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台風 FENと猫とピンクフロイド

 関東地方台風直撃。

 一日中家にいるのは久しぶりだ。旦那さんと近所の焼肉屋に焼肉定食を食べにいったら臨時休業だった、頭の中は「焼肉定食」一色だったが、即座に切り替え同じビル内の天ぷら屋さんに入る。
 生ビールと「天ぶら定食」
 喉が鳴る。昼間のビールはウマいな。年なので一気というわけにはいかないが愉快な気分で飲んだ。自分の若いころ、大学生たちは未成年であっても豪快に、まぁ無知のまま野放図に飲んでいたように思う。アルコール中毒で救急車に乗った知り合いがいたな。いつもマックレガーのGジャンを着ていた、アングラ演劇サークルを主宰し、各種報道機関に出入りしていた。マックレガーか、今もあるのか?
 彼は今、はて。今、どうしているのだろう?
 はて。今、どうしているのだろう?と時折気になる知り合い、あるいはまぁ、友人が何人かいる。なぜ音信不通になったのかの記憶もほとんどない。だが、今、手許に連絡先はない。
 かれらと二度と会うことはないだろうが、私の記憶の中に彼らはいろんな風情で存在している。おそらく彼らの記憶の中にも私、がずいぶん不格好に存在しているのだろう。
 みな、若かった。この一言はわりと効果的に記憶をぼかす。

 天ぷら定食
 海老2本。揚げ方がそれぞれ異なるように思うが、はて、なにが違うのかがわからない。シソを巻いた魚の天ぷら。かぼちゃ。サツマイモ。まいたけ。おくら?だったかな。
 天ぷらは塩で食べるのが通だとどこかで聞いたことがある。自分は通にはまったく興味がない。いつものようにつゆで頂く。頂く、と書いたが、いや、庶民だし、頂く、とか気取るのもなんだか照れる。こういうところに育ちが出る。否、母はていねいに育ててくれた、私が勝手に粗野を選び今現在に至る。

 友だちからライン
「今日は一日家だよ。洗濯機回して韓国ドラマ見る」
 昼間のビール効果か眠くて仕方ない。ラインの文字がかすむ。韓国ドラマ、自分はどうも抵抗がある。日本人女性はなぜだろう「韓国ドラマ」を好む傾向があるように思う。だが私は手を出す気になれない。
 最近「韓国製化粧品のいくつか」がいかに優れているか、特にコストパフォーマンスがイイかを知り、ある意味で屈服した。いいものはいい。結果、手持ちの化粧品のほとんどが韓国製になっている。韓国製2000円のローションに、名前がすぐに出てこないが、綾瀬はるかさん、かつては桃井かおりさんのCMで話題になった1万以上する高額化粧品と同じ成分が含まれているとの情報を友人から仕入れさっそく当該韓国製ローションを試してみたら、これが実にいい。資生堂クレドポーボーテと同じくらいのとろみがある、保湿効果バツグンに高い。いつのまにか「化粧品はなんでも韓国製がイイ」との単純粗雑思考にはまってしまった。
 「韓国ドラマ」は面白い。というのもこうした単純粗雑思考が一役買っているのではないかと勘繰っている。

 桃井かおりさんの名前が出たので桃井かおりさんのことを考えることにした。憧れの女性だ。
 記憶の中に鮮明にあるのは「古畑任三郎」の中のDJ役。男を寝取られた恨みのあまり後輩の女の子を撲殺した事実を誤魔化すために殺害現場の駐車場からDJブースまでを全力疾走する役だった。田村正和さんが彼女のトリックを見破るきっかけになったのがバカボンのパパのお面、であった。
 私は「将来どのような職業について食べていくか、社会のお役に立つためにどのような人間になるか」ということをまったく考えたことのないあんぽんたんだったが、唯一「職業」として目指したいと思ったのがラジオDJだった。70年代の話だ。
 
 あなたにお茶と音楽を
 小夜子の部屋
 ミッドナイト東海
 FENが聴きたくてしかし親に買ってもらったスカイセンサーはFENをキャッチしてくれなかった。

 ラジオは音楽を教えてくれた。
 エルトン・ジョンやエアロスミス。オリビア・ニュートン・ジョン、リンダ・ロンシュタット、エミルーハリス、ロッド・スチュワート、10cc。デビー・ブーン。ハート、スティービー・ニックス、カーリー・サイモン。ジェームズ・テイラー。キャロル・キング、ジャニス・ジョプリン。
 忘れてはいけないベイ・シティーローラーズ、クィーン、ショーン・キャシディ。エリック・クラプトン、ミック・ジャガー、ウィングス。キッス。イーグルス。シカゴ。ビージーズ。レーナードスキナード、リッチー・ブラックモア、ピンクフロイド。エレクトリックライトオーケストラ。ボストン、フリートウッドマック・・・
 思い出せば書ききれないが、書ききれないほどには思い出せない。
 まぁ。ちゃんと聴いたわけではない。音楽をちゃんと聴くには実はある程度の才能が要る。音楽を聴くチカラにはいろいろある。リズム感コード進行がわかるぐらいの音楽知識、絶対音感などがあればさらに楽しいのだろうが、私にはどれも備わっていない。ただ「カッコイイ」がすべてだった。

 英語歌詞のヒアリングにはあまり拘らなかったな。今でも英語を聴きとるのは簡単ではない。英語の発音は日本語の発音と根本的に異なる。特に日本語の母音と英語の母音はどうやら構造的にまったく別物と考えた方がいいらしい。
 nickel
 この英単語をネイティブに伝わるように発音したければ
 猫
 といえばいい。と最近知った。

 なにを書いているのかよくわからなくなった。この場合
 My head is in chaos.
   このchaosの発音もムツカシイ。カオスではない、ケイオス、では完全なカタカナ英語になってしまう。
 私だけではない。日本人はどうも英語が苦手だ。大きな理由のひとつにカタカナによる英語の流布があるらしい。

 一方、スペイン語の発音は日本語の発音と似ている部分が多い。かといって同じでは決してない。
 ¡Qué señor!
   なんて男だ!
 ケ・セニョールと読むが、そのままケ・セニョールとカタカナ発音するとやはりスペイン語ぽくはない。
 西洋の言語を習得しようとするとき、カタカナが邪魔をすることがまま、ある。知っておいて損はしない知識だと思う。

 スペイン語英語バスク語。
 3言語の学びを続けてきたが、最近諸事情あってバスク語の受講が出来なくなった。しばらく独学しようと手元にあるバスク語のテキストをあらためて開いてみた。英語でバスク語を学ぶ、という内容で文法うんぬんをまずさておき、とにかく短い文章を頭に入れる、が目的の一冊だ。
 バスク語はスペイン北に位置するパイス・バスコで話されている。バスクの人たちはスペイン語(カスティーリャ語)+バスク語両方を母国語とするという。わずかの期間私にバスク語の手ほどきをしてくれたセニョリータはバスク出身、カスティーリャ語バスク語英語+日本語を話す。バスク州が直接接するフランスの言葉は出来ないと言っていたが、スペイン領土内で話される別言語、カタラン語あるいはガリシア語ももしかしたら知っていたのかもしれない。ヨーロッパの特に知識階級には言語の壁、がさほどないのだろう。

 言語と戦争。
 言語と宗教。
 言語と芸術。

 靄の中に学問への憧れがある。
 
 最近、弱気になった。
 靄の中であがくより、靄を捨て日常で笑う方が数倍楽しい。おそらくそれは事実だ。
 
 台風はどうなっているのだろう?
 
 

 

 

 
 
 
 

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