私は、コーヒーが飲めない。
「ただいま…」
薄暗い玄関にか細い声が響く。
電気のスイッチへ手を伸ばした。
暖かい光が自分を称えてくれる。
「今日も社会の歯車よく頑張ったね!」とでも言っているのだろうか。
1日共に頑張ってくれたストッキングを脱ぎ捨て、洗濯カゴがあるであろう方面へ放り投げた。
ひとり暮らしを始めたばかりの頃は、このカゴが満杯になる前に洗濯機を回そうなんて思っていたっけ。
いつ雪崩が起きてもおかしくない洗濯物を薄目に見ながら、心の中で謝罪した。
ごめんよ、下の方に収まっている子たち。君たち