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唐仁原昌子
2024年1月7日 22:23
放課後の教室。 すっかり夕暮れが通り抜けていった後、じわじわと夜が染みてくるようなそんな時間。 みんなもう帰って、ぽつんと残っている自分と、がらんとした教室の空気。それだけで満たされた空間。 ここにあるのは、ただそれだけ。 自分の席に座って、ぐるりと全体を見渡す。 机の数は、全部で三十六。 いまの私の世界の大部分を構築している、その数字を頭の中でなぞりながら、日々それぞれの机
2023年8月6日 22:36
その日は朝からいい天気だった。 いい天気すぎて、登校しただけで汗だくになるくらいだ。取り立てて何もない、いつもと何ら変わらない平凡な朝ではあった。「よお」「よお!昨日言ってたお笑い番組観た?」「観た観た。めちゃくちゃ笑いまくったせいで、おやじにうるさいってキレられたもん」「想像できるわー、お前声でかいもんなー!」「うるせえよ!」「あ、タクおはよー!」「おう、おはよ」「タクは観
2023年7月2日 23:24
この教室で、白山の横顔を一番見ているのは、間違いなく私だ。…多分。白山の隣の席になって、そろそろ1ヶ月経つ。窓の外を見るようなフリして、さり気なくその横顔を見ることが、随分上手くなったと思う。そろそろ席替えのタイミングだ。もうすぐこの席を離れることになる…。考えると、1ヶ月かけて白山と取ってきたコミュニケーションがイマイチ実り切らないままなことに気がつき、何だかしょんぼりしてしまう。
2023年3月12日 21:34
「私は、気が付いたらここにいました。何に逆らうでもなく、何に惹かれるでもなく、人生の波に乗って適当に生きていたら、ここに流れ着いていたのです。私のこれまでは、ただそれだけの言葉で語れてしまう程度のものだと思います。恐らくこれから先どれだけ生きたとしても、自分が何をしに生まれたのかなんて、きっと私にはわからないでしょう──」 ここまで書いたら、本当に馬鹿馬鹿しくなって思わずシャーペンを置いた。提