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ハワイの詩(後編)

田辺マモル
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衣食住っていう基本的欲求のすべて
満たしに人はこの島にやってくる
ガイドブックには買うか食べるか
泊まるかしか載っていない ハワイ

僕はビーチで鳥にパンをやっている
どうしてエサをやるのって楽しいんだろう
ハーイって声がして振り向いたらそこに
マリナ似が立っていた ハワイ

仕事ガ終ワッテコレカラ帰ルトコロデス
楽シンデマスカ? 淋しく見えたに違いない
仕事の一環としてかもしれないけれど
僕を食事に誘ってくれた マリナニ

包丁をシャンシャン鳴らして
僕らの目の前で料理人は肉を切り刻む
生きたままのエビが殻を剥がされて
鉄板で焼かれる ハワイ

マリナニは日本に留学してたことがあって
どうやらアニメのファンらしい
エヴァンゲリオンの話をしたら
大きな目を輝かせた マリナニ

飲めない酒の力を借りて
マリナニの手をそっと握った
二人の体温は同じぐらいだった
肌の色は違っていても ハワイ

火照ったカラダを冷まそうと
夜の砂浜を二人で歩いた
ハワイ対日本の鼻歌合戦が
繰り広げられた ハワイ

一緒にいて楽しければ楽しいほど
深まって行く哀しみがあった
砂の砦を作った
潮が満ちれば壊れると知っていても ハワイ

風はどこから 吹いてくるんだろう
暑くもないし 寒くもないし
とても気持ちいい

ハワイ ヘールボップ彗星を夜空にさがした
ハワイ 星が願いを叶えてくれるなら
時を止めてくれ ハワイ

旅行者には未来はない
過去と一緒に国へ置いてきたから
とても永くて短い時間を
竜宮城で過ごしたみたいだ ハワイ

空港に見送りに来たマリナニ
現地のガイドとして
旅ハイカガデシタカ?って
瞳を潤ませた マリナニ

結局ホテルの二つのベッドは
一つ余ったままに終わった
またいつか会える日のために
その方がいいと思ったから ハワイ

日に焼けた肌がヒリヒリ痛い
やがてこの痛みもおさまると
ボロボロと剥がれて落ちて行くんだろう
それが悲しい ハワイ

風はどこから 吹いて来るんだろう
暑くもないし 寒くもないし
とても気持ちいい

ハワイ 搭乗案内がロビーに響きわたる
ハワイ 日常へと還る旅がはじまる
ハワイ うしろで手を振るマリナニが
ハワイ マリナニがだんだん だんだんかすんで行く
ハワイ ・・・・・

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