杉森窓

脚本家志望。 シナリオコンクールによく挑戦していますが小説も書きます。 SSや恋愛小説…

杉森窓

脚本家志望。 シナリオコンクールによく挑戦していますが小説も書きます。 SSや恋愛小説の連載をnoteで書いていきます。 魔法のiらんどでも同作品を掲載しています。 →魔法のiらんどhttps://maho.jp/users/15591670281202250385/works

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最後の恋になればいい

#創作大賞2024 #恋愛小説部門 あらすじ 友人と共に婚活に婚活に励む独身OL・綿貫芽生(28)は、本心では元カレが忘れられず上手くいかない日々を過ごしていた。そんな中、ある日のお見合いパーティーの帰り道にバーの店長・大崎晃(34)と出会う。 大崎に元カレを引きずっていることを見抜かれた芽生だが、そんな大崎からの励ましの言葉で、一度とことん元カレと向き合おうと決心する。 そんな折、大学時代の友人の結婚式に元カレも出席することが分かり、再会することが決まる。その日のために自

    • 最後の恋になればいい 第20話(最終話)

      #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * 二次会を終えて店を出ると、道には雪が積もり始めていた。私は女友達二人と、駅までの道を歩く。 「楽しかったね~」 「ね」 「芽生、今日は泊まるんだっけ」 「うん、実家に。ここから近いんだ」 「じゃあさ、せっかくだしもう一軒行っちゃう? 帰りはタクシーでも乗り合わせようよ」 「お、いいねえ」 「賛成!」 雪の心配はあるものの、久々に友人たちに会えた嬉しさが勝って、「私も」と手を挙げる。どこのお店がいいかなとスマホをみんなで取り出し

      • 最後の恋になればいい 第19話

        #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * やっと俺の番が回ってきて、ガソリンを入れ終えた店員が息を切らして走ってくる。 「4312円になります!」 元気よくそう言われ、俺は小銭を数えるのも面倒で財布に偶然あった五千円札に感謝して速攻で渡す。店員は笑顔で受け取ると走り去り、お釣りと箱ティッシュを持ってまた戻ってくる。 「こちらお釣りと、粗品になります。どうぞお気を付けて!」 「……どうも」 受け取ったティッシュの箱には象の写真が載っている。俺は一瞬あの動物園での光景がフ

        • 最後の恋になればいい 第18話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * もう何年もこの店に通っているけれど、店番を任されたのは初めてのことだ。勝手知った店内でもカウンターからの景色はいつもと違って見えて、少し心が躍る。 晃の真似をしてグラスを拭いてみたりシェイカーを振ってみたりしていると、カランコロンといつもの呼び鈴が鳴って、俺が店長代理になってから初めてのお客さんが入ってくる。 「は~外寒~。マスター、ビールお願いします!」 言いながら入ってきたのはさおちゃんだった。寒いのにビールなんだと内心思

        最後の恋になればいい

          最後の恋になればいい 第17話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * 式場に着くと、見知った顔が受付をしていた。結局、コートの下に青いドレスを着た私は、久しぶりに会う彼女たちに少し緊張しながら受付へと向かう。 「綿貫芽生です」 「はい、綿貫……って芽生!? やば! 超久しぶり!」 顔を上げた友人たちと目が合う。二人は大学時代にサークルが同じだった同級生だ。気軽に話す仲ではあったけれど卒業後も連絡を取り合うほどではない、そんな仲。 「久しぶり。元気だった?」 「元気元気! でもさあ、聞いてよ~!」

          最後の恋になればいい 第17話

          最後の恋になればいい 第16話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * 最近うるさかったからか、ケンと二人だけの店は随分静かに思える。ケンだってよく喋る方なのに静かに感じるなんて、俺は大分綿貫や結城に毒されていたらしい。 「晃はどっちに賭ける? 芽生ちゃんがヨリ戻すか戻さないか」 「知らねえよそんなん」 「冷た~。デートした仲だろ。芽生ちゃん、元カレと別れてから今までで一番楽しかったデートだったって言ってたぞ~」 「は? 何それ、誰情報」 「さおりちゃん」 「……あ、そう」 なんだよ、俺に直接言え

          最後の恋になればいい 第16話

          最後の恋になればいい 第15話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 いよいよ東京を発つ日がやってきた。発つと言ってもほんの数日で帰ってくるのだけれど、私にとっては人生の一大事と言ってもいいくらい、大きな出来事だ。 バスの運転手に乗車券を見せ、バスに乗り込む。席に着いてしばらくするとバスが発進した。 窓の外を眺めなていると、だんだんと地元の景色が近づいてくる。その度に私の中の記憶が呼び起こされていった。 あれは、ある日の大学の帰り道のこと。 自転車を押して、私と卓也はイチョウがたくさん落ちた大学構内の道を

          最後の恋になればいい 第15話

          最後の恋になればいい 第14話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 テレビから明日からの山梨の天気を憂いている声が聞こえる。 「山梨の方では今日の夜から雪が降り始め、朝には積雪30cmを超える大雪となる見込みです。また、強い風も伴い、交通機関に影響が出る可能性があります」 私はそんなアナウンサーの声をBGMに、壁に掛けたドレスを眺めていた。 並んでいるのは青とピンクのドレス。『Bar OLIFANT』で行った投票では圧倒的に青が人気だった。 「青の方が良いってわかってるんだけどなあ……」 別に、自分がピン

          最後の恋になればいい 第14話

          最後の恋になればいい 第13話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * いつも『Bar OLIFANT』で見ている置物の何十倍も大きな実物の象が、目の前にいる。間抜けな着ぐるみ姿で象の展示を眺めると言うのもなんだかシュールだけれど、象がゆっくりと一歩ずつ歩くのと同じように、ここでは穏やかな時間が流れていて、こういうのもありかもしれないと思い直す。 「私動物園大好きなんですけど、ちょっとトラウマだったんです」 「ふーん。なんで」 二人とも象の方しか見ていないからなのか、まるでひとり言みたいにスルスル

          最後の恋になればいい 第13話

          最後の恋になればいい 第12話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * 「ペンギン! カワウソ! カピバラ! ウサギ~!」 綿貫が展示された動物にいちいち走っていく。 こいつ、子供より子供らしい反応してんじゃねえか。 少し呆れながらも、まあこれくらいはしゃいでくれた方が来た甲斐があるのかもしれないと思い直して、走りはしないけれど、綿貫についていく。 「あんた全部に反応しないと気が済まねえのか」 丸めた園内地図で綿貫の頭をポンと叩くと、どうやら我に返ったのか、風船がしぼんでいくように、綿貫も恥ずかし

          最後の恋になればいい 第12話

          最後の恋になればいい 第11話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 きっとマスターなら断るだろう。 その私の予想は大きく外れ、私とマスターは日曜日の朝っぱらから、動物園のチケット売り場前で白い息を吐きながら体を縮こませている。 マスターの眉間には皺が寄っている。優しいから断れなかったのだろうと思うと申し訳ない。 「……なんか、すみません」 「何が」 「あ、いえ。付き合わせて」 「あんたが悪いわけじゃねえだろ。で?」 「で、とは」 「なんで動物園なわけ。俺今日この後仕事なんですけど。匂いつくだろ」 「ご、ご

          最後の恋になればいい 第11話

          最後の恋になればいい 第10話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 その数日はずっとふわふわした心地で、いつ出社していつ退勤していつベッドに入ったのかも覚えていない。気が付けば瞬間移動みたいに、私は『Bar OLIFANT』に来ていて、マスターとさおちゃんと里見さんに、卓也から来たメールのことを相談していた。 「どう思いますか……」 「ん~、とりあえず今元カレに彼女はいないってことでいいんじゃない?」 「だな」 「でもどういうつもりなのかはよくわかんないよね。だって今まで連絡一切なくて、今回がいきなりだっ

          最後の恋になればいい 第10話

          最後の恋になればいい 第9話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * 学生の頃は体育の、特にマラソンなんて大嫌いだったけれど大人になった今になって走るのって楽しいのかもしれないと思い始める。 ドラッグストアでチラシを見つけたジムには週3回通っている。お決まりのランニングマシーンで目標のキロ数まで走り終わると、顔見知りになったインストラクターに話しかけられる。 「綿貫さん。この後のヨガ、1人空いたんだけど入る?」 「わ、ほんとですか! 是非! 入りたいです」 「じゃあ入れとくわね」 「お願いします

          最後の恋になればいい 第9話

          最後の恋になればいい 第8話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 それからと言うもの、私は自分磨きに専念した。美容室に行って髪を整え、ネイルサロンで爪をピカピカにして、ありったけのカクテルドレスを試着してどの色、どの形のものが自分に似合うかチェックしてもらい、今はさおちゃんと共に、マッサージに来ている。 「芽生って恋するとこんな感じだったんだね」 「ん~?」 さおちゃんと私は、並んで施術を受けている。あまりの気持ち良さに、おじさんのような声で返事をしてしまった。 「今までやさぐれてるとこしか見たことなか

          最後の恋になればいい 第8話

          最後の恋になればいい 第7話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 金曜の夜だからか、今日の『Bar OLIFANT』はお客さんで賑わっている。私とさおちゃんは端っこのテーブルでチビチビとお酒を飲んでいた。木製のテーブルの上に置かれた私のスマホを、お馴染みの像の置物が見守るように置かれている。 「で、返事はきたの?」 「まだ」 「お前らここをたまり場にすんな」 「いたっ」 作戦会議のようにヒソヒソそと話していると、新しくカクテルを持ってきたマスターのげんこつをくらう。 お前らって言いながら私にしかげんこつ

          最後の恋になればいい 第7話

          最後の恋になればいい 第6話

          #創作大賞2024 #恋愛小説部門 * * * あれ、おかしいな。 私の部屋は大好きなピンク色で統一されていたはずなのに、この部屋は青を基調とした落ち着いた雰囲気だ。しかし間違いなく懐かしい。私はこの部屋に、昔住んでいたから。 卓也が慣れた様子で冷蔵庫から二つ、缶チューハイを取り出す。あの頃の私は卓也がいつでも家に来ていいように、冷蔵庫に卓也の好きなお酒を常備していたっけ。 ベッドに座っている私に、卓也が缶チューハイを渡してくれる。 「彼女4割、大親友2割、お袋2割、姉ちゃ

          最後の恋になればいい 第6話