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学術研究船で海底探査!

久しぶりの投稿です.2021年1月23日〜2月8日までの17日間の日程で,学術研究船「白鳳丸」による東シナ海での調査航海に行ってきました(下の写真は出港地の那覇で撮った白鳳丸と私).

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この航海では,24時間体制で調査を行っていました.日中は海底の泥や岩石の採取,夜は海底地形の調査,と盛り沢山の調査でした.私はこの調査航海で主席研究者(乗船した研究者たちのリーダー役)として,調査航海の計画を練ったり,航海中の調査作業の段取りや調整をしていました.学術船を使った調査では,陸上での調査では見ることができない機材が多くあり,今回はその一部を紹介したいと思います.

学術船の設備紹介①エアガン 地下の構造を調べる反射法地震探査の震源となる機器.エアガンで地震波を発震し,海底やその下の地層境界面で反射して戻ってきた波を観測船から曳航しているストリーマーで受信.一定間隔で海の中でドン!と発破します(下の私のTwitterに投稿した動画をご覧ください).

学術船の設備紹介②ピストンコア 海底面下最大数mまでの堆積層を乱さずに採泥を行うことができるサンプリング機器.頭に重りがついており,フリーフォールでピストンコアラーを自由落下させて採泥します.硬い層や砂の層にはピストンコアラーは刺さりません.

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採泥後はパイプを半割して半分を記載用(Archive halfという)に,もう半分を分析や測定用(Working halfという)に使います(下の写真はWorking half).学術船でのサンプリングに限らず,地球科学の分野でのコアについては,半割した半分は保存して残しておくことが多いです(後々の研究者が観察できるように).

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学術船の設備紹介③ヒートフロー 海底面下の地殻熱流量を測定する機器.槍に温度計をいくつも付けて,槍をピストンコアと同じように自由落下させて海底面に刺します(槍自身が温度を測定するわけではない).例えば,地下にマグマがある場所だと地殻熱流量は高くなります.

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学術船の設備紹介④ドレッジ ワイヤーにカゴや網を付けて海底に下ろし,そのワイヤーを船上で操作しながら海底をガリガリと引っ掻いて岩石を採取する機器.引っ掻いた後は,ドレッジを船上にあげてみないと岩石の収穫は分からないことが多いです.

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海の研究では調査の目的によって様々なタイプの船が動いています(下のJAMSTECのwebをご覧ください).これらの船に乗船して研究を行うためには,研究プロジェクトに参加したり,自ら調査航海計画を提案して採択される,などの手段があります.

今回の調査航海は新型コロナウイルス感染がまだまだ収まらない中での実施となり,事前のPCR検査や感染予防の徹底など,乗船する前から緊張感のあるなかでの乗船となりました.大きなトラブルもなく,天候にも恵まれ(天候はものすごく大事!波が高くなると調査できないばかりか,どこかの最寄りの港へ避難することも),調査航海を無事に終えて東京港晴海埠頭に帰って来た時はホッとしました.海の研究に興味がある方はぜひ調査航海に参加してみてください.

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(写真:東京港晴海埠頭に帰港した時の白鳳丸)

海のフィールド科学の魅力については,2021年5月2日付の現代ビジネス記事「海洋学者もやっぱり船には酔う!フィールド科学の魅力とは何か?」で紹介されています(以下リンク参照).ここでは,海洋の科学,研究船(白鳳丸やしんかい6500),サンプリング,分析,成果公表など,海のフィールド科学について紹介されています.


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