Makoto OTSUBO (FaultMAN)

1978年福岡県生まれ.つくばの研究所にいる,のらりくらりマイペースの地球惑星科学者.…

Makoto OTSUBO (FaultMAN)

1978年福岡県生まれ.つくばの研究所にいる,のらりくらりマイペースの地球惑星科学者.専門は沈み込み帯での地殻変動(地質や地震など).目の前の自然の成り立ちに素朴な疑問をもって研究.web: https://staff.aist.go.jp/otsubo-m/index.html

最近の記事

2022年を振り返って(野外調査など)

久しぶりのnoteへの書き込みです。コロナ禍となって数年がたち、withコロナを生活の中で実感しながらの毎日ですが、野外調査や研究発表などの出張はおおむね問題なくできるようになってきました。 そこで、2022年を振り返るということで、2022年に野外調査や研究発表で出張した場所で印象的だったもの5つを取り上げてみたいと思います。 ①淡路島のデュープレックス構造 2度目の淡路島での野外調査でした(2022年3月)。写真は和泉層群と呼ばれる白亜紀の砂岩泥岩互層。教科書に乗りそ

    • 自然災害に向き合う:普段からできること

      これからゴールデンウィーク,今年は新型コロナの感染拡大が収まらず外出を控えることも多くなりそうな連休ですが,皆さんは外出した時に方角を意識することありますか?例えば,「外で北がどっちの方向なのか?」など. 2011年3月11日に発生した東北地方太平沖地震(マグニチュード9)によって東日本大震災で甚大なる被害があって10年が経ち,「自然災害に対して普段から何かできないか?」と考えていました.その1つとして,自然災害に対してとっさに避難する時に方角の感覚は命を助けることがあると

      • 50になって振り返ってみる

        2021年度がスタート.これは年齢が50になったのではなく,研究業績(査読付きの論文公表の数)が50になったというお話(年齢は40代前半です). 業績主義うんぬんと言われる昨今ですが,ここでは業績の数そのものについての考えは置いといて,大学院入学からおよそ25年が経った今,査読付き論文の掲載数が50となった節目で感じたことを書きたいと思います.私の最新の研究業績は以下の私のwebサイトをご覧ください. 昔,特に30代前半までは,「単著論文(自分だけが著者の論文)が素晴らし

        • 地震が起こって思うこと4

          3月15日未明に和歌山県北部を震源とする地震があり,最大震度5弱の揺れが観測されました.この地震について情報を整理したいと思います(必要に応じて情報を随時更新します). 防災科学技術研究所Hinet(高感度地震観測網)の情報によると,この地震は震源の深さが10 kmと浅い地震(後ほど4 kmほどと訂正)で東西方向からの圧縮軸を持つ逆断層型地震でした(下図の発震機構解の見方は気象庁webを参考にしてください).この逆断層型地震は和歌山県北部周辺では一般的な力の場で発生した地震

        2022年を振り返って(野外調査など)

          学術研究船で海底探査!

          久しぶりの投稿です.2021年1月23日〜2月8日までの17日間の日程で,学術研究船「白鳳丸」による東シナ海での調査航海に行ってきました(下の写真は出港地の那覇で撮った白鳳丸と私). この航海では,24時間体制で調査を行っていました.日中は海底の泥や岩石の採取,夜は海底地形の調査,と盛り沢山の調査でした.私はこの調査航海で主席研究者(乗船した研究者たちのリーダー役)として,調査航海の計画を練ったり,航海中の調査作業の段取りや調整をしていました.学術船を使った調査では,陸上で

          学術研究船で海底探査!

          巨人の肩の上に立つ

          ここでの「巨人」はプロ野球の読売ジャイアンツのことではありません.研究者にとって,9月~10月はもっとも研究集会や学会が開催されることが多く,現在進めている研究の成果をいったん整理する時期にもなります.今年の研究集会や学会はオンライン開催が多く,各方面で手探りの中での研究成果の発信となっています.研究成果の発表が終われば,発表内容を論文としてまとめていきます.理想は研究発表するタイミングで,論文も一通り書き終えているのが理想だと思っています. 研究を進めていくのに欠かせない

          巨人の肩の上に立つ

          断層が作った粘土でおちょこ

          新型コロナウイルス感染拡大防止の徹底ということでなかなか野外調査や出張が難しい日が続きますが,野外調査の合間にこんなことしていますよ,という紹介です.断層関係の野外調査の休憩時間に,気分転換に断層粘土(断層活動で岩盤が擦れ合ってできた粘土,断層ガウジとも言う)でお猪口(おちょこ)を作ったりしてます. 活断層であれば,断層の中心部分からかなり新鮮な粘土を手に取ることができます.断層運動でもまれただけあってかなり緻密な粘土となっていることが多く,「この粘土だったら陶芸に使えるの

          断層が作った粘土でおちょこ

          恩師からもらった言葉

          9月に入り,学会(研究集会)のシーズンになりました.今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点で学会はオンラインでの開催が多く,研究成果発表の場も"新しい様式"が色々と始まっています. 私の研究分野で関係が深いつある地球科学系の学会で,京都大学大学院時代の恩師が学会賞(その学会では最高の名誉)を受賞されました.恩師にとって初めての博士号取得者であった私としては,恩師の学会賞受賞にとても感慨深いものがあります. 学会賞表彰は,9⽉13⽇(⽇)14:00から1時間程度,以下の

          恩師からもらった言葉

          地下でのフォースをどう感じるか?

          地面の下にどんな力(フォース)が働いているか目には見えません.じゃあどうするか?という話です(スターウォーズの話ではありません,あしからず). 地震が起きたり,火山が噴火したり,ゆっくりと時間をかけて地面がたわんだり凹んだり,などから間接的に地面の下で"力のかかっていること"を私たちは知ることができます.岩石に働く力(厳密にいうと応力)の単位はPa(パスカル)です.例えば,地下の岩石が◯◯の分だけ歪んでいる→この岩石の硬さは△△である→△△の硬さをもつ岩石が◯◯の分だけ歪む

          地下でのフォースをどう感じるか?

          説明するのに例え話は必要か?

          難しい話(難しいと思う話)を相手に分かりやすく伝えるために,例えを使って話すことはよくあります.新型コロナウイルス感染拡大防止では,ウイルスを乾いていないペンキという説明は,なるほどイメージしやすいと思いました(以下のリンクを参照). ただし,場合によっては,例えを使ったことで伝えたいことが相手にとっては分かったような気がするだけで,実はその相手にとっての理解には遠回りしている気がすることもあるのでは?と疑問が. 伝えたい内容が相手にとって難しくても(難しかったとしても)

          説明するのに例え話は必要か?

          七夕でふと考える地球の鼓動

          7月7日は七夕,天の川の両岸にいる織姫と彦星が年に一回出会う日. 七夕にちなんで,遠く離れたものたちが出会うことをプレートテクトニクスで物語ってみようと思います.下の図のように,太平洋プレートが日本列島の下に沈み込んでいます.太平洋プレートの上にあるハワイ諸島は太平洋プレートが西に進むことでだんだん日本列島に近づいています. (出典:地震調査研究推進本部『地震発生のメカニズムを探る』) 太平洋プレートは年間10 cm弱で西に進んでいるので,数百万年先,数千万年先に,日本

          七夕でふと考える地球の鼓動

          Earthquakeの発音は難しい

          Earthquake(地震)は断層の研究では頻繁に使う英単語です.Earthは「地球」ですが,この英単語は日本語の発音にない「r」と「th」が続いていて日本人がかなり発音しづらい単語です. 2017年に1年ほどアメリカ地質調査所(USGS)への留学でアメリカ・カリフォルニア州に滞在した際,私の「アースクエイク」の発音がなかなか通じませんでした.特に,一般の現地の人たちにはまったく通じずショックでした(カリフォルニア州の一般の人たちは地震のことはよく知っています). 研究者

          Earthquakeの発音は難しい

          過去は将来を考えるヒント

          過去を知ることは将来をイメージするヒントになるという話です.私が日頃研究で取り扱っている地球科学,その中でも地質学はまさに過去を解き明かす学問の一つです.今から2万年くらい前だと一番新しい氷期の時代で海水面が今よりも100メートルは下がっていた時期,2000万年くらい前だと日本列島にあたる地域が大陸から離れていく時期,1億年くらい前だと恐竜が繁栄していた時代.このように人間生活の時間のスケールを超える過去にはロマンを感じたりするもの.でもそんなロマンに興味を持たない人にとって

          過去は将来を考えるヒント

          地震が起こって思うこと3

          地震の規模を示す「マグニチュード」について.マグニチュードは1上がると約30倍,2上がると約1000倍というものさしです(大雑把に).戦後で代表的な海溝型巨大地震としては,1946年南海地震はマグニチュード8.0,2011年東北地方太平洋沖地震はマグニチュード9.0でした.内陸地震(活断層での地震)では,1995年兵庫県南部地震はマグニチュード7.2,2016年熊本地震はマグニチュード7.0でした. 同じような場所で起こる地震では,マグニチュードは「地震を起こす断層面の面積

          地震が起こって思うこと3

          100万年の鼓動を感じる

          私たち地球科学の分野で地殻変動を研究する時には「100万年」を一つの単位として扱っています.いわゆる地質学的な時間スケールと呼ばれる時間の単位です.100万年というと途方もなく長い年月ですが,46億年の地球の歴史から見れば一瞬かもしれません. プレートの沈み込み方向が変化する/変化しない,を議論する際の最も短い時間の単位がおおよそ100万年と考えられています.ここで100万年を最小の単位と考える理由は,これより短い時間でプレートの沈み込み方向が変化した記録が地球上でないため

          100万年の鼓動を感じる

          地球の薄い皮の上で生きている

          「地球の表面が何でできてるのか?」について,以下のwebサイトでは地球の構造を解説しています. 地球の表面を覆う地殻の厚さは,地球の半径約6500 kmのうち最大でも50 km足らず.地球表面の質量は地球全体の1%未満です. (出典:地球内部の構造.地震調査推進本部「地震の発生メカニズムを探る」ここでは物質的な構造区分を示す.) そんな薄い皮の上で私たちは地震や火山などの地球の鼓動を感じています.地震や火山の災害を含めた自然がもたらす災害のたびに,「自然の力は人間にとっ

          地球の薄い皮の上で生きている