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「回り灯篭の中の夏祭り」ショートショート ー-「夏の香りに思いを馳せて」の企画に参加します。

子供のころの 一番の想い出は
八幡神社の 夏祭り。
沢山の 思い出箱の中では キラキラと輝いてる。

お祭りの朝 家の前の通りは
お化粧した日の 母さんのような
華やかさで いっぱいになる。

お神輿は 金色の鳳凰が、屋根で 
大きく翼を広げ 今にも空に 
飛び立ちそうに揺れる。
太鼓、笛の弾んだ調べ、
担い手の勇ましい掛け声
どれも 心をワクワクさせる。

陽が落ちると お祭りは絶好調。
鉢巻をしてもらい お兄ちゃんの 
お古の浴衣を着て出発。
母さんは あさがお柄の 新しい浴衣
観音様みたいに 優しい顔つき。 

父さんに肩車され 押すな 押すなの 
人込みの波を かき分けて歩く。
父さんの背中は大きくて 煙草の匂いがツンとする。

参道は 屋台の 提灯のあかりが
砂浜のように 途切れなく続いてる。

舌先でとろける 味噌おでん。
しわがれ声の 香具師口上。

小さな朱色の お宮戸開けて 
おみくじ届ける めじろ鳥。

「母さん これ 買ってぇ!!」
「ダメ さっき 綿あめ買ったでしょ。
坊やは すぐに 欲しい 欲しい病に
なるから 嫌なのよね」

楽しみにしていた 金魚すくい。
赤いヒラヒラ尾の金魚を 捕まえた!!と
喜んだ瞬間 網が 破けて
半べそかき 父さんの顔を見上げる

父さんの得意は 射的。
ダルマの人形を 見事に 打ち落とす。
「ほら これ 坊のだよ」と
父さんは やさしく ボクの手に置いてくれる
ダルマは 上目遣いに べそかく僕を 睨む。

ハイライトは いつも 見世物小屋。 
列にならび ワクワクしながら 入る
「人魚が 見れるよ 本物だ!
ほぉーら 人魚が 立った! 立ったよぉ!」。

小屋に入ると 人魚はいない
作り物の 井戸の中で 水着の女の人が
手をゆらゆら させている。

「インチキめ!! また騙された」と苦笑いする父さん
「毎回 本当に 懲りないわね」とおかしそうに笑う母さん
腹も立てず 最後は 二人で顔を 見合わせて大笑いしてた。

そのお祭りも 回り灯篭の
世界へ 埋もれてしまった。

古いアルバムの中の 両親は
お祭りの時と同じ 照れ笑いを
二人 仲良く浮かべて写ってる。
今も天国での お祭りの日には 
手をつないで 照れ笑いしてるんだろうなぁ。

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xu×rira企画様の「夏の香りに思いを馳せて」の企画に
参加させていただきました。
すでにnoteで発表済みの詩を ショートショートとして
加筆変更いたしました。
拙い作品ですが、どうぞよろしくご講評お願いいたします

↓こちらの企画に参加させていただきました。
https://note.com/l3l3xu/n/n09b9c9dcc81f

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