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Photo by
wingyork930
夏の蒲郡で手を合わせる
低い地響きがした
顔をあげればちょうど
目の前を電車が
走っていくのが見えた
名鉄蒲郡線の高架脇に
ひっそりとそのお墓はあった
妻が手を合わせる横で
僕も手を合わせていた
静かな昼下がり
夏の風物詩たる蝉の声は聞こえない
通りから離れている為か
車の喧騒も聞こえない
時折忘れた頃に電車が走っていく
微かな潮の香りが風に混じっている
暑い日だった
青い空には不釣り合いな色合いの赤
赤い電車にはさまざまな人が
乗っているのだろう
僕の知らない人たち
彼らはどこにいくのかな
僕もまたどこに向かうのかな
目を瞑り手を合わせて祈るには
なんだかこの場所は静かすぎる
そっと目を開けて
隣に立つ妻を見ると
妻もまた僕を見ていた
言葉は発さなかった
合わせていた手を離して
お墓にお辞儀をする
お線香の煙がゆらゆらと
白い線を描き立ち上っていく
風が吹くとゆらゆらと揺れて匂いたち
やがて景色の中に消えていった
新しいお花を添えて
新しい水を注いだ花瓶に
挿せば世界は正しい形の様に
見える
僕らは自分たちの
正しい形を求めて
生きていく
新たな花の香りを
見つける為に
静かな昼下がり
僕らはまた来た道を
てくてくと歩いて戻り
車に乗り込むと
お墓を後にした
綺麗な花が
青空の下で
静かに揺れていた
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