見出し画像

生産性アップの秘訣「健康経営」とは?導入目的やメリットを解説します

心と体の健康は相互に影響を与えます。新型コロナウイルスの影響により、この数年でライフスタイルが激変した人は少なくありません。

昨年、経済協力開発機構(OECD)が行ったメンタルヘルスの調査では、日本国内でのうつ病・うつ状態の人の割合は、新型コロナウイルス感染拡大以前と比べ2倍以上の増加となったと報告がされています。(参考:https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/improving-mental-health-care-key-to-covid-19-pandemic-recovery-says-oecd-japanese-version.htm


心身の不調を抱えたまま、あるいは気付かないままでの就業は、本人の苦痛もさることながら企業の生産性低下に繋がりかねません。
心と体の健康を整えて健全に労働ができる環境の提供「健康経営」は、企業としてメリットの高い経営手法です。
そこで、健康経営とはどういったものであるか、導入目的やメリットを解説していきます。

健康経営とは?

健康経営とは経営手法です。従業員の健康管理を「投資」と考え、企業の成長を図ります。


心身の健康は個人のためはもちろん、企業の生産性を高めるために重要です。


ひと昔前まで、心身の健康状態は全て個人の責任だと考えられてきました。そのため、実際には軽度うつ症状が出ている人に対して「甘えているだけだ」と事実とは異なる判断をされてきたのです。

しかし、職場の環境が理由でメンタルヘルス不調に陥る人が増加し続けたことにより、健康管理は個人の責任だけではなく、企業の責任も重いと考えられるようになりました。


従業員の心身の健康づくりに積極的であり、健康的な経営を行っていけば業績アップや企業イメージの向上につながると言われているため、近年多くの企業で健康経営は取り組みがされています。


健康経営の「生みの親」はアメリカのある心理学者です。1992年に心理学者であるロバート・H・ローゼンが出版した著書「Healthy company」を基軸に、健康経営という言葉が広がったとされています。

当時、アメリカでは1960年代から労働災害の件数が多くなり、それに伴い企業が負担する医療費が増幅、企業経営を脅かすほど深刻な状況にありました。

というのも、アメリカには公的医療保険制度がありません。それは現在で基本的に同じで、医療機関にかかると莫大な金額がかかります。

在ニューヨーク日本国総領事館のホームページでは一例として、ニューヨーク市で入院した場合、室料だけで2千から3千ドルかかると表記がありますので、いかに高額な医療費が企業の負担となるのかがわかります。

参考 在ニューヨーク日本国総領事館:https://www.ny.us.embjapan.go.jp/jp/g/01.html


従業員の健康が企業の収益性を高めるという考えは、「莫大な医療費」という切実な背景により生まれたのです。


健康経営が推進される理由

従業員の健康管理が企業の収益性を高める、とアメリカで始まった健康経営ですが、日本ではなぜ今その経営手法が推進されているのでしょうか。

慢性的人手不足

少子高齢化の問題は日本において深刻です。厚生労働省が発表しているデータによると、2065年には日本の総人口はついに9000万人を割る見込みとなっており、高齢化は38%代となる予測がされています。(厚生労働省ホームページより https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html

単に「お年寄りが多くなる」だけの問題ではありません。労働意欲はあるものの、家庭内で高齢者の介護に時間を取られるためフルタイムでの勤務を諦めざるを得ない人もいます。

総務省が2017年に行った就業構造基本調査によると、介護をしながら働く人は346万3千人に上ります。

参考

2017年度「就業構造基本調査」:https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kgaiyou.pdf


介護が始まると心身の負担が激しく、介護以前と同様の働き方が難しくなることは容易に想像ができるでしょう。同上の調査が行われた2017年の時点で、介護を理由に離職した人口は男女含め9万人以上となっています。

これから先も続く高齢化によって、労働力の確保はさらに困難を迎えると予想されます。企業にとって一度採用をした人が長く働いてくれる状態を維持することは、企業の体力を維持する方法に直結しているのです。

生産性の維持

従業員が健康に就労することは、企業の生産性を維持することに繋がります。長年、日本の「お家芸」とも言えるようなサービス残業・長時間労働は問題視をされてきました。毎日のように終電近くまで労働をする環境では、心身の疲れは取れず仕事のパフォーマンスも向上しません。

厚生労働省は「長時間労働削減推進本部」を設け、国としても健全な労働環境維持を呼び掛けています。国が介入をしなければならないほど、働き方は不健康であったと言えるのです。

さらに、先述の少子高齢化により、労働者一人ひとりの業務量の負担が増加した場合、健康経営という「ルール」がなければ暗黙の了解で長時間労働へと繋がる可能性を否定できません。健康経営は労働者の健康を守り、労働環境が悪化しないための指針となるのです。

働き方改革の導入

大企業では2019年より、中小企業では2020年より時間外労働の上限規制が設けられました。原則として月45時間・年360時間を超える時間外労働はできません。

規定の労働時間内に効率よく生産性を上げることを考えると、労働者の就業パフォーマンスを向上させることが重要となります。集中力を維持しながら短時間で仕事を終える必要が従業員すべてに期待することとなります。そのためには、気力と体力を維持できる健康体であることが必須と考えられます。

健康経営に取り組むことが働き方改革で「短い時間で生産性を上げる」鍵なのです。

健康経営に取り組むメリット

健康経営に取り組むことで企業にはさまざまなメリットがあります。従業員の健康のためだけではなく、順調な経営のために健康経営が有効な理由をみていきましょう。

生産性の向上

軽い風邪の状態で仕事が手につかない状態を経験をした人も多いはずです。体調不良やメンタルの不調は、仕事のモチベーションを低下させる要因となります。

長時間労働で慢性的な寝不足となったり、ハラスメントの横行によりメンタル不調となったりと、職場環境がストレッサー(ストレスの原因となる外的刺激)となってしまっては、企業は自らの首を絞めているのも同然と言えます。

ストレッサーとなるのは主に不安・緊張・恐怖・怒り等がありますが、一見すると体調とは無関係に感じます。ストレスが生じると、体は必死に「解消したい」と防御をします。強いストレスや不規則な生活が続くと交感神経と副交感神経とバランスが崩れ、自律神経失調症を招く恐れが高まるのです。

自立神経失調症を患うと、めまいや腹痛、慢性的な疲労感等、身体に症状が現れてしまい、場合によっては終業が難しくなることもあります。

従業員にできるだけ快適な就業環境を整えることで、仕事へのモチベーションを維持させることができるのです。

離職率の低下

2017年に内閣府が行った「就労等に関する若者の意識」では、最初の就業先を離職した理由について調査をしています。

その結果、離職の理由で多かったものは「仕事が自分に合わなかったため43.4%」、次いで「人間関係がよくなかったため23.7%」「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため23.4%」となっています。(参考:https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/s0_0.html

初めての就業で就業内容が自身の能力とマッチしなかったことは、個人の理由として防ぐことが難しいですが、他2つの理由については健康経営によって回避が可能な分類と考えられます。

現状、どの業界においても人材確保は容易ではありません。短期間で離職されては求人広告掲載料が嵩むばかりです。健康経営を定着させて離職率を低下させることで採用コストを軽減させることができるのです。


医療費の削減

医療費を含む社会保障費の負担はしばしば「見えない人件費」と呼ばれます。従業員が健康であることは、企業が負担する医療費のコスト削減を期待できるのです。

また、もしも従業員が患う心身の不調が労災認定を受けた場合、企業が負うダメージは小さくありません。企業に落ち度があると明らかであれば、従業員から慰謝料の請求がされる場合もあります。

労災が認定された従業員に対しては、治療中の解雇は原則上認められていません。症状が完治、あるいは治療を続けても改善が見込めないとされてから30日以上経過した場合、解雇が認められています。

これは労働者を守る権利でありますが、企業からすれば「健康経営の努力で抑えられる出費」でもあるのです。


自治体からのインセンティブがある

健康経営に取り組む企業には、自治体がさまざまなインセンティブを設けています。企業一丸となり健康経営に取り組むことを発信し、加入している健康保険組合の「健康企業宣言」に申請し認められることで、地銀・信金からの融資金利優遇や自治体からの表彰など、それぞれの自治体が定めるインセンティブを受けることができます。

さまざまなインセンティブが設けられていますので、詳しくは経済産業省のホームページにて確認してください。

また、健康経営の取り組み方についてはこちらのページで解説しています。ぜひこちらも合わせてお読みください。

健康経営の取り組み方を具体的に解説!業務効率を高めるお役立ちガイド

健康経営で企業力UPを!

労働人口の減少により、人材確保の競争は今後も激しさを増していくことが予想できます。企業としては、一度採用した人はできるだけ健康で長く就労してもらいたいものです。そのためには、最適で快適な労働環境の提供が鍵となります。

確かに、健康経営の取り組みのなかにはコストがかかるものもありますが、人的資本投資は企業の成長を促進します。

人も企業も息の長い活躍を!健康的に企業価値を高めていきましょう。


健康経営に関するご依頼やご相談は

お問い合わせフォーム もしくは お電話にて、お気軽にお問い合わせください。