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これは「何者か」になりたかった、彼らの物語『いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません』感想

若い頃の話です。

中学生か高校生の頃だったでしょうか。

あの頃の私も、小説家になりたかったように思えます。

すごく簡単な話で。

作家さんって。

自分を表現しているように見えたんですよね。

そうやって。

自分を表現している、「何者」かになりたかった。

社会に影響を与える、「何者」かになりたかった。

そんな事を思いつつ、今日もnoteで感想を書いている、私です。

そんな私を、よろしくお願いします。(ぺこり)


さて。

というわけでもあるのですが。

本日、ご紹介するライトノベルは、詠井晴佳先生の『いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません』(2023年7月刊行)です。

今回は、青春ファンタジーみたいですよ……?



あらすじです

今回もまた、「BOOK☆WALKER」さんより、あらすじを引用させていただきます。

 いくつキャラをこえれば、私は私になれる?

 15歳の時に明澄俐乃のために作ったVRキャラクタ-≪響來≫。ただのキャラクターであったはずの彼女が19歳の成央の前に現れた。
 響來の願いで再会する成央と俐乃。19歳の俐乃は芸能人となり、誰よりも輝きを放っていた。居場所を求め、傷つきながらも一人走り続ける彼女を見て、成央は15歳に置き去りにした感情を思い出す。
 保健室で見た、「はじめて」の瞬間。
 二人だけしか知らない、甘い時間。
 そして、叶えられなかった約束。
 鮮明に、克明によみがえる憧れと葛藤の欠片たちは、成央に突き刺さる。
 19歳の現実と理想に向き合う中で、二人は本当になりたかった自分と、なれなかった自分を思い出していきーーやがて、響來が現れた本当の意味を知る。
 第17回小学館ライトノベル大賞受賞作。キャラクターと葛藤が紡ぐ、優しくも切ない青春ファンタジー。

いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません。(ガガガ文庫) - ライトノベル(ラノベ)│電子書籍無料試し読み・まとめ買いならBOOK☆WALKER (bookwalker.jp)


というわけで。

本日のテーマは、「キャラクター」となっております。



つまるところの、青春小説

さて、この作品について書くのなら。

非常に密度の高い、青春小説となっております。

しかし、ただの青春ライトノベルではなく。

ちょっとしたファンタジー要素のある、青春ものとなっているのです。



男子中学生で15歳の主人公、七曲成央(ななまがり なお)は。

学校をサボる理由から、保健室に入ったところ。

自分のよく知る音楽が、遮光カーテンの先から音がするのを耳にします。

気になった主人公は、カーテンに手を掛けた先には。

一人の少女がいました。

彼女の名前は、明澄俐乃(あけすみ りの)。

互いに興味のある音楽から。

二人は親密になっていきます。


それから4年の月日が経ちます。

専門学生となった主人公は。

ハイボールを飲みながら、六畳のワンルームに一人暮らし。
(まだ20代になっていないというツッコミは、ここでは置いておきます)

そしてテレビの先では。

「境童話(さかい どうわ)」という芸名で。

芸能活動をしている、俐乃の姿が映ります。

主人公は、過去を思い返します。

「あの時の選択は本当に正しかったのか」と。

何者にもなれなかった自分。

何者かになれたのに、どこか苦しそうな彼女。

そんな葛藤の末、眠ってしまった主人公の部屋の中に。

一人の少女が現れます。

彼女の名前は、「響來(ゆら)」

それは、過去に二人が創り上げた、バーチャルシンガーであり。

Youtubeチャンネル登録者数、199万人をほこる。

架空の人物でありました。

そんな彼女が現実世界にいる。

混乱する主人公を尻目に、響來は言います。

「堕落しやがって」と。

そして、こうも言います。

「ママに会わせて」と。

そのことがキッカケとなり。

七曲は、4年ぶりに俐乃へ連絡をすることとなって――。

というのが、話のあらましとなっております。



この作品の面白い所

なんといっても、葛藤をしている所でしょうね。

葛藤といっても。

男女のすれ違いを表しているのでは無く。

主人公も、ヒロインも。

「何者」かになろうと、もがき苦しみ。

その結果。

なれなかったり。

なれても、苦しんだりと。

そういった、必死で「何者か」になろうとする。

その葛藤、苦悩が。

とても良く表現されていると思いました。


あと、ファンタジー要素である「響來」の存在も。

ちょっとしたアクセントとなっており。

物語を動かす原動力になっていたと。

私は感じました。


そして、この作品。

10代の読者には、かなり刺さる印象を受けました。

また、そういった「何者か」になりたかった大人達にとっても。

何かを思い起こす作品になるかなと思いました。



この話の欠点について

主人公の言動に、ちょっとだけ違和感がありました。

周りの大人が、主人公に対して。

「もうヒロインと会うな」と釘を刺されるシーンがあるのですが。

主人公は、特に葛藤も無く。

普通に、ヒロインと出かけていきます。


この場面を読んでいた私は。

「そこは無視でいいの!?」という。

ツッコミを入れてしまったのは、内緒です。



最後に

とはいうものの。

最終的には、主人公のある思いが、ヒロインにちゃんと伝えられる、本作。

ジュブナイル小説のような、青臭い部分もありましたが。

そういった所を含めて。

面白いライトノベルであったなぁと思ったりもします。

なお、主人公がどういった思いを持っているのかは。

本作を読めば、明らかになることでしょう。

そのもどかしさが、最大のポイントですけれどもね。


さて。

最後まで、ご覧いただきありがとうございます。

この作品に、ご興味がありましたら、是非、手に取ってみてください。

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