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●ショートショート●

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これまでに書いた短編小説、ショートショートをまとめたものたち。
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2023年1月の記事一覧

【ショートショート】 夕焼けの向こう側

【ショートショート】 夕焼けの向こう側

 私の学校の近くには川がある。あと野原、少し行けば山。その山の近くには神社があって、コンビニは1件、他にはカフェというより喫茶店と呼んだ方がしっくりくるお店が1件。カラオケなんてないし、プリクラも電車に乗って3駅くらい行かないと撮れない。そんな、環境。

「ねえ、今日川原に行こうよ!」
「また始まった、フウお得意の『今日行こうよ』だ」
「しかも一昨日行ったところっていうね」
「せめて季節を考えてよ

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【ショートショート】 昼休憩のブランコ

【ショートショート】 昼休憩のブランコ

 昔から、ブランコに乗ることがとても好きだった。
 うまく勢いをつけたら一周ぐるりと回れそうなところとか、ふわりとした浮遊感とか、空が近づいたり離れたりするところとか…。風をびゅうと頬に感じる瞬間も、髪がぶわっと広がる感覚も、その気になればまだまだ挙げられそうなくらい「好きなポイント」はあった。
 それでもいつの間にか、公園に足が向かなくなってブランコに乗ることが減り、今となってはブランコの何がそ

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【応募作品】祝福は白く咲く

【応募作品】祝福は白く咲く

この世には稀に、神に愛され「祝福」されて生まれてくる人がいる。声の祝福を受けた人は語ることで、その声を聴く人を癒した。木々の祝福を受けた人は、砂漠化が進み苦しんでいる地帯の緑化に貢献し讃えられた…。
いつどのタイミングで、その「祝福」と言われる不思議な才能が目覚めるかは、いまだに解明されておらず、またこの世にどれだけ「祝福」された人がいるかも明らかになっていない。謎に包まれたその才能を持つ一人が、

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【ショートショート】 ポケットの中の流星

【ショートショート】 ポケットの中の流星

──流星群が、本日未明より東の空で見えるかもしれません!

 何の気なしに流していたラジオから、そんな声が聞こえた。今夜はお天気がいいからきっといろんなところで見ることができますよ!と明るい声が続ける。
 星にさほど興味はなかったけれど…ふうん、と思いながら壁に掛かった時計を見上げる。時刻は24時前。未明って何時くらいのことをいうのだろう。

 ぼんやり取り留めないことを考えながら、光る予定もない

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