【短編小説】父の歩む先
俺がこの高校を卒業して二十年以上経つが、あの頃とあまり変わった様子はない。三月に入ったといっても、午前中の体育館はやはり寒さに身か縮む。保護者用に並べられたパイプ椅子に座ると、尻の熱が奪われていくようだ。娘の卒業式に一緒に出席するはずだった妻は、風邪をひいて寝込んでいる。熱があるのに出席したいと言うのを宥めて俺だけ来たが、それが正解だった。
こんな話をしたら、年寄り臭いと娘に笑われてしまうかもしれない。その娘も、四月からは隣県の大学に進学して我が家を出ていく。俺に似合わず