雑感記録(91)
【時を超える芸術】
昨日、僕は転職エージェントの人とZOOMで面談をした。僕は複数件そういったサービスを利用しており、これで3人目の転職エージェントだった。今までの人とは異なり、親身に話を聞いてくれるが的確なアドバイスと将来的なビジョンを実現するために必要な事を教えてくれた。自分の中では結構当たりである。時たま厳しいことも言われたりしたが、それでも今までの人たちより真剣に考えてくれているのが非常に良く分かる人だった。
その面談があるため、僕は昨日仕事を早く切り上げて帰宅した。しかし、早く帰宅して支度するのだが、用意するのはパソコンぐらいなものでさして準備に時間は掛からない。面談は19時からスタートだったのだが、用意できたのは18時で1時間の余裕が出来た。時間が来るまで何しようかとパソコンを開き、YouTubeで音楽を漁っていた。
しかし、本当に便利な世の中になったと改めて思う。この間の記録で久々にTSUTAYAへ行ってDVDをレンタルした話を書いた訳だが、昔はTSUTAYAが僕にとって音楽や映画の最先端だった訳だ。
今ではそういった場所へ赴かなくても手元で新しい情報は常に目に入ってくる。スマホを覗けば情報がそこに集約され、片手1つで、指先1つであらゆる情報にアクセスできる。実物を見て探すというより、自身で文字入力による検索でイッキに出てくる。まあ、探す醍醐味は失われてしまう訳だが、時間有効的に活用するという意味では非常に良いものであると常々感じる。
それで僕はYouTubeでShort動画を見ていた訳だが、その中で「夜に聞きたいHipHop」というタイトルで3曲が切り抜かれていた。そのうちの2曲は聞いたことがある曲で、正直自分の中でも「これは確かに夜に聞きたいよな」とある意味で再確認した。残りの1曲は聞いたことがない曲だったので新鮮であったが、この曲に僕はやられてしまった。
僕はKEIJUのラップが非常に好きなのだ。あの脱力感ある声が何とも言えない。どこか違う世界へ連れていかれるようなフロウ。この曲の当時はYOUNG JUJU名義であるが、今と比べると若干音が高い。しかし、それもまた堪らないものがある。
KEIJUを知らない方に簡単な説明をすると、彼はKANDYTOWNというヒップホップクルの一員である。どうやらKANDYTOWNは解散してしまうらしい(というか既に解散しているのか)のだが、凄く心地のよいラップをするクルーである。僕はKANDYTOWNの中で1番好きな楽曲はこれである。
これは一時期、狂ったように聞いていた。
最近の曲な訳だが、最初のKEIJUのバースで僕はやられてしまった。KANDYTOWNはやはり最高のヒップホップクルーだなと改めて思う。ヒップホップクルーというと僕はWu-Tang Clanが真っ先に思い浮かぶのだが…。まあ、それは置いておくことにしよう。
それで、色々と曲をディグっていたら、なんと!なんと!最高のPVに出会ってしまった。まずは四の五の言う前に1度見て欲しい。
唐突だが、僕は山下達郎が大好きだ。邦楽の中では唯一追いかけ続けているアーティストである。その山下達郎の『SPARKLE』のPVな訳だ。実際にこのPVを見ると山下達郎とは遠い、現代風の人がダンスをひたすら踊る訳なのだが不思議と引き込まれてしまう。そして僕は感じた。「時を超えた芸術だ!」と。
この『SPARKLE』は1982年に発売された『FOR YOU』に収録された曲である。この『FOR YOU』というアルバムは最近、本当につい最近だがリマスターされアナログレコードとカセットテープで再発売された。これは1ファンとして買わない訳にはいかないなと思ったが、僕としては聞ければそれで十分なのだ。
はてさて、若干話がずれてしまった。この1982年に出た曲が現代に蘇ったと僕はこのPVを見て感じたのである。無論、今の時代に於いては昔の曲も手軽に聞ける時代である訳だが、これは少し事情が異なる。何というか…昔の曲が現代のアートと交わったことで新たなアートが生まれたのである。
PVを見て貰えれば分かるが、『SPARKLE』に合わせてひたすらダンスしている人の映像が流れる。一見すると「曲に合わせて踊ってるんだな」と思うかもしれないが、僕からするとどこか違和感を感じる訳である。これはバイアスが、悪い意味でのバイアスが掛かっている。『SPARKLE』は昔の曲であり、現代的な少し前衛的なものと調和すること自体合わないとどこかで感じてしまっているのだ。言葉で表現するのが非常に難しいのだが、『SPARKLE』を聞くことで僕は昔の感覚というか「こういう時代もあったんだよな」とある種のノスタルジーに浸る訳だ。
ところが、曲に合わせて映し出されるのは前衛的なダンスを繰り広げる人間。最初はかなりミスマッチだなと思ってしまった訳だが、何故か引き込まれてしまっていた。何回も何回もリピートしてしまっていた。
僕はこういう新しい何かが生まれる瞬間というものに心底興奮を覚える。何というか昔のアートに対して現代のアートがどうアプローチ出来るのかということを本気で考えて更に新しいものを生み出せるのは非常に素晴らしいものがある。
以前、懇意にさせて頂いている社長のご友人が浮世絵をやっているという話を聞いた。木板をレーザーで焼いて木版を作成して刷るというものらしい。実際にその版画を見せて頂いたのだが、これが非常に素晴らしかった。僕は日本画とか浮世絵とかあまり得意ではないのだが、この浮世絵は非常に面白かった。ちなみに、最近『美の巨人』という番組で特集されたらしい。
こういう現代の技術と古来の方法を組み合わせて新たな芸術を生み出すということは非常に面白い。今回の場合では昔の曲に対して現代的なアプローチをすることで、昔の作品が新しい様相を呈して目の前に映し出される。そこで生まれる作品は今まで出会ったことのない、聞いたことがある曲なのだが今まで気づけなかった新しい何かがそこに生まれるのである。この瞬間を僕は目の当たりにした訳なのだ!
以前、別のベクトルから書いた訳だが、やはり新しい何かを生み出すためには従来存在するあらゆるものに触れなければならない。そしてそれが重要なことであるように思う。「温故知新」というのは正しくこういうことなのだなとこのPVから僕は再度認識した。
僕が昔の作品を中心に読むのは、きっと何か新しいものを生み出したいという欲求が心のどこかに少なくとも存在しているからなのではないのかと思ってみたりして。
よしなに。
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