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唐仁原昌子
2023年11月26日 22:24
「ああー、大人になりたくないー!」 突然そう言って、アカネは校庭の真ん中にずんずんと歩いて行き、そこで持っていたバッグをドサリと下ろす。 そして、何をするのかとついて行った私たちの目の前で、制服のまま何の躊躇もなく校庭に寝転び出した。「いや…何。ちょっと、起きなよ」 下校のタイミングなので、それなりに人通りはある。周囲からの好奇の目を気にしつつ、スズが慌ててそんなアカネの手を掴んで起
2023年11月19日 23:49
通学路に、少し勾配のきつい下り坂がある。 その坂の先に十字路があって、そこを通り過ぎた先で右に曲がると、私の通う学校が見える。 何てことはない、いつもの道。 その日は、私には珍しく早起きをして気まぐれに早く家を出たので、通学路に同じ制服の人間はほぼいなかった。 通い慣れた道なのに、目に入る景色が少し違うだけで異世界のように見えて、不思議な気持ちになる。そんなことを考えながら、ゆっく
2023年11月12日 22:56
夜眠る前、目を閉じるのが怖いときがある。 何が怖いという具体的なものがあるわけではないと思う。ただ、漠然と恐怖を感じる。 取り留めのない会話の中で、気まぐれにそんなことを話すと、ミカは「意外だ」と笑った。「何が怖いの、暗いのが苦手とか?」「いや別に…そういうわけじゃないと思う」「へえ。シュウでも、そんな繊細なこと考えるんだ」「…まあ」 取り立てて、繊細なことを考えているつもり