見出し画像

【創作大賞2024応募】あとがき | 「応募作:黄金を巡る冒険」

一つの目標があった。
それは目標と言うよりかは「憧れ」に近いかもしれない。

「27歳までに小説を一本書こう」
そう思った。

理由は簡単で、僕の敬愛する村上春樹氏が処女作である『風の歌を聴け』を27歳に書いたからなのだが、書き終わって充足の悦に浸っているとふと違和感が頭をよぎった。

もしかしたら、29歳だったかもしれない。
いや、そんなはずはないと思い調べてみるが、結果は以下であり、違和感の勝ちだった。(村上春樹氏は1949年生まれ)

1978年4月1日、明治神宮野球場で行われたプロ野球開幕戦、ヤクルトスワローズ対広島東洋カープ戦を観戦していた村上は、試合中に突然小説を書くことを思い立ったという。それは1回裏、ヤクルトの先頭打者のデイブ・ヒルトンが二塁打を打った瞬間のことだった。当時ジャズ喫茶を経営していた村上は、真夜中に1時間ずつ4か月間かけてこの小説を完成させた。村上にとってまったくの処女作である。

Wikipediaより抜粋

この目標(もしくは憧れ)は村上春樹氏の『騎士団長殺し』を読み終えた2021年(著者の長編はこの時に全て読み終わった)に生まれたので、大体3年前から煩わしく寄生虫のように頭の片隅を陣取っている。

なぜ27歳と29歳を勘違いしてしまったかはこの際どうでも良い。”書き終わった”という事実に水を差すのはやめたいと思う。阿呆の一作であったとしても、ひとまず一つの物語を生み出したことには変わりないから。ただ2年”早まって”しまっただけ。

とにかくここで伝えたいのは、村上春樹氏に敬意と感謝を伝えたいという事であって、この作品に多くの道を与えて頂いた。タイトルでお気づきになる方もいるかもしれないが、影響風をじゃばじゃばと受けている。


◆創作対象2024 応募作:黄金を巡る冒険


この恩は村上春樹氏の翻訳本も全て買って返そうと思っている。(現在20冊ほどは持っているので、あと50冊くらい)

もちろん他に影響を受けた作家も多く、おそらく、「影響を受けた作家(アーティスト)は誰ですか?」なんて誰にも聞かれないだろうから、自発的にたくさん書いておこうと思う。

  • 村上春樹

  • 宮沢賢治

  • 夏目漱石

  • 阿部公房

  • カート・ヴォネガット(ジュニア)

  • 荒木飛呂彦

  • 荒川弘

  • 宮崎駿

  • ヨルシカ

  • 今井むつみ

  • ゆる言語ラジオの二人

この本の走り出しは、ひとまず「概念の消滅」が起点としてスタートした。
病は気から、という言葉がある。ありふれた文句だ。なら、この文句の”気”はどこから発生しているのか? 

それは言葉かもしれない。そう思った。

「風邪流行っているらしいね」
「昨日の食材賞味期限切れてたかも」
「病んでるんじゃない?」

こんな言葉聞くたびに、あれ、なんか、となんて考えてしまう。言われなければ何も無かったはずなのに、これこれだけど風邪かな?やっぱり○○かも。なんてこじつけが始まる。

一年前に、たまたま整体に行く機会があった。特に何も悪いところは無いと思っていたが、整体師に「骨盤が歪んでますね」と言われた。
人間歪むもんでしょう、と思いながらも、まずいことでもあるのか聞き返したところ、当たり前のように「腰痛の原因になります」と言われた。

その日から妙に腰を気にするようになってしまった。特段痛む訳でもないのだが、ちょっとした時に伸びをすると、背中から腰にかけての筋繊維がぴきっとする気がする。だが今のところ腰痛の症状は全く出ていないから、おそらくその痛みも気のせいだろうけど。

こんな風に、言葉からこじつけるバイアスが人には生得的に備わっているのではないだろうか。
ならば、人は総体的な概念を恣意的に着色しているのではないだろうか。

そう思うと、ある言葉が存在しない「透明な世界」を見てみたいと思った。

言語には「知らないけど何か分かる」という本質が存在するのではないかと思っている。工学系大学の出身のため言語学という学問には全く触れてこなかった。なのでそれは本当にただ思っていただけ、の階層に留まっていたけれど、あるときあるポットキャストを見つけた。

それが『ゆる言語ラジオ』であって、その時にとてもぴったりだなと思った。

今では言語学の沼にどっぷりと浸かってしまい、題材本も多く読んだ。特に今井むつみ先生の著書を好んで読んだ。中でも『言語の本質』は自身の「オノマトペ観」を大きく広げてくれた、素敵な一冊だった。

ここ一年、言語について素人なりに色々と考えてみた。きっとまだ浅い理解だろうけど、言語の性質の0.1%は理解できたと信じたい。そして、その0.1%の結果としてある感想を孕んだ。

それは、「言語って不可逆的だな」という雑の類の感想だった。
人は言葉を新しく作るのだから消せたっていいじゃないか、
可逆的な言語は無いのだろうか、などなど。

”嵌った”という感覚があった。その考えは、初めの「概念の消滅」と奇跡的に結びついていたからだ。かくして『黄金を巡る冒険』の構想が固まった。とても良い一年だったと思う。そして多くの人に届くと大変嬉しく思う。

最後に、多くの人に届くと嬉しく思うと言ったけど、既に尊敬している(もしくは、読んで欲しいと思っていた)御二人から好ましく素敵な感想を頂いている。

それだけでも書き上げた価値はあったのだと思う。

あとがき(完)
Mr.羊


「黄金を巡る冒険」のマガジン

Photo by

おすすめ本


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?