とらじまみけこ

絵本作りを始めました。何回も読み返したくなるような楽しくて元気が出る絵本を作りたいと思…

とらじまみけこ

絵本作りを始めました。何回も読み返したくなるような楽しくて元気が出る絵本を作りたいと思います。

最近の記事

みけこの散歩21(振り返ったこと)

奈良の當麻寺に行ってみた。 立秋を過ぎたとはいえ、こんな酷暑の中、お参りに来る物好きは私くらいで大きな境内には誰もいない。 日傘をさしていてもお日さまの熱は容赦なく、上からの強い光と下からの照り返しに思わず「暑〜」と独り言が漏れてしまう。 もうすぐ新しい車に乗り換えるというのに、たくさんガソリンが残っているのがもったいない、ただそんな理由で出かけた。 猛暑のこの夏、車では買い物ぐらいしか出かけなかった。 家をあけられる時間が限られていたので、そう遠くまでは行けないけれ

    • みけこの散歩20 (「知らない」と言う人たちのこと)

       昨日は実家の両親の所に様子を見に行く時間を取れなかった。  今朝、実家を覗きに行くと朝食は終えたようで、母は相変わらず冷蔵庫を開けて何かを探している。  冷蔵庫が早く閉めてくれと、心細げにピーピー鳴いているのも無視して、ゴソゴソと探す。満員の冷蔵庫。冷気が回る余地はない。  テーブルの上には、父に冷凍室から出されたでたあろう、アイスキャンディーが、袋の中で甘い甘いオレンジジュースに姿を変えて横たわる。  その父は、いつも通りひたすら脛のあたりに虫刺されの薬を塗ってい

      • 来年15年目の車検を迎える愛車の買い替えを検討中…最近やたらとベンツやらアウディやら高級車が私の前を横切る。いいなぁ〜いつかはと思っていた。けれど今は憧れよりも気後れが勝っている。それより何より、私の経済力が足りない!重要なのは、そこだ!ちゃんと現実と向き合おう。

        • 桜屋敷を通る風/第20話

          20.香菜の日記 その夜、香菜はいつもより長い日記を書いた。 『今日、クロとたくさん話ができました。引越しの事だけではなくて、今までにあったいろいろな思い出を話しました。  これまでにクロと話したことで、いろんなことが解決できてきました。 でもクロがたくさんのことを教えてくれたというよりは、考えるヒントみたいなのを出してくれた気がします。 だから「クロってすごい、やっぱり魔法使いみたいだ」とクロに言うと、クロは「魔法なんて全然使えないし、自分も困ったりすごく悩んだりした時

        みけこの散歩21(振り返ったこと)

        • みけこの散歩20 (「知らない」と言う人たちのこと)

        • 来年15年目の車検を迎える愛車の買い替えを検討中…最近やたらとベンツやらアウディやら高級車が私の前を横切る。いいなぁ〜いつかはと思っていた。けれど今は憧れよりも気後れが勝っている。それより何より、私の経済力が足りない!重要なのは、そこだ!ちゃんと現実と向き合おう。

        • 桜屋敷を通る風/第20話

          桜屋敷を通る風/第19話

          19.サヨナラの前に  積もった雪は居座った寒波による冷え込みの強さと、その日の午後にもう一度やってきた雪雲が追加の雪を撒いていったのとで、直ぐには消えず、この地域にしては珍しく長く雪を残していた。  庭の隅に残った日陰の雪はいつまでも融けたり凍ったりを繰り返して白く名残りを残していた。日当たりの良い場所でも夜に凍るのでいつまでもびしゃびしゃと雨上がりよりも厄介なぬかるみ具合だった。  咲恵は、雪が溶けだしてからは、猫たちの足の泥を落としてからしか、家に上げないようにと

          桜屋敷を通る風/第19話

          桜屋敷を通る風/第18話

          18.次の春には  年が明けて冬休みが終わると、カレンダーがめくられる速度がどんどん上がる。小学生の香菜ですらそんな風に感じていた。  3学期の予定表には卒業式の練習が時間割に組み込まれていて、終わりが迫っていることが見える。「これが最後の」は6年生になってからたくさんあった。  こうやって、最後の何かを越えていくと、「初めて」が容赦なく降りかかる。時間は前にしか進まないのだから、ほんとは全部「初めて」なのかも知れなくて、そうすると全部が「これが最後」になるのか、などと考え

          桜屋敷を通る風/第18話

          桜屋敷を通る風/第17話

          17.プレゼント  朝の冷え込みが強くなり始めると庭の桜は黄色い葉と赤い葉を混ぜ合わせ、青空を背に色鮮やかな姿を見せた。けれど、紅葉の時期はそう長くは続かずに葉を落とし始めた。  香菜は、この落ち葉を集めておいて、たくさん溜まったら庭で焼き芋を作れないかな?と考えながら、竹ぼうきで掃いていた。落ち葉を山盛りにしてその中にサツマイモを入れる。漫画か何かで見たことがあるからやってみたかった。  ほんとにそれで焼き芋ができるかわからない。それに焚き火なんてさせてもらえるかも怪し

          桜屋敷を通る風/第17話

          桜屋敷を通る風/第16話

          16.変わりゆく季節  空の青さは高くなり、その高いところに薄い雲が綿を引きちぎったみたいに浮いている。  ずっと眺めているとゆっくり、ゆっくりと雲は流れていた。  この雲みたいにゆっくりとは季節は進まず、急に寒くなったり、また上着なんていらない気温に戻ったりを繰り返していた。  そのせいで香菜の朝の洋服選びが大変でこのところちょっとした騒ぎになっていた。 「お昼ごろは気温高いですて、天気予報の人言うてたやんなぁ。どうしょう?」 と、あっちこっちに服を出し、せっかく着たの

          桜屋敷を通る風/第16話

          桜屋敷を通る風/第15話

          15.真夏の思い出  蝉は何の予告もなく「せーの!」で大合唱を始めた。  公園の樹木とほとんど繋がったようなこの庭にもたくさんの蝉の子どもたちが眠っていたに違いない。  そして、今年生まれた蝉たちは、来年またその次の年と、土の中で順番待ちの幼虫たちのたちにも聞かせるように音量マックスで歌っている。それは間違いなく今が真夏であることを証明していた。  香菜はツクツクボウシが「ツクツクボウシ!」と鳴いているか「ボウシ!ツクツク」なのか、ミンミン鳴く声から選り分けるように聞いて

          桜屋敷を通る風/第15話

          桜屋敷を通る風/第14話

          14.相談相手のクロ  夏風邪だと判ったのがよかったのか、香菜は翌日には平熱になり食欲も出てきた。ただ、もともと食が細く好き嫌いが多かったので小柄だった体はより脆弱に見えた。頬がげっそりとこけ、大きな目は落ちくぼんでしまった。 長い髪が以前より重く顔に纏わりついて暗い印象になり、香菜は鏡の中の自分となるべく目を合わさないようにした。  少し動くとすぐ横になりたくなっていた体は、日曜日には普通に生活できるようになった。  朝食は、大好きなこんがりと焼けたトーストにバターをた

          桜屋敷を通る風/第14話

          桜屋敷を通る風/第13話

          13.梅雨の終わりに  太平洋高気圧は力の出し惜しみをしているようで、雨の季節の終わりは告げられてはいないが、雨が降っても晴れても、最高気温は先週よりも高くなった。  雨上がりの日差しの下は何もかもを蒸し焼きにしそうで、日向ぼっこの石の上には、緑のサンダルだけが体を火照らせて座っていた。  クロもプーも昼寝の場所は縁側の日陰か、午後のお日様になると日陰になるピアノの部屋の前のコンクリートの所だった。  そうやって親子で、夏の初めを桜屋敷の庭で過ごした。  もちろん、クロは

          桜屋敷を通る風/第13話

          桜屋敷を通る風/第12話

          12.雨雲の切れ間に  その翌週、空は昨日までの汚れを全部洗い流し、さっぱりと晴れ、お日様の光をそのまま届けていた。  クロは朝の食事もそこそこに、いつもより念入りに子どもたちの毛繕いを済ませ、何かに駆り出されるようにトラの家向かった。  トラに会いたくなったというより、今日は自分が桜屋敷を留守にしなければいけない。そうするしかない。その方が香菜ちゃんのママに余計な気遣いをさせず、予定通りに事が進むと思ったからだった。  昨日の夜遅く、香菜ちゃんのママがクロたちの寝床の

          桜屋敷を通る風/第12話

          桜屋敷を通る風/第11話

          11.重い雨雲の行方  雨の季節に入ったと発表された通り、すっきりとしない天気が続いていた。  今日も朝のうちは雲っているだけだったが、どんよりとした雲はこらえきれずに雨を落としてきた。  今日は土曜日。 「雨の日に学校もどこにも行かなくていいのってなんか得した気分。」  香菜は外の雨を窓越しに眺めてそう言った。  屋根に落ちた雨粒が集まって、横に並んでトントンと並んで瓦を降りていく。小さな薄っぺらい波は、雨樋に吸い込まれその先は見えない。  ピアノが置かれているフローリ

          桜屋敷を通る風/第11話

          桜屋敷を通る風/第10話

          10.香菜の小さな世界  日差しの強さが増し、晴れた日は暖かいというより暑いという表現の方が合うようになってきた。それでもまだカラッとした爽やかな暑さだった。  学校の帰り道、遅い午後の日差しを避けて影を選んで歩けば風が気持ちいい。重いランドセルを背負ってなければ、どこまでも歩いて行けそうだった。  香菜の家から学校までは15分ぐらい歩く。真夏の通学は辛くなりそうだ。  香菜の家のすぐ近くに住む美穂ちゃんと、もう少し学校に近いところに住んでいて家が散髪屋さんの裕子ちゃんと

          桜屋敷を通る風/第10話

          桜屋敷を通る風/第9話

          9. クロと子猫たち  クロと子猫たちの縁側生活は、平穏で順調だった。初日の夜にクロを呼び込むのに時間がかかったくらいで、その後は毎晩箱で子猫たちと眠った。朝早くガラス戸を開けてやるとどこかに行き、そう時間をあけずにまた戻って来て子猫たちのそばにいた。  最初は怖々入った家の中だったが子供たちと静かに一晩過ごせ、朝になると外に出してもらえた経験が、ここは大丈夫だとクロに思わせた。  遠い昔の、数か月ほど過ごした家の中での記憶も手伝い、閉じた空間のふんわりした空気の暖かさや

          桜屋敷を通る風/第9話

          桜屋敷を通る風/第8話

          8.飼い猫になるには  このところ随分と日が長くなり、まだまだ明るかったがもう4時半を回っていた。  あれから、香菜が子猫に名前をつけたいと言い出し、これからのことを考えるのは後回しになってしまった。  もともと猫好きの咲恵が香菜と一緒にはしゃいでしまったのだが、大人の咲恵としては、このまま全部の猫を飼い続けるのは無理だとわかっていた。  名前なんかつけたら情が移ってしまう。  子猫を持ち上げてもクロは怒らなかった。だが、クロ自身は手が届きそうで届かない距離までしか来なか

          桜屋敷を通る風/第8話