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★児童・生徒指導60★生徒指導提要から考える その13(「こども基本法」)

今回も「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。

「生徒指導の取組上の留意点」について読み、考えをまとめていきます。ここでは、「児童生徒の権利の理解」「ICT の活用」「幼児教育との接続」「社会的自立に向けた取組」の4つの留意点について述べられています。今回は、「子ども基本法」に焦点を当てていきます。


「子ども基本法」の主な理念

生徒指導提要では、「子ども基本法」の目的と主な理念が取り上げられています。第3条「基本理念」の中から取り上げられている部分を、「子ども基本法」から引用します。

・全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。(第3条第1号)
・全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。(第3条第2号)
・全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。(第3条第3号)
・全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。(第3条第4号)

子ども基本法

この4つの号の条文を読むと、「個人として尊重されること」「愛され、守られること」「健やかな成長・発達・自立」「意見を表明でき、尊重されること」「社会とのかかわりをもつこと」などが基本理念として述べられていることが分かります。

親と教師の役割

これらの考えは、多くの親が子どもに対して心の土台の部分では等しく抱いている気持ちであると同時に、親と子どもの「人間」のちがいによって不釣り合いが生じてしまうことであると感じます。

もう少し詳しく言うと、幼いわが子に対して「健やかに育ってほしい」「意見を言えるようにがんばってほしい」「社会(お友達)の中で楽しく、うまくやっていけるようになってほしい」などの気持ちをもち、無償の愛をそそぐ親は多いと思います。

しかし、子どもが自分の自我をもってくるようになると、親は「自分とこの子とのちがい」を明確に感じることも増え、その違いに対して不寛容になってしまうこともあります。「どうしていうことを聞かないんだ」「こっちの方が明らかに安全な進路なのに」「それは(私が)不安だから、やるのをやめておきなさい」などのように、制限をかけてしまうことがらでもあると思うのです。そして、次第に「~ができる、〇〇ちゃんが好き」「言うことを聞いてくれる、〇〇くんが好き」などのように、条件付きの愛情しか向けられなくなってしまうこともあるのではないでしょうか。

もちろん、このように子どもの行動や考え方に制限をかけることを全く否定するつもりはありませんし、よくない方向に道が逸れそうになっている子どもをよい方向に導くことも親の役割であると思っています。

注意しなければならないことは、子ども基本法にあるような理念を、子育てにおける心の土台に位置づけ、意識的になってみる機会も必要だということではないでしょうか。

前回の記事でも書いたことですが、このような条文について知っておく意味には、「今の私の言葉は、子どもの人格を尊重できているのだろうか」「社会とのかかわりを大切にしてほしいと思いながら、子どもの行動を制限してしまったのではないだろうか」など、目の前でその理念に関わる出来事が起こったときに、その重要度を念頭に置きながら子どもに接することができるようになるということもあると思っています。(私も含め、いちいち自分の意識の中で、このような法律の条文に立ち返るということはとても現実的ではないと思っています。それに、そのような崇高な意識で子どもに向き合っているわけではなく、実際の場面では、「目の前のこの子を大事にしたい」という思いで考え、接することがほとんどであると思います。今回はあくまでも、このような条文を読んでみることを通して、「知っておく意味」について考えたいち意見です。)

親の視点で述べてきましたが、学校という場で子どもに向き合う教師にとっても土台としては同じような視点が必要になると思うのです。もちろん、家庭という場でわが子を見る親と、学校という場で多くの子どもを見守る立場を担っている教師とでは、視点も役割もちがいます。しかし、心の土台でこのような子どもへの見方・考え方を共有することで、親と教師が同じ目線に立って対話をし、協力して歩んでいくことができるのではないでしょうか。


ここまでお読みいただきありがとうございました。