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【ハケンアニメ!】

【ネタバレ含みます!】



この映画の吉岡里帆は
美しくなく、美しい。

なにかに
のめり込み
打ち込む姿は時に無様だ。

無様に見えるほど没入する姿は
眩しく、美しく見えるのもまた事実だ。

作品の監督は絶対君主ではない。

自分の脳内を形にしてくれるのは
各セクションの
誇り高き職人気質のスタッフたち。

彼らになじられ、逃げられ、嫌味を言われ、
それでも食らいつき、頭を下げて、
言葉で、動作で伝えて
監督は必死にイメージを形にする。

そんな もがきの先に
作り手たちの血が通った
心を打つ作品があることを
この映画は改めて教えてくれた。

その気づきをくれるのは
キャストの熱演があるからだ。

とりわけ吉岡演じる斎藤瞳の
冒頭からラストまでの成長。
その丁寧な描写。

不器用ながらも
揺るぎない芯がある、
他者を思いやる優しさも持ち合わせている
そんなキャラクター造形。

ラッシュチェックに向かうスタッフたちの
グループショット、
はじめは群衆の一番後ろにいた斎藤だが、
最終話のラッシュでは先頭を歩く。
その表情の変化。
その凛々しさたるや。

同じ構図で
ビフォーアフターを見せる演出には
わかりやすくもグッとくる。

忘れてならないのは
小野花梨演じる天才アニメーター並澤。

作画にとりかかるたたずまい
スイッチの入り方。

「なんて言ってるんですか?」

細かい説明はないものの
あのひとことの芝居で
他者と異なる視点を持つ天才なのだと
納得させられてしまう。

その小野花梨の上司、
雇い主である六角精児演じる関もまた出色。

対応不可能と思しき修正依頼を引き受けた
並澤に対し全てを受け入れ返した
「ハイ、ハイ。」のひとこと。

あの含みのある表情と
尺を使った言い方に
痺れない観客はいるのだろうか。
あの短いフレーズに仕事に打ち込む職人の
覚悟が滲み出ていた。

「ハケンアニメ!」には
心に刺さる熱いセリフが随所にある。

言葉そのものと
キャラクターに沿った台詞の発せられ方。

その合わさりが心地よく、
もっと!もっと!と欲しくなる。

ただ、一方で不明瞭に感じたポイントもある。

ストーリーを一気通貫させる
斉藤瞳の幼少期からの思いと
「覇権を取る」という意志が
なぜイコールになるのか?というポイントだ。

「王子に勝つ!」ならわかるが
なぜその先の「覇権を取る!」に想いが至り
「覇権を取ります!」の発言まで出るのか…

そこまで腹落ちさせてくれていれば
もう一層深く感情移入し
より楽しめたのかもしれない。

しかし、
いずれにせよ
熱く心揺さぶられる作品であることに変わりはない。

何かを志し、
打ち込む人の背中を押す
あいや 胸に刺さる 
そんな映画ではなかろうか。


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