【興奮】世界的大ベストセラー『サピエンス全史』要約。人類が文明を築き上げるに至った3つの革命とは?
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世界的大ベストセラーになるのも当然だ。『サピエンス全史』は人類史を俯瞰で捉える「知の宝庫」
言わずと知れた大ベストセラーであり、私が紹介する必要性などまったくないが、本作のガイドとなるような、長大で濃厚な文章を書くことはできるだろうと思っている。この記事では、本書全体の大きな流れを概説していくつもりだ。
「『サピエンス』だけがなぜ我々のようになっていったのか?」が、本書の中心となる謎だ
さて、人類誕生の歴史にあまり詳しくない場合、そもそもこの「『サピエンス』だけがなぜ我々のようになっていったのか?」という問いの意味を上手く理解できないと思う。まずはその辺りの説明から進めていく。
私たち人間は、「ホモ属」と呼ばれる分類に属する生物だ。「属」というのは生物の分類の仕方で、「科」の下にある。例えば、「イヌ科」の中に「イヌ属・ホッキョクギツネ属・タヌキ属」などが、「オナガザル科」の中に「ヒヒ属・マンドリル属・オナガザル属」などがあるという具合だ。人間の場合は、「ホモ科ホモ属」となる。
普通は、「◯科◯属」の中にもさらに様々な種類がいる。例えば「イヌ科イヌ属」の中に、「秋田犬・シベリアンハスキー・ダックスフンド」など、見た目や能力の異なる様々な種類が存在するというわけだ。
では「ホモ科ホモ属」はどうだろうか? 何故かこの「ホモ科ホモ属」には現在、我々「ホモ・サピエンス(賢いヒト)」しかいない(本書ではこの「ホモ・サピエンス」のことを「サピエンス」と表記する)。これが主たる謎なのだ。
かつては「ホモ科ホモ属」にも、様々な種類がいた。歴史の授業で習うだろうか、ネアンデルタール人やアウストラロピテクスなどだ。サピエンスが、そのような他の種類の「ホモ属」と同時期に共存していた時代もある。秋田犬がポメラニアンとすれ違うように、我々の先祖サピエンスが歩いていたらアウストラロピテクスを見かける、なんてことがあり得たわけだ。
しかし現在その可能性はない。「ホモ科ホモ属」には我々サピエンスしか存在しないからだ。これは、世界中すべての犬がゴールデンレトリバーであるような状況と言える。
こう説明されると、なかなか異常な事態だと感じるだろう。まさに「ホモ科ホモ属」では、そのような不可思議な状況にあるのだ。
本書ではこの疑問、つまり、「なぜ『ホモ科ホモ属』の中で『サピエンス』だけが生き残ったのか」さらに、「なぜ『サピエンス』は高度な文明を築き、我々のようになっていったのか」を中心軸にしながら、「サピエンスの歴史」を紐解いていく作品なのである。
サピエンスが獲得した「言語」の凄さと「認知革命」
ここからは、「ホモ科ホモ属」のことを「人類」と表記することにする。
人類は他の生物と比べて脳が大きく発達し、またある時点から火を扱えるようにもなった。他の生物にはない、かなり特異な特徴と言えるだろう。しかし、
そうである。地球全体で見ても、人類は特別存在感を示すような生物ではなかった、ということだろう。
その後、人類は「言語」を獲得する。サピエンス以外の人類が、我々がイメージするような「言語」を有していたのかについては議論があるようだが、とりあえず何らかの形で人類全体が言語を獲得したのだとしよう。
そう考えても今後の議論に支障は出ない。何故なら、ある種の言語は人類以外の生物も使っているからだ。声や何らかの音によってコミュニケーションを取る生物は様々に知られており、それらを一種の「言語」とみなすことができる。
さてここで重要なのは、「サピエンス以外の人類を含め、他の生物が獲得した『言語』と、サピエンスが獲得した『言語』は何が違うのか?」という問いだ。その凄さを著者は、「架空のことについて話せる力」だと指摘する。
そして、「言語獲得によって架空のことについて話せる力を得たこと」によって、サピエンスにとっての第1の革命である「認知革命」がもたらされることになった。
この「認知革命」が生んだものこそ「神話」である。本書における「神話」は、「大多数と共有している想像上の存在」を指す。「神話」と聞くと、「ギリシャ神話」「北欧神話」「古事記」など具体的な何かを連想するかもしれないが、本書ではより広い概念として登場する。
もう少し詳しく説明しよう。
例えば「リンゴ」は、サピエンスが地球上からいなくなってもそこにあり続けるだろう。では、「日本という国」はどうだろうか。確かにサピエンスがいなくなっても「島」は残る。しかし「そこが『日本という国』である」という事実は、サピエンスが消えた時点で失われてしまうだろう。もう少し具体的なモノでイメージしたければ「お金」はどうだろう。確かに「硬貨」や「紙幣」というモノは残る。しかしサピエンスがいなくなれば、そこに「お金」という価値を見出す生物は地球上に存在しなくなるだろう。
このように、「サピエンスが地球上から消えれば失われてしまう概念全般」を本書では「神話」と呼んでいる。
サピエンスにとって「神話」の力は絶大だった。
つまり、他の生物には成し遂げられないタイプの「協働」を生み出すことができるようになったというわけだ。ピラミッドのような巨大建設が存在し得るのも、「王様の絶対権力」という「神話」を多くの人々が共有していたからだろう(ピラミッド建設には「公共事業として雇用を創出した」という仮設もあるが)。
しかし「神話」がもたらしたものはそれだけではない。より重要なポイントについて著者はこう書いている。
認知革命は「神話によって人々を協力させる」という仕組みを生み出したわけだが、このやり方はさらに、「神話を変更することで、人々の協力の仕方をすぐに変えられる」というプラス効果を生むことにもなった。最近の例でイメージしやすいのは、諸外国におけるマスク着用ではないだろうか。コロナ以前は、「海外で日本人がマスクをしたまま店に入ると強盗だと思われる」などという時代もあったようだが、世界的パンデミックによって「神話」が変わったことで、欧米人もマスクを着用するようになった。
SDGsや気候変動の危機などの訴えも、「神話を変えることで人々の行動変容を促す」目的だと言えるし、私たちも日常的に、このような「認知革命」による影響を実感していると言っていいだろう。
このようにしてサピエンスは、他の生物には不可能なレベルでの大規模な協力を生み出すことができるようになったのである。
「農業革命」がサピエンスに「不安」をもたらした
人類の中でサピエンスだけが突出したもう1つの要因として、著者は「農耕」を挙げている。これを第2の革命である「農業革命」と呼ぶ。
サピエンスが「農耕」に踏み出したこ歴史的事実は、次のような議論を巻き起こしているようだ。
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