小さな貝殻から見えてくる世界

細かく砕けた貝殻の破片が

数えきれない程積み重なり

出来上がった波打ち際

蒲郡の海

貝殻で出来上がったと聞けば

ロマンチックに聞こえるが

現実は甘くはない

危険でいっぱい

素足で波打ち際を、歩こうものなら

割れた貝殻の鋭い破片によって

かわいい素足が傷だらけになって

痛い思い出を文字通りその身に刻む事になる

そうならないようにサンダルを履き履き

探究心もちゃんと持ち寄って

波打ち際を矯めつ眇めつ

見つめていると見えてくるものがある

細かな貝殻の破片

名前を判明しようにも細かすぎて分からない

破片を繋ぎ合わせて元の形を探ろうにも無理難題

だけれどもそんな貝殻の破片には

さまざまな模様が刻まれている

模様を見ているとだんだんと

惹かれてくるものがあり

気になり問い詰めたくなる

どこで生まれて

どのように育って

どうしてここに流れついたのか

蒲郡の海は僕をワクワクさせてくれる

刺激的なものに溢れ返っている

水族館ですら取り上げてもらえない

生き物が波打ち際から

向こうにはわんさかといるのだ

波打ち際より向こうの世界

酸素が無いと生きていけない人間が

踏み込めない世界

名も知らぬ貝達の吐く白い泡

小魚な群れを見上げるヤドカリ達

獲物を狙うイカや大きな魚

魚網に引っかかって

逃げたくても逃げられない海亀

細かく砕けた貝殻の破片と

打ち寄せる波音によって

刺激される想像力

見た事のない世界を

見たいが為に通ってしまう竹島水族館

好奇心を満たそうとするほどに

もっと知りたくなるから

好奇心とは厄介な代物だ

知らない世界のあれやこれやが

打ち上げられた波打ち際の

一面いたるところに埋もれているのだ

それらを紐解き観察刺激的

小さな生き物の確かな痕跡

追いかけては手に取り

観察しては図鑑を開き

似たような形の生き物を名前を見つけたのならば

我が物顔で親に自慢気に話してみる

ロマンチックのかけらもない蒲郡の波打ち際には

刺激的で面白いロマンがいたるところに

転がっている

小さな貝殻一つ侮る事なかれ