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【255文字書評】楽しく学べる「知財」入門/稲穂健市 著 (2017/02)

自称「知財オタク」で、変な発明を収集している方が書いた、知的財産の本。
地味なタイトルだけど、事例が豊富で、まさに「楽しみながら学べる」本。

本書には、読者の「知財リテラシー」を最大限高めることができるよう、以下の3つの特長を盛り込んでいる。

身近に感じられるユニークな事例(事件化したものに限定されない)をふんだんに盛り込み、「模倣」という切り口から知的財産権について楽しく学べるようにした。特に、独自の調査や取材を通じて各事例の背景にある人間ドラマを描き出し、「事実は小説よりも奇なり」を体感してもらうことで、読者の理解が一層深まるようにした。

②面白さと実用性を両立させることで、知的財産権に関連した実践的な知識を自然と読者に身に付けてもらい、それをビジネスなどに役立てられるようにした。

③知的財産権に含まれる各権利(著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権など)の違いを際立たせた。さらに、各権利が交錯したエピソードを紹介することで、読者に対して複数の知的財産権を組み合わせた効果的な知財戦略を考えるヒントを示した。

Kindle版 位置No.120「はじめに」より

知的財産権と言えば「特許権」が真っ先に思い浮かぶが、本書では親しみやすい「著作権」と「商標権」から先に説明しているところが良い。
そのおかげで、面白い事例とともに、どんどん読み進めてしまう。

最後の章の「法律で定められた以上に過敏に著作権などに反応してしまっていないか?」という考察は、とても興味深い。

ところどころにユーモラスな表現が出てくるところがお茶目。

ここでやっかいなのは、知的財産権に含まれる著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などは、それぞれ保護対象と保護期間が異なっているため、「内容的な安全地帯」と「時期的な安全地帯」についても、それぞれの権利でまちまちという点である。

つまり、「模倣がどこまで許されるのか?」と判断する際の勘所が、各権利で異なっているのである。

これが、他人のアイデアや作品を参考にする際に、「どこまでが許されて、どこからが許されないのか」という疑問をわかりにくくしている大きな要因ともなっている。

そしてこの辺りの「さじ加減」を誤ると、他人の権利を侵害してトラブルに巻き込まれたり、またそれとは逆に、委縮しすぎてせっかくのビジネスチャンスを逃したりするといった不利益を被ることになる。と同時に、権利者の視点に立てば、ひとつの対象に複数の知的財産権を共存させることができる場合であっても、そのことを知らなければ、それら複数の権利を組み合わせる効果的な知財戦略を思いつくこともない。

Kindle版 位置No.99「はじめに」より

2017年2月刊


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