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小説|赤いバトン[改訂版]|全20話&あとがき

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昭和58年、愛知県某市の中学校。ある一人の女性教諭から始まった不思議な縁(えん)。昭和から平成、そして令和へと、さまざまな世代が感謝の環(わ)でつながり、やがて大団円を迎える。
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#愛知県

小説|赤いバトン[改訂版]|第1話 卒業の日(語り:ユカリ)

わたしが通っていた三重県のある中学校では、卒業証書を入れる丸筒の色が赤でした。一般的には…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第2話 折り紙(語り:リカコ)

姉のユカリは、昨年結婚して、名前が[小荒ユカリ]になった。 旦那さんの苗字の小荒(こあら…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第3話 親友(語り:コトノ)

大学時代の友人リカコとは、定期的に呑みに行っている。同じ大学の教育学部を卒業して、二人と…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第4話 赤ミソジーズ(語り:ノリコ)

勤務先の小学校から一度帰宅して、ジャージからブラウス&スカートに着替えて、急いで最寄り駅…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第6話 校長先生(語り:リカコ)

東山動植物園(えびせんべ)=姉から電話が掛かってきた。 「お疲れさまー。リカコ、今ええ?…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第7話 尾張が始まり(語り:ユカリ)

妹リカコから、 「ウチらの地元の中学校も、このエピソードを参考にしたみたいやに」 そう聞か…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第8話 結婚三十五周年(語り:コウサク)

先月、ボクたち夫婦は、めでたく結婚三十五周年を迎えた。語呂あわせで[珊瑚(さんご)婚式]と言うらしく、ボクたちは、よそ行きの服で着飾って、夫婦水入らずのディナーを楽しんだ。このディナーは、すでに嫁いでいる一人娘からのプレゼントで、名古屋駅に直結しているホテルの、最上階ラウンジのコースディナーを用意してくれた。しかも娘はわざわざ車での送迎までしてくれた。 帰り道の車内、娘が妻に「地上二百十メートルからの夜景はどうだった?」と訊ねると、 「光の宝石だった」と妻は答え、つづいて、

小説|赤いバトン[改訂版]|第9話 一学期(語り:クミコ)

コウサク先生は帰宅するなり、 「クミコ先生! バトンがつながっているよ!」と珍しく興奮して…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第10話 馴れ初め(語り:クミコ)

副顧問として担当し始めた女子体操部の練習のあと、ジャージ姿のまま美術室に行くと、約束した…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第11話 もうひとつの馴れ初め(語り:コウサク)

夕食後のリビングで、クミコ先生が2‐Dの集合写真を眺めていた。 それは二学期の終業日、ク…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第12話 Q&A(語り:クミコ)

そういえば、あのあとのお話がまだでした。 コウサク先生に代わって、わたしがお話しします。 …

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小説|赤いバトン[改訂版]|第13話 夏休み(語り:クミコ)

夏休み、わたしは女子体操部の副顧問だったため、部活の練習日には、顧問の先生とともに指導に…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第14話 土下座(語り:クミコ)

書店に着くと、奥の小部屋に通された。 「失礼します」と言って、室内に入った。 警察官と店員…

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小説|赤いバトン[改訂版]|第18話 あいしるラジオ(語り:ユカリ)

わたしは、自身初のラジオドラマ脚本の打合せで、あいしるラジオ放送さまに伺った。 エントランスホールで、今回のご担当者さまと名刺を交換した。 いただいた名刺を見て「心が美しいって書くんですね」と言うと、 「はい。ココミと読みます」と笑顔。 「素敵なお名前ですね。あ、全然お世辞じゃありませんから」とわたし。 「ありがとうございます」とさらに笑顔。 「ウチの編成部、加藤ばかり五人もいて」と今度は困り顔。 「……よろしければ、下の名前で呼んでいただけませんか」と今度は探り顔。 「でし