見出し画像

断層が作った粘土でおちょこ

新型コロナウイルス感染拡大防止の徹底ということでなかなか野外調査や出張が難しい日が続きますが,野外調査の合間にこんなことしていますよ,という紹介です.断層関係の野外調査の休憩時間に,気分転換に断層粘土(断層活動で岩盤が擦れ合ってできた粘土,断層ガウジとも言う)でお猪口(おちょこ)を作ったりしてます.

活断層であれば,断層の中心部分からかなり新鮮な粘土を手に取ることができます.断層運動でもまれただけあってかなり緻密な粘土となっていることが多く,「この粘土だったら陶芸に使えるのかも?」とふと思ってしまいます...ということで,断層調査で新鮮な粘土を見つけた時は,その粘土から「お猪口(おちょこ)」を作って写真を撮っています.その土地の地質を反映して色々なおちょこが出来上がります.

下の写真は岐阜県飛騨高山地域にある活断層の一つである,「跡津川断層」の断層粘土で作ったおちょこです.

画像2

黒っぽくみえるのは断層運動によって断層粘土ができる時にグラファイト(石墨)が断層の中心部分に集まったためと考えられています.同じ跡津川断層でも花崗岩(御影石,みかげいし)がもとになってできた断層粘土は白っぽくなります(下の写真).

画像3

このおちょこで調査地の地酒を楽しんだら格別...と思いながら,調査中は断層のすべりメカニズムや地震発生メカニズムを考えたりしています.色とりどりのおちょこでお酒を飲めば地球の味が楽しめる...蛇紋岩由来の断層粘土で作ったおちょこでお酒を飲めばマントルの味がするかも...とちょっとロマンが広がります.野外調査の合間に作成したおちょこは私のホームページで詳しく紹介しています(随時更新予定).2020年3月までは陶芸家が主役の朝ドラ「スカーレット」やっていましたね.

断層粘土・断層ガウジは,断層が滑った時に深さ数kmという比較的浅い深さでできる断層岩です.それより深いところでは,カタクレーサイト,マイロナイトという断層岩が形成されます(下の図参照).深さの違いで断層岩のタイプが異なるのは,地下は深くなればなるほど圧力と温度が上昇するためと考えられています.

スクリーンショット 2020-05-18 23.41.09

(出典:大鹿村中央構造線博物館web

なお,これらの断層粘土のおちょこたち...陶芸家曰く「このまま焼き上げると空気抜きしていないため必ず割れますよ」とのこと.陶芸は「菊練り3年ロクロ10年」と言われる通りすぐにできるものではなく,陶芸家への道(?)はまだまだ厳しいです.

また,これらの断層粘土のおちょこは,講談社Bluebacksさんの「ブルーバックス探検隊が行く」のインタビュー記事,迫る南海トラフ地震!「予知」のカギを握る「地盤と水」の意外な関係でも取り上げていただきました.

このインタビュー記事は8/3に産総研からプレスリリースした研究成果「プレート境界付近に存在する水は地震後も高い圧力を保持」をもとにした地震の研究成果に関する記事ですが,この研究成果についてはまた後日にでも.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?