あなたのすべてを好きになるまで

        あなたのすべてを好きになるまで

        マガジン

        • 新曲とか、CDに入れなかった歌
          33本
        • CDになってる歌
          28本
        • カバー
          18本

        記事

          愛されちゃってシンガーソングライター

          2002年 『カセット&ガゼット』収録曲。 前回のは前に録ったものだったんで、今回のこれが2024年の歌い初めになります。今年もよろしくお願いします。 この歌は昔『愛されちゃって、マフィア』という映画があって(音楽はデヴィッド・バーン)、そのタイトルをまねた(そんなんばっかだな)。 ほんとかどうか知らないけれど言霊というものがあって、言葉にすると現実になってしまうということがあるらしい。ものは試しにと、このような歌を書いてみたのだった。しかし歌えど歌えど、一向に現実にはならない。まったく近づかない。むしろ遠ざかっている。もう声もへろへろである。もう少し実現可能そうな歌詞を書けばよかった。 -------------------------------------- 愛されちゃってシンガーソングライター Capo=-2 誕生日のプレゼントは500個 D A F#m F# G A バレンタインデーのチョコは2000個 D A F#m F# G A あーいいもんだ 天才は G D A Bm 歌うだけでモテモテなんだもんな G A7 ポップスターへの道 まっしぐら D A Bm A D A G 愛されちゃってシンガーソングライター D A Bm A D A G 世界でコンサートを開き 日本ではスタジアムクラス まいっちゃうな 天才は 作るものすべてが素晴らしい ポップスターへの道 まっしぐら 愛されちゃってシンガーソングライター いつもいつも応援してくれて Em G C C/B Am Am7/G 世界中のみんな ありがとう! F Fm G A7 あーいいもんだ 天才は 歌ってれば 生きていけるんだもんな ポップスターへの道 まっしぐら 愛されちゃってシンガーソングライター 高い塔の天辺へまっしぐら 今世紀最高のシンガーソングライター

          愛されちゃってシンガーソングライター

          愛されちゃってシンガーソングライター

          サバービアの退屈

          1996年 アルバム『ドボジデ』収録曲 今だったらこんなタイトルはつけなかったと思う。当時読んだ『サバービアの憂鬱/大場正明』という本をまねてつけたのだった。今だったらどんなタイトルにするかな? 「雨上がりには」 「西川口」 「近郊育ち」 「海から遠く」 、、、うーん。やっぱりこのままでいいか。 音割れしてます。耳障りでしたらすみません。 ----------------------------------------- サバービアの退屈 海から遠く離れて生まれ G Em 工業用地の泥で遊んだ Am D7 川は静かに流れてたけど G Em いつでも黒く汚れていた Am D7 グリーンベルトはいつもすすけて Bm E7 Am 記憶の中の空はいつも D7 しらけていた  G しらけていた  Bm 僕らは雨を待っていたんだ E7 Am 雨上がりには  Am D7 海の色をした G E7 青い空が見えたから Am D7 G 夕陽を赤く染めているのは 空気の中の埃だという だから夕焼けだけはきれいで 屋上にのぼり眺めていたもの オートレースが終わればいつも 帰る車や人で道路は ふさがっていた ふさがっていた レースに負けた人の流れは 肩を落として 西へと向かい そして何処に消えるのか 死ねずに生きてるだけだと Am D7 Bm E 言うほどニヒルにもなれないし Am D7 G G7 生きたくて生きているんだと Am D7 Bm Em 言い切るチカラもなく Cm D7 しらけていた しらけていた 僕らは雨を待っていたんだ 雨上がりには 海の色をした 青い空が見えたから 雨上がりには 海の色をした 青い空が見えたから

          サバービアの退屈

          サバービアの退屈

          ハワイの詩(後編)

          衣食住っていう基本的欲求のすべて 満たしに人はこの島にやってくる ガイドブックには買うか食べるか 泊まるかしか載っていない ハワイ 僕はビーチで鳥にパンをやっている どうしてエサをやるのって楽しいんだろう ハーイって声がして振り向いたらそこに マリナ似が立っていた ハワイ 仕事ガ終ワッテコレカラ帰ルトコロデス 楽シンデマスカ? 淋しく見えたに違いない 仕事の一環としてかもしれないけれど 僕を食事に誘ってくれた マリナニ 包丁をシャンシャン鳴らして 僕らの目の前で料理人は肉を切り刻む 生きたままのエビが殻を剥がされて 鉄板で焼かれる ハワイ マリナニは日本に留学してたことがあって どうやらアニメのファンらしい エヴァンゲリオンの話をしたら 大きな目を輝かせた マリナニ 飲めない酒の力を借りて マリナニの手をそっと握った 二人の体温は同じぐらいだった 肌の色は違っていても ハワイ 火照ったカラダを冷まそうと 夜の砂浜を二人で歩いた ハワイ対日本の鼻歌合戦が 繰り広げられた ハワイ 一緒にいて楽しければ楽しいほど 深まって行く哀しみがあった 砂の砦を作った 潮が満ちれば壊れると知っていても ハワイ 風はどこから 吹いてくるんだろう 暑くもないし 寒くもないし とても気持ちいい ハワイ ヘールボップ彗星を夜空にさがした ハワイ 星が願いを叶えてくれるなら 時を止めてくれ ハワイ 旅行者には未来はない 過去と一緒に国へ置いてきたから とても永くて短い時間を 竜宮城で過ごしたみたいだ ハワイ 空港に見送りに来たマリナニ 現地のガイドとして 旅ハイカガデシタカ?って 瞳を潤ませた マリナニ 結局ホテルの二つのベッドは 一つ余ったままに終わった またいつか会える日のために その方がいいと思ったから ハワイ 日に焼けた肌がヒリヒリ痛い やがてこの痛みもおさまると ボロボロと剥がれて落ちて行くんだろう それが悲しい ハワイ 風はどこから 吹いて来るんだろう 暑くもないし 寒くもないし とても気持ちいい ハワイ 搭乗案内がロビーに響きわたる ハワイ 日常へと還る旅がはじまる ハワイ うしろで手を振るマリナニが ハワイ マリナニがだんだん だんだんかすんで行く ハワイ ・・・・・

          ハワイの詩(後編)

          ハワイの詩(後編)

          ハワイの詩(前編)

          着いたとたんに元気が出てきてしまった ムッとした風 熱帯植物園みたいだ 冬から夏へ8時間でワープ ここはホノルル ハワイ ミナサンココニ集マッテネ下サイと言う 渡辺マリナによく似たガイドさん 一生懸命な日本語が けなげでかわいいな ハワイ ロビーに集う新婚さんの集団は みんな真新しいスニーカーを履いていた 暑いのか寒いのか短パンにストッキングで スニーカーを履いていた ハワイ 蟻とキリギリスの教訓は ハワイじゃ通用しない 蟻はここでは一年中休めない 仕事をサボってやって来たぜ ハワイ あたりを見回してみて思ったことは 子どもの頃親に連れられて行った 常磐ハワイアン・センターってこんな感じだったな 結構良くできてたんだな ハワイ 送迎バスは空港からワイキキへ パックツアーはやっぱり楽でいい 新婚さんたちはピカピカしたホテルで みんな降りてしまった ハワイ 最後ニナッテスミマセンネ いえいえどういたしまして そのおかげでマリナ似がチェックインまで 付き添ってくれた ハワイ ホテルの部屋は思っていたよりもずっと広くて ベランダからはビーチも見えた 必要のない二つのベッドが うれしいような淋しいような ハワイ 風はどこから 吹いて来るんだろう 暑くもないし 寒くもないし とても気持ちいい ハワイ 波乗り達が沖へとくり出す ハワイ ダイヤモンド・ヘッドが雄々しくそびえる 水平線に囲まれた ハワイ (別に分ける必要はないんですけど、次回に続く)

          ハワイの詩(前編)

          ハワイの詩(前編)

          そしてひとりになる

          浮気だろうが不倫だろうが その人を好きになったなら それまでずっと付き合っていた あの人と別れなくちゃ さよならごめんね かくかくしかじか 「あなたが嫌いになったわけではありません」 なんてグレープの古い歌みたいなこと言うと あの人はわーんわーんと さみしいよーって大泣きした それは予期せぬことだったから 自分でしたこととはいえショックだった 頭を殴られたように ギャグマンガのように 星が目から飛び出てぐるぐる回った 恋人であると同時に あの人と僕は友だちだったから 悲しませて僕ひとりだけ 幸せにはなれない さよならごめんね かくかくしかじか 「あなたが嫌いになったわけではありません」 けどつきあうことはやっぱりできません かと言ってあの人と 元のさやに収まるというのでは 虫の良すぎる話なので ひとりになろうと思います それはそれとて 身勝手な話だから ビンタを食らった 星が目から飛び出てぐるぐる回った そして僕はひとりになる 二兎を追うものは一兎をも得ず っていうよりはひとりになりたかった 星が目から飛び出てぐるぐるまわった

          そしてひとりになる

          そしてひとりになる

          スッカラカンな日々

          朝早く起きて 弁当を作って 子どもを送り出す 洗濯は好きな時間だ メダカにえさをやり 紅茶を飲みながら チャートを起ち上げて 今日のゆくえを占う スッカラカンな日々 かわりばえのない毎日 今 俺は誰に向かって歌ってるんだ? まっしろな画面に 文字を書き出す 感動のないところに 生まれた言葉はクソだ 何もしないまま 歳だけはとっていく 誰よりも自分が うんざりしている スッカラカンな日々 かかわりあいのない毎日 今 俺は何のために歌ってるんだ? 取り戻せ 俺の日々を 取り戻せ 俺の夢を 取り戻せ 俺の欲望を 取り戻せ 昨日も今日も 同じ気分だ さえない気分だ 早く抜け出さなくちゃ

          スッカラカンな日々

          スッカラカンな日々

          若いなお前ら

          下北は今日も若者が多くて 終電の時間も近づいてくると お酒もまわって青春エナジーも 最高潮 気恥ずかしくなるほど 若いなお前ら 若いなお前らって感じで うらやましくなくもない 男と女が道ばたで群れてる あの子とあの子はあいつを狙ってて 見え見えの気配ただよう 介抱 しようと背を向けてしゃがみこむジーンズ パンツだけではなくて お尻の谷間まで見えている お酒で赤く染まり 発情期の猿みたい だけどそれに目が釘付けに なってる僕もオス猿さ 俺は売れないミュージシャン いくつになっても下北でライブをしている 単独でホールライブができないから これはこれで楽しいけれどトイレで お客さんと鉢合わせするのが嫌だから ホールでライブをしたい 下北は今朝も若者が多くて 始発の時間も近づいてくると お酒も抜けて 青春エナジーの 残り火ばかりがくすぶって ゾンビのよう

          若いなお前ら

          若いなお前ら

          僕はお金で動いている

          長電話をした 2時間以上 電話をしたのは 25年ぶり 四半世紀ぶり LINEで話した 無料通話で 有料だったなら すぐに切っただろう 短かっただろう 僕はお金で動いている お金が僕を動かしてる 僕はお金に左右されている 無料だからって電話してる 話の中身は 昔と変わらない 何を話したか 思い出せないような 内容 内容

          僕はお金で動いている

          僕はお金で動いている

          桐谷さんを映画館で見た

          MOVIXで桐谷さんを見かけた 娘に付き合って観た アイドルが出ている映画で 娘は桐谷さんのファンでもあるので 恥ずかしがる娘の代わりに声をかけたかった けれどはばかられたので 声をかけられなかった 翌朝桐谷さんのツイート(ポスト)がトレンドに 上がっていた 昨日映画を観たことが書かれていた やっぱりあれはご本人だったんだ ファンの人たちにまじってツイートに返信したいと 思ったけれど やっぱりできなかった 裏垢を作る人の気持がはじめてわかった 娘にリンクを送って 昨夜お見かけしましたよって 返信しなよと言ったら お父さんしつこいよ もうどうでもいいよと言われたので少しモヤった 桐谷さんは座席にからだを沈めて 上映が終わった後でスマホに何かを書いていた 映画の感想でも書いていたのかな 僕は桐谷さんを見かけたことをスマホに書いた

          桐谷さんを映画館で見た

          桐谷さんを映画館で見た

          よろしくたのむと彼は言った

          並んで立ちションをした仲じゃないか お金か何かで困っているのなら 何でも言ってくれてかまわないと おそるおそる彼にたずねてみた 彼が打ち明けたのはお金のことじゃなく 仕事でもなく病気のからだのことだった もしかしたらこの一杯が 最後の酒になるかもと彼は言った からだの心配はしても しかたがない 心配なのは あとに残す息子と妻のことだ 二人を守ってやれないことだ よろしくたのむと よろしくたのむと彼は言った 言われて僕はわかったと言った 瞳の奥に静かな海が見えた 何度足を運んだだろう 彼の病室へ そこにはいつも奥さんと息子くんがいた 薬品の匂いの憂鬱さを 吹きとばすほどあたたかい団らんがあった 僕には手に入れられなかった 幸せを彼は手にしている それが命と引き換えなのだとしたら 人生はなんて残酷なのだろう よろしくたのむと よろしくたのむと言われて僕に 彼の魂が入ってきた気がした 彼の瞳で妻と子をながめていた よろしくたのむと言われても どうすればいいのかと聞くと 大丈夫 俺が導くから 何も考えずにいればいいと よろしくたのむと よろしくたのむと彼は言った 言われて僕はわかったと言った 僕のからだで妻と子を彼は見ていた 僕のからだで妻と子をながめている

          よろしくたのむと彼は言った

          よろしくたのむと彼は言った

          若者引退

          僕よりみんな楽しそう 僕よりみんなかっこいい 僕よりみんな足が長く 僕よりみんな声がでかい 誰の視線も感じない チラ見しても目が合わない 声をかけたいわけじゃない 女は見ているだけがいい 引退します若者から 渋谷で道に迷った 街より家が落ち着きます スイカをもっといっぱい食べたかった 夏が終わって行く 金より髪を増やしたい 友より子どもといたい 古着を着るとみすぼらしい 映画よりドラマが気楽でいい 引退します若者から 新しい歌が歌えない カラオケで耳が痛くなる 花火をもっと打ち上げたかった 夏が終わって行く 引退します若者から 恋して夢を語って 小指と小指からめあって 夜空をもっと見上げていたかった 夏が終わって行く 夏が終わって行く

          プレイボーイのうた

          はじめてキスをしたのは放課後の教室 キスは甘いとかレモンの味だとか聞いていたから 味がしなかったのはきっと愛がないからだと 本気で悩んだ そんなファーストキスでごめんね ユウコ はじめて抱き合ったのは公園の木の下 芝生の上で重なりあってるカップルを見習って 君の胸のふくらみにドキドキしながら その下のお腹のふくらみにも気づいてしまった チエちゃん はじめて夜を明かした 親の車の中 ガレージに忍び込み毛布にくるまった フロントガラスが真っ白になるほどの吐息の中 クラクションを蹴っとばしちゃってドッキリしてイッた カオリ 僕はプレイボーイになりたいんだ プレイボーイ 男はみんなプレイボーイ 「はじめて」をいっぱい集めて大きくなる プレイボーイ プレイボーイ はじめて人にすがった はじめて泣いてしまった はじめての失恋を何ヶ月も引きずっていた ある日 子どもの頃から飼っていた猫が死んだ あまりにもショックで僕は立ち直った 君のおかげさ ペル はじめてのひとり暮し ファミコンを口実に 部屋に誘ってビールをたくさん飲ませちゃったりして けどたいがい酔っ払って眠たくなるのは僕 覚えてないエッチほど損した気になるものはない ミキ トモちゃん ナンシー アサミ はじめて僕の言葉を聞いてくれる子に出会った 無口と言われていた僕がたくさん喋った 「やさしいとかマメだからとかそういうことではなく 好き」と言われて ようやく僕は僕になれた気がした アッコ 僕はプレイボーイになりたいんだ プレイボーイ 男はみんなプレイボーイ 「はじめて」をいっぱい集めて大きくなる プレイボーイ プレイボーイ はじめて愛がわかった 彼女と暮らしはじめて 愛は決して消えない ヒビが入ることはあっても 洗濯物を干しながら 掃除機をかけながら 生活という愛のすみかをメンテナンスしながら どうせ生まれてきたからには多くの子の人生の 登場人物になりたい それがプレイボーイの願い ユウコ チエちゃん カオリ ミキ マキ ナッチャン リカちゃん サトミ チサト そしてマリナニ 僕のことを忘れないでね 僕はプレイボーイになりたいんだ プレイボーイ 男はみんなプレイボーイ 「はじめて」をいっぱい集めて大きくなる プレイボーイ 悲しい夜は思い出して欲しい かつて君に夢中になった男がいることを

          プレイボーイのうた

          プレイボーイのうた