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唐仁原昌子
2024年2月25日 20:30
絵を描くことがすきだ。 別に、特別に上手いわけではない。そんなの自分が一番わかっている。 それでも私は、絵を描くことがすきだ。 思っていることを伝えるのは、いくつになっても難しいけれど、いまの気持ちを色で示すことはできる気がする。 考えていることを問われるのは、昔から変わらず苦手なままだけれど、描きたいものをそのままキャンバスに表すことならできる気がする。 絵は、正解がないからす
2024年2月18日 21:21
夕暮れの美術室に、彼女はいた。 一人で鼻歌を歌いながら、全身で大きめのキャンバスに向かっているその背中は、普段教室で見る姿よりもずっと眩しかった。 その日、俺が美術室にペンケースを忘れたことに気づいたのは、放課後になってからだった。 五、六時間目の美術の移動で美術室に持って行き、そのまま置き忘れて教室に戻った。 帰宅前、とあるプリントを職員室へ提出することを思い出したときに、同時
2024年2月12日 21:49
風邪を引くと、いつも見る夢がある。 現実では行った記憶のない、だだっ広い草原で全力で風を浴びるあたりから、その夢は始まる。そして大抵、もう風邪から解放されそうだなというくらいのタイミングで見る。 熱を出して眠りにつき、次第に風を感じ始めると「また、あそこに行くのだろうな」ということと「ああ、明日には熱が下がるのだろうな」とわかるくらいには、印象深い場所だった。 そこには一本の木がある
2024年2月4日 21:57
「明日、関東は大雪だってさ」「えー今日の時点で充分寒いのに、まだ寒くなるってこと?」 そうなんじゃない、マジで?私寒いの苦手なんだよね嫌だなー、あ、ねえそういえば今日の三時間目さあ…。 改札を通るとき、目の前で展開される女子高校生たちのやり取りを小耳に挟む。 今は二月の初めだから、そりゃ寒いよな。 季節を分ける「節分」を経て、暦によるとだんだん春に近づくはずなのに、世の中は今が一