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「人工の島、人造の魂」第1話(全11話)
【あらすじ】
私は神戸港に浮かぶ人工の島、ポートアイランドで育った。
幼い私は「人造の魂」のマリンとポピア、「伝統太鼓」を強要する神野先生、ギターで自作曲を披露する山ン本先生と出会う。
一方で、イラン革命から逃れてきた少女フィローゼに暴力を振るい追い出してしまった。
やがて島は《暗闇の雲》に襲われ、《未来戦争》が始まる。みんなは立ち向かうが、大地震が起こって島は崩壊した。それは私が見ていた夢だった。
引っ越し先になじめなかった私は、大震災で孤立した島をテレビで見て、自分を裏切り者だと感じた。
長い時が経ち、私は妻と島へ帰る。そこで置き去りにしてきたみんなの声を聞き、自分は「人造の魂」になってしまったと感じた。(296字)
こんな歌があります。
「E! E! E!
E! E! E!」
RCサクセションではない。
「Eの形のポートアイランド〜」
と、続きます。
神戸港には、人工の島が二つ、浮かんでいます。
東の方が、六甲アイランド。
そして先に完成した西の方が、ポートアイランドです。
昭和56(1981)年、当時世界最大の人工島として、ポートアイランドは誕生しました。
神戸最大の繁華街・三宮と環状線のモノレールで結ばれ、コンベンションセンター、コンサートホール、遊園地、スポーツ施設、プラネタリウム、三つの公園、量販店、二つのスーパーマーケット、並木道のアベニュー、そして新築の高層マンション群がずらりと立ち並ぶ、「未来都市」でした。
その「未来都市」っぷりをアピールするため、「ポートピア’81」という地方博覧会が開催され、千六百万人もの来場者を集めたというのも、ひところは有名な話でした。
冒頭の歌の通り、ポートアイランドは、アルファベットのEが少しひしゃげたような形をしていました。
いました、というのは、もうずいぶん前からそうではないからです。
昭和62(1987)年に始まった「ポートアイランド第二期工事」により、島の南部は次第に拡張されていきました。
ちょうどEの文字のさらに下へ、もう一本横線が付け足され、ペリカンのくちばしみたいに、ニョーンと広い部分が伸びていったみたいでした。
何ていうんでしょう、寄生獣に出てくる「ジョー」みたいな感じというか。
その土地は、ものすごくだだっ広かったけれど、文字通り何もない、真っ白な砂の空き地なのでした。
一体何に使うんだろう?
と、みんな思っていましたが、
きっと、うまく利用して、また賑やかにしてくれるさ! だって、この島を作って、「ポートピア」を大成功させた、「神戸市様」なんだから!
と考え直して、何となく安心していました。
そんなフロンティアみたいな荒野を作り出したのには、一応ちゃんとした理由もあって、「第二期」のさらに南の海に「地方空港」を建設するという、またまた遠大な計画があったのです。
空港ならもう、伊丹と大阪に二つもある!
と、たいがいの人は声を上げました。
さすがにそれは、赤字しか生み出さないんじゃないか?
と、「神戸市ファン」の人でも、やや尻込みしていました。
ただ、本当に空港ができるとしてもまだまだ先の話だし、ひとまず「第二期」の土地はもう目の前に広がってしまっているしで、とりあえずまあいいかという感じで、話は何となく先送りされていきました。
そうこうしている間に、例の「E! E!」と連呼する歌も、次第に忘れ去られてゆきました。
今では、この星の全てをビッグデータ化しようとしているGoogleで検索してみても、当時の住民の方の記憶以外、何も出てきません。
ポートアイランドが、Eの形をしていたと知っている人。当時の住民、……
私もその一人でした。
人工の島、人造の魂(全11話)
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
第7話
第8話
第9話
第10話
最終話
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