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◯◯ちゃん
2024年8月23日 20:43
なんの代わり映えもない毎日。大層な夢を描くことができるほど大した人間じゃない。ああ、退屈な人生だ。今日も雲がまだらに流れる空を見つめて息を吐いた――。猫と世界。綺麗な家がある。門扉のまわりには季節の植物が。夜になれば暖かい明かりが灯り住人を迎え入れてくれる。そんな家で私は暮らしていた。いびつな家とは誰も想像がつかないであろうこの家で。どれだけ綺麗に梱包したって、どれだけ丁寧
2024年4月22日 21:09
『どうぞ、こんな日には1杯のココアを。』のリレー小説を終えた2人で座談会を開いてみました。曇戸晴維先生 (以下 曇)◯◯ちゃん (以下 ◯)『どうぞ、こんな日には1杯のココアを。』前編後編まずはじめに軽く自己紹介をお願いします!◯:はじめましての方ははじめまして!そうじゃない方はいつもお世話になっております、◯◯ちゃんです。普段は小説と"エッセイ、のようなもの"を投稿
2024年4月20日 21:00
※こちらの作品は、曇戸晴維先生とのリレー小説です。雨が降っている。ここ最近降っていなかったからか、ここぞとばかりに派手な音を立てて降っている。この様子だと桜は早々に散ってしまいそうだ。夜中泣いていたのだろうか。開きにくい目をどうにか少しこじ開けて、時間を確認した。「まだ寝られるじゃん…」アラームが鳴るまで2時間ほどあった。どうしようか。このまま起きても支度をしているうちに眠た
2024年4月14日 21:05
「重なり合ったところで、幸せでいられたらいいよね。私たち」***月曜日。***午前8時。 目が覚めた。何も考えずとも勝手に洗面所へ向かってくれる身体。顔を洗って髭を剃り、Yシャツに着替えた。 そっと気配を消して、寝室の扉を再び開くと穏やかに寝息を立てている妻の姿があった。 気配を消さずとも彼女が目覚めることはまずないのだが、自分が立てた物音で安寧の睡眠を妨害したくない。今
2023年7月30日 22:02
「俺、YouTuberになる」結婚3年目、ある日急に夫がYouTuberになると言い出した―――2人の結婚生活生まれて32年、大体のことは要領を得て上手くやってきたと思う。きっとこうなるから、今のうちにああしておこうなんて風に、予想を立てて行動してきた。外れたことの方が少ない。 なのに、なのに。 これが青天の霹靂というやつか。夫の祐二(ゆうじ)とは結婚して丸2年。今日から3年
2023年3月24日 17:11
◎鈴蘭科・属:キジカクシ科・スズラン属英 名:Lily of the valley花言葉:『再び幸せが訪れる』***彼との出会いは、ふらっと立ち寄った大衆居酒屋。―私の世界にあなただけじゃ、私はだめな女になってしまう。「鈴蘭って、俺がいなくても生きていけそうだよな」よく聞く台詞。使い回された台詞。あなたたちだってそうじゃない。私じゃなくちゃいけない理由なんてないくせに。
2023年3月18日 22:40
◎菜の花科・属:アブラナ科・アブラナ属英 名:Turnip rape ・ Chinese colza花言葉:『快活』『明るさ』***彼との出会いはSNSのコミュニティ。―他にもたくさん人はいたけど、それでも好きになったのはあなただけなの。コミュニティのメンバーが結婚することになった。「何かプレゼントしよう」言い出しっぺは私だった。最初は本当に思いついただけ。結婚は人生の
2023年2月14日 21:45
「ただいま…」薄暗い玄関にか細い声が響く。電気のスイッチへ手を伸ばした。暖かい光が自分を称えてくれる。「今日も社会の歯車よく頑張ったね!」とでも言っているのだろうか。1日共に頑張ってくれたストッキングを脱ぎ捨て、洗濯カゴがあるであろう方面へ放り投げた。ひとり暮らしを始めたばかりの頃は、このカゴが満杯になる前に洗濯機を回そうなんて思っていたっけ。いつ雪崩が起きてもおかしくない洗濯物を
2023年1月21日 22:53
パソコンのファンの、キュイーーーーーーンという甲高い声で目が覚めた。いつも隣で猫みたいに丸まって、時々鼻をすすりながら眠っている彼女の姿はなかった。珍しい。俺が眠っている間に起きることなんてほとんどないのに。どうせしばらくしたら勝手に寂しがって、俺の背中に額を擦りつけに来るだろう。アイツの所在など確かめようともせず、携帯電話をいじり始めた。俺の周りには、常に一定数、飼い犬のような女
2021年7月20日 00:45
薄暗い部屋にあるのは、乱雑に置かれた漫画としわくちゃの布団、それから夕飯に食べたカップ焼きそばのゴミ。傍らの携帯電話からは、特に親しくもない女の寝息が聞こえてくる。この女は僕より歳上なのに、気まぐれでわがままで小さな女の子みたいだ。気まぐれとわがままの違いってなんだっけ。まあいいや。夜中に突然電話をかけてきては、かすれた声で僕の名前を呼ぶ。その声を聞く度に、胸の奥がきゅっと締めつけら