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私のお守りのおはなし。

※一部センシティブな内容を含みます。
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2022年11月12日。

外は晴れていた。
今日は私が念願のお守りを手に入れる日。

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高校生の頃、反抗期と思春期がいっぺんにやってきて、自分が嫌いで子ども扱いしてくる大人が嫌いで、濁った水槽みたいなこの世界が大嫌いだった。
自分の周りの人を苦しめるものを吸い込んで、一緒に消え去ってしまいたいと本気で考えていた。

今思えば自傷行為の1つだったと思う。

ピアスを開けた。
病院で開けること、自分のお金で開けること、そしてこれ以上開けないこと。
母との約束だった。約束は守れなかった。

よく知りもしない男と寝た。
若さで輝く宝石を手軽に手に入れたい大人がたくさんいることを知った。
自分の身体はそれなりに魅力があるということを知った。
その瞬間だけは、違う名前を通して、そこにいる私のようなものが愛される。生ぬるいお湯にぷかぷか浮かんでいる気分だった。

特段惹かれたのがタトゥーだった。
確か初めて見たタトゥーは水彩絵の具を垂らしたようなデザインだった。
なんて綺麗なんだろう。
素直にそう思った。
自傷行為で汚れたと思い込んでいる自分を、少しでも綺麗な存在にしたかった。

***

社会人になった。
社会は今まで以上に冷たく、真冬のような世界だった。

「冬はやがて暖かな陽気を運んできてくれる。」
ずっと綺麗事だと馬鹿にしていた言葉は真実だった。
様々な苦難に自分なりに立ち向かい乗り越えた先には、充実した日々が待っていた。
頼れる家族や友だち、やりがいのある仕事、垣根を越えて関われる職場の人たち。
恵まれた環境にいることが自覚できる自分もいた。

でもどこか寂しくて、大きな器に大事なものがたくさん入っているはずなのに、どうしてもわずかな隙間が気になってしまう。

また、消えてしまいたくなった。

そして決断した。
次、消えてしまいたくなったら憧れのままになっていたタトゥーをいれよう。お守りにしよう、と。

***

花は強くて脆い。そして、とても美しい。
高校生の頃「儚くて脆い存在になりたい。綺麗に散っていきたい」そう切に願っていたが、時を重ね少しは大人になれたのだろうか。
今は守りたいものがある。
脆い部分とともに、強く生きていきたい。
自分への応援、約束のようなお守りを手に入れた。

右腰に、小さいけれど存在感のある、かすみ草をいれた。
花束に添えられることの多いかすみ草は、脇役だと捉えられがちだ。
でもこの子だって綺麗に咲けるし愛らしい。
しかも脇役なんて素敵じゃないか。
周りの花たち立てて、でも私も可愛いんだよって。
そんなところがだいすきだから。

***

お守りを手に入れた今も、夜の闇に溶け込んでしまいたくなるときはある。
それでもこの子のおかげで私は前の私よりがんばれている。
そんな自負を抱きながら、私は今日も生きている。

私もいつか、綺麗に咲けますように。

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