小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-③
・第二話 列車のふたり
「どうしてこっちに帰ってらっしゃったの? 東京や札幌には楽しいこともいっぱいあったでしょうに」
「いや、東京も楽しかったんですけど、とにかくなんでも高いんですよ。金銭感覚も性格的にもちょっとついていけない感じがしてました。このおにぎりと漬物食べて、ほっとしてます」
「わしらは足毛で食堂をやってるから思うんだけどね、結局人間って生まれ育った土地の食べ慣れたものが一番おいしいんじゃないかって思うよ」
「あ、わかります。東京でもしゃれたレストランとか