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小説|赤いバトン[改訂版]|第3話 親友(語り:コトノ)

大学時代の友人リカコとは、定期的にみに行っている。同じ大学の教育学部を卒業して、二人とも教職免許を取得した。でも、二人とも教師にはならず、それぞれ一般企業に就職した。

……てことで、今日の定例み会は、名駅めいえき居酒屋いざかやにて。
「カンパーイ! ……グビグビ」
わたしたちは生中なまちゅうに口をつけた。
リカコは、中ジョッキの三分の一ほどを一気に流し込むと、
「コトノ、ちょっと聞いてー」とセキを切ったように話し始めた。
社会人二年目の後輩社員に、取引先へのお願いも、お礼も、おびもすべて、メールのみで済ますことを注意したところ、平然へいぜんと「先輩、今どき常識ですよ」と返されたらしい。
「大事な用件のときは、ちゃんと電話もしなさい!」とリカコ。
「あなたたち世代の常識が一般常識になるのは、もっと先なの!」と激昂げっこう
わたしはリカコに「そうしかったの?」とたずねた。
「言えんよー、それこそ今どきは、パワハラって言われるやん」と仏頂面ぶっちょうづら
「で、なんも言わんかったの?」とわたし。
「せやもんで、お客さまに合わせて使い分けた方がいいよ、って返した」
「リカコ、あっぱれ。てか若者にはホント気ぃつかうよね」とわたし。
「なんかさー、二十代ん時と比べて我慢すること増えた」とリカコ。
「それな」とわたしが言うと、
「おったまげー! コトノが今どきの言葉つこうとる」
「リカコ先輩、今どき常識ですよ」
「おったまげーの、もうぶっとびー!」

「あんたら、うるさい」とノリコがやって来た。
「店の入口まで聞こえとる」
「先生、遅刻ー」とリカコ。
「ごめん、ごめん」と十五分遅れでノリコが合流ごうりゅう
わたしは「とりあえずすわりゃあ」とカバンをどかして、席を作った。
大学時代からの親友三人[赤ミソジーズ]がそろった。
「すいませーん! 生中なまちゅう一つ追加ー!」リカコが注文した。

わたし、ノリコ、リカコの順番で三十歳を迎えた。全員が三十歳になった時、わたしは、チーム名[ミソジーズ]を提案。するとリカコが「だったら、赤ミソジーズにしやん?」と言った。わたしは岐阜県、ノリコは愛知県、リカコは三重県出身。三人ともが赤味噌あかみそ文化けんなので、チーム名[赤ミソジーズ]。正直ダサい。舌かみそう。でも、わたしたち愛三岐あいさんぎ庶民しょみんトリオを上手うまく表現している。キャッチーで、ちょっと毒気どくけがあって、ほんのり愛もあって、親しみを感じさせる。リカコのこういうセンスは、天才的だとわたしは思っている。
ノリコの生中なまちゅうが運ばれてきたので、早速わたしたちはジョッキを合わせた。
「赤ミソジーズ、カンパーイ!」

ちなみに、リカコとわたしは教職にかなかったが、ノリコだけはちゃんと教師になって、現在、愛知県内の小学校に勤めている。

~ 第4話 赤ミソジーズ(語り:ノリコ)に、つづく ~


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