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あなたの願い事お引き受けします。ワタクシ、悪魔が…②

ピピ…ピピピ……
朝が来た。私が頼んだわけでも呼んだわけでもないのに、来なくていいのに、毎日律儀にやってくる朝。
毎晩、朝が来ないことを、目が覚めないことを願ってるのに。
いろいろな後悔や悲しみ、怒りや妬みに恨み、どうして?なぜ?の負の感情が頭の中で、鳴門の渦潮のように激しくぐるぐるとめぐって、ベッドで横になっているにもかかわらず立っていられないような眩暈で、頭と心を揺さぶられる。そして、いつのまにか眠っている。
それが最近の毎夜の私のルーティン。

私はフラれた。いや、はっきり言えば棄てられた。しかも、突然…。
6年半付き合って、プロポーズされて結婚の約束をしていたフィアンセに。
原因は、彼の会社の後輩の女。仕事のフォローや相談やらと、いろいろと甘えられ頼られて、告白されてその気になったらしい。
もちろんその女は、彼にフィアンセがいることを知った上で私から奪い取るという計算ずくのクズ女。彼もとんだ女の罠に引っ掛かったものだ。

『レイちゃんは、俺がいないとダメなんだ。俺が守ってやらないといけない位、弱い子なんだよ。解ってくれるだろ?』
(いや…わかんないし、わかりたくもねぇよ!!)
たまたま近くにいる、赤の他人の会話がなんとなく聴こえてきたような、くぐもった声を虚ろな目でボーッと聴きながら、私は心の中で突っ込みだけは忘れていなかった。

『真美はさ、もういい歳の分別にある大人だし、仕事もそれなりに出来て収入もある。それにキチンと小綺麗に生活出来てるじゃん。俺がいなくても1人でいける強い女だろ?レイちゃんは、真美と違って、俺なしでは生きていけないか弱い女なんだよ。』

はぁ…こいつもこの程度の男だったんだ。
かばんの底に埋もれていた、溶けて包み紙にこびりついた、甘ったるい飴ちゃんのような、誰かに拾われくっついていないと生きていけないような女がお好みだったんだ。

別れの理由も、台詞も使い古されたド定番。
せめて関西人なら、もう少し捻れよ!ギャグくらい織り混ぜてちょっとは笑かせよ。
しかも、なんでこんなときだけ、標準語なんや!
普段は関西弁丸出しのくせして。
お前はその飴ちゃん女に、心だけじゃなく、関西人の魂まで売ったのか?
捨てられたことより、そっちの方に無性に腹が立ったわ。


「プッ…」
何処かで誰かが吹き出していた。
薄暗い、それでいてゴージャスな感じの赤と黒を基調とした部屋。イメージ的にSMの女王様のいる、SMプレーの部屋のような?行ったことないから、知らんけど。
ポツンと置かれている、高級感Maxの1人がけのソファーに座る赤黒いシルエット。
何かを見つめながら、くくくっ…と小さく笑っている。その笑い声はドンドン高らかになり、RPGのラスボスが登場するような様相を漂わせている。

「見ーつけた!やっと見つけた。さぁ、ショータイムの始まりだ!楽しもうじゃないか!」

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