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メンタルヘルスとは? 職場のメンタルヘルスケアの方法や疾患を解説

近年、メンタルヘルスの不調を訴える人は増加傾向にあると言われています。従来の仕事・家庭・人間関係といったメンタルヘルスに影響を与える理由に加え、この数年で新たな因子となったのは新型コロナウイルスです。

「当たり前」であった生活が激変したことで不安や焦りがストレスとなり、深刻なメンタルヘルス不調を訴える人もいます。

ストレスフリーな日常を送ることは、至難の業だと言っても過言ではありません。

令和3年に厚生労働省が行った仕事や職業生活に関するストレスに対する調査では、労働者の53.3%が何らかのストレスを抱えていると回答がありました。これは、派遣社員・正社員・パートなどの雇用体系別のデータではありません。実に労働者の半数以上がストレスを感じているのです。

心の健康を守るために、個人でできることは何か、そして職場でどういったケアができるのか、正しい知識を得て、メンタルヘルスの安定を心掛けましょう。


メンタルヘルスとは

「メンタルヘルス=心の健康状態」であることは、だいたいの方が認識されています。コトバンクによると以下がメンタルヘルスの定義です。

の健康のこと。メンタルヘルスケアは、具体的には、精神的な疲労やストレスを減らし、うつ病などの精神疾患の予防、さらには早期治療による改善から、よりよい心の状態作りまでを意味している。”

引用

コトバンクより「メンタルヘルス」の定義

https://kotobank.jp/word/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9-178865


「早期治療」と表記がされているのは注目すべき点です。
メンタルヘルスが不調になると、気分の落ち込みに加え、体調や行動に早期に治療が必要なレベルの支障が出ることがこの一文より伺えます。

厚生労働省はメンタルヘルス不調を「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう」と定義しています。

引用

労働者の心の健康の保持増進のための指針 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K151130K0020.pdf


メンタルヘルスの不調は心の状態のみならず体調にも顕著に現れます
最悪の場合、日常生活に支障を与えてしまうため、早期発見と適切な治療を行うことがいかに大切であるかがわかるのです。



メンタルヘルスに起因する疾患

厚生労働省のホームページでは「こころの病気を知る」としてさまざまな疾患があげられています。

どの疾患であっても誰もがかかり得ると認識することが大切です。

ここでは代表的な疾患の一部をご紹介します。

依存症

依存症とは特定の物質や行動にコントロールが効かなくなり「やめたくてもやめられない」状態になることです。

依存症という響きから、対象は薬物やアルコールが思い浮かびます。

しかし依存対象はニコチンやギャンブル、恋愛にも依存症がありその種類は多種多様です。

依存症は大きく「物質系」と「非物質系」に分けることができます。

しばしば、依存症は性格と結び付けられますがそうではありません。

一定の物事を自分でコントロールができないことが症状であり、適切な治療が必要な進行性の病気です。


うつ病

四六時中、気分が高揚することなく楽しいことがない状態が続きます。
十分な睡眠を取ることができないため、体調不良に陥り、日常生活に大きな支障がでることも特徴です。

うつ病はストレスが背景ではありますが、なぜ発症するのかそのメカニズムは正確に解明されていません。
それは「誰でもうつ病になり得る」ことを示唆しています。

うつ病の前兆として、以下のような症状が日常に現れるため、知識があれば事前にうつ病の兆しを感じとることが可能です。

自分自身に症状が出ていないかを確認することはもちろん、周囲の人たちにこれらのサインが出ていないか気にしておきましょう。

=うつ病の前兆=

・笑顔がなくなる

・自責が増える

・落ち着きがなくなる

・食欲と性欲がなくなる

・頻繁に動悸が起こる

・胃腸に不調が出る


強迫性障害

強迫性障害は、些細なことがずっと心に留まり不安や心配で日常に支障がでる状態になります。

心配の種はどこにでもあり、たとえば「戸締りをしたか」「コンロの火を消したか」「手の汚れが落ちない気がする」など日常の多岐に渡ります。また、縁起を過度に担ぐ、ジンクスやラッキーナンバーなどに強くこだわるのも特徴です。

強迫性障害では、これらのこだわりは「些細である」ことを認識しています。自分の意思に関わらず、気になったことを行動に移さなければ我慢ならない状態です。

しばしば、神経質な性格であると認識されるため、強迫性障害であることが見落とされる場合もあります。
こだわりの度が越していると思い当たる節があるなら、専門機関に相談することも考慮しましょう。


摂食障害

摂食障害では、適量な食事量を接種できなくなります。摂食障害には過度なダイエットが起因で「食べない」印象がありますが、反動として過食に陥ることもあります。過食になると嘔吐や下剤の大量使用などに繋がり、深刻な体調不良を併発するのです。

摂食障害は若年層の女性に多いとされていますが、男性だからかからないということではありません。厚生労働省のホームページによると、性別を問わず年間に21万人が摂食障害の専門機関を利用し治療しています。

摂食障害に陥る心理的背景には「自己肯定の低さ」が指摘されます。

厄介なことに、体重を落とすことで一定の達成感が得られ、自己肯定が高まります。これが、更なる摂食障害を引き起こしてしまう悪循環の原因です。

必要な栄養を摂取していないため、体調不良は深刻になり、心身の両面からの治療が必要となります。


PTSD

PTSDは「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字を取ったもので、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。

PTSDの引き金となるのは、強烈な恐怖体験です。自分の意思に反して、体験した恐怖が何度もフラッシュバックし、不安と緊張が継続します。

事故、事件、自然災害といった被害にあった人が、恐怖体験の後に適切な心の治療を受けず、また日常のストレスが多ければ多いほど、PTSDを発症する確率が高くなると言われています。

PTSDは心の弱い人がかかると認識されがちですが、決してそうではありません。

PTSD発生の誘発に繋がるとされているのはアドレナリンの分泌です。アドレナリンは恐怖や不安を感じたり、興奮・緊張したりすることで分泌されます。

すなわち、スポーツマンタイプであったり、競馬やパチンコといったギャンブルが過度に好きで興奮したりしやすい人はPTSDのリスクが高いとされるのです。

また、コーヒーやエナジードリンクといったカフェインを含む嗜好品を好む人もアドレナリンの分泌が多いため、注意が必要となります。




職場におけるメンタルヘルスケア

令和3年に厚生労働省が実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上の休業、または退職者がいる企業は10.1%となっています。

引用

令和3年労働安全衛生調査

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r02-46-50_kekka-gaiyo02.pdf


ストレスによってメンタルヘルスに不調が生じると、個人の心身的な負担はもちろんですが企業としてもマンパワーの喪失は大きな痛手です。

企業としても労働者のストレスに気付いて対処できるよう、継続的なメンタルヘルスケアが求められています。


<メンタルヘルスケア4つの方法>

厚生労働省はメンタルヘルスケアの指針として「4つのケア」を企業に求めています。


セルフケア

管理監督者を含む労働者本人がストレスケアを日常的に取り入れます。メンタルヘルスやストレスに対して正しい理解と知識を身に付け、自身がストレス状態にいないかを確認することで、メンタルヘルスの不調を防ぐことが可能です。

ストレス関連の研修の受講や、ストレスチェックの受験などがセルフケアに含まれます。

セルフケアでは、現状自分自身にどれだけのストレスがかかっているかを客観視することが大切です。
こちらのページで簡単なストレスチェックができますので、リンクをクリックしてチェックリストでセルフチェックをしてみてください。

ストレスチェックとは? 制度はチェックリストを紹介します



ラインによるケア

監督者が労働者のメンタルヘルスを日頃からチェックします。これによりメンタルヘルスケアに重要な「早期発見」が可能になり、労働者の休職・離職を未然に防ぐことが可能です。

ラインによるケアを徹底するには、監督者が日頃の労働環境の把握をができていることが大切です。監督責任者となる人は、労働者と適切なコミュニケーションを日頃からとれる人材が適任であると考えられます。


事業場内産業保健スタッフ等によるケア

「事業場内産業保健スタッフ等」はいったい誰を指すのか、と疑問の方もいることでしょう。該当するのは、産業医や保健師です。
セルフケアやラインによるケアが適切に行われているかを監督し、またメンタルヘルスケアの具体的な実施案を企画していきます。

ただし、大企業以外は産業医や保健師がいないことも多く、その場合は従業員が産業保健スタッフを担当することにとなります。

事業場内産業保健スタッフの役割は、メンタルヘルスが不調な従業員を把握し、適切な相談の機会や、セルフケア・ラインケアの教育を実行することです。

また、メンタルヘルスが理由で休職となった従業員が復職する際、職場復帰のプログラムを作る役割も担っています。


事業場外資源によるケア

事業場外資源とは、簡単に言えば、外部の「専門家によるケア」です。
メンタルヘルスに関して専門知識を有する機関や専門家を活用し、メンタルヘルスケアを行います。

事業場外資源とは具体的に、事業場外の医療機関、地域保健機関、従業員支援プログラム機関などです。

事業場外資源は企業と連携し、メンタルヘルスの相談、カウンセリング、復職指導などを支援します。また、企業が適切なメンタルヘルスケアを十分に用意できない場合、専門機関の支援が活用されます。




メンタルヘルスを不調にしてしまう行動

メンタルヘルスが不調にならないように、普段から行動・思考には気をつけておきましょう。メンタルヘルスが不調になりやすい人が陥りがちな行動をまとめましたので、思い当たる節がある方は注意してください。


他人を優先する

自分の感情よりも周囲への配慮を優先していると、メンタルヘルスは不調になりやすくなります。

嫌なのに断ることができず、ストレスを抱えてしまうのです。

他人の気持ちに敏感なことは「空気を読む」能力が長けていて社会人として評価がされます。しかしながら、自分の気持ちを蔑ろにしてしまうので、自分はずっと我慢をした状態です。

納得のできない指図や、強要と感じることには、できる範囲で自分を優先してください。


一人で抱え込む

悩みを一人で抱え込んでしまう癖は、メンタルヘルスの不調に繋がりやすくなります。周囲に助けを求めることができず、一人で解決しようと奮闘するのですが、キャパシティを超えてしまうとストレスで心に負担を与え続けるため安堵がありません。

一人で悩みを抱える人は、責任感が強い性格であると同時に、プライドが高かったり、他人に対して懐疑的であったりする性格も特徴としてあげられます。

悩んで自分の世界だけに閉じこもらず、相談できる人や機関を探しましょう。


生活習慣をおろそかにする

規則正しい生活はメンタルヘルスを安定させる基本です。なかでも睡眠不足はメンタルヘルスの状態に影響が出ることを、2013年に国立精神・神経医療研究センターが発表しています。

睡眠の直前までスマートフォンでSNSを使用している人も多いことでしょう。脳は新しい情報をキャッチするたびに目覚めた状態になります。

体は休みたがっているのに、脳は目覚めた状態で睡眠にはいると、十分な休息を取ることができません。

質の高い睡眠を心掛け、食生活の見直しや軽い運動を取り入れるなど、できるだけ規則正しい生活を送ることで、メンタルヘルスを安定させることが可能になります。




メンタルヘルス不調のサインを見逃さない

メンタルヘルスの不調は誰にでも起こりうることです。
物事に責任感が強い人や、真面目な人こそ、いつの間にか蓄積したストレスでメンタルヘルスに支障をきたし来しがちだと言われます。

「まだ大丈夫」「自分さえ我慢すれば」などとストレスを抱え込まないように、日頃からのセルフケアを取り入れるようにしましょう。また、普段とは違った体調や、感情の起伏があれば見逃さないことはもちろんですが、周囲の人が普段と違った様子があったなら、SOSのサインだと気づくことも大切です。

弊社では、企業様の健康経営を積極的にサポートしています。
健康診断の実施や健康経営についてなどのお悩みは、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。

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引用・参考資料


厚生労働省HP「こころの病気を知る」

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/index.html



国立精神・神経医療研究センター:2013年発表資料

https://www.ncnp.go.jp/press/press_release130214.html