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開かれた次代のトビラ 浦島太郎が見たこの5年の日本の変化と進化

約5年ぶりに日本で生活を始める中で、5年前と明らかに違う変化、次代に向けた着実な進化を実感する。平成の最後に普段の生活の中で感じたことを中心に、浦島太郎の気持ちを吐露したい。

実感する進化の例
①シェアリングエコノミーの基盤化
②外国人労働者、海外製品の受入の加速
③働き方改革の加速、転職の一般化
④街の風景の同質化

①シェアリングエコノミーの基盤化
日本の今の住居を決めた理由が交通の利便性で、それは主に鉄道や通勤を意味しているが、一方で車を所有していないので住居のすぐ近くに24時間営業のレンタカー店があったことも決め手となった。ゴルフで早朝から利用するためだ。しかし引越しして間もなく24時間営業ではなくなり、ゴルフでの利用ができなくなってしまう。困り果てていたところで、街なかによく目をこらすと駐車場という駐車場にカーシェアリングののぼりが立っている。
何のことはなく、アプリで簡単な登録を済ませれば人を介すること無く車が24時間いつでも利用できてしまう。思えばマンションにも共同利用の電動自転車が配備され、都心にもシェアリングサイクルポートが点在している。
メルカリも広義ではシェアリングエコノミーの一端を担っているだろう。個人間取引の礎を築いたヤフオクの時代と異なり、誰もが気軽に出品し、貯まったお金で奮発した食事をしたり、旅行に行ったりする。職場でも家庭でもメルカリでの売り買いの話が出るのは、ヤフオク全盛の頃にはなかった。
モノを持つことが最終的な目的ではなく、何らかの目的(コト)を達成するための手段として社会のインフラが集約、変化しつつあることを実感する。

②外国人労働者、海外製品の受入の加速
コンビニを始めとして、オフィスビル内、駐車場等、到るところで海外の人が働いている。これは今に始まったことではないが、例えば居酒屋や割と有名なラーメン店などでも、日本人従業員の姿はなく、外国人労働者の方だけで回っているお店が増え、少なくとも5年前はこのような光景はあまり見かけなかった。コンビニのカウンターでも、日本人がいなくとも上述のメルカリの発送手続きなどを確実かつ丁寧に対応してもらえる。かつてはオフィスビル内の清掃というと「掃除のおばちゃん」が定番であったが、今は海外の方が掃除機をかけている。駐車場の車の誘導も日本人ではない。
また家電=日本のメーカが定着していたが、家電量販店には海外メーカも増えて少しずつオープンになっていることも感じる。
しかしいずれにしてもまだまだ道半ばであろう。オフィスワーカに海外の方はまだまだ少ない。何でもかんでも受け入れれば良いというものではないかもしれないが、多様性にも目を向けないと発想や視点、論点の矮小化を招きかねない。今はそのバランスを模索している過渡期と理解している。

③働き方改革の加速、転職の一般化
これは業態や会社等により違いはあると思うが、少なくとも私の職場は制度やシステムが導入され、上司が率先して帰宅や休みを奨励するようになっていた。それだけではなく、「働く意味とは」「なぜ仕事をするのか」もセットにして真剣に一人ひとりに問う風土が少しずつ醸成されつつある。
また気づけば35歳限界説もとうに昔の話となり、年齢問わず仕事を変えて活躍する人が身近なところでも急増している。さらに就社ではなく、就職という概念も20~30代を中心に一般化しているように実感する。
自分自身はずっとアドレナリンを放出し続けて働き続けていた気がするが、一方で仕事を止めた瞬間に何も残らない危機感もずっと感じてきていた。また仕事のストレスは仕事でしか解消できない、という考えも根底にあった。ただ時間に余裕を持つことで、こうして日々想っていることを書いて発信できることにも小さな幸せを感じる。
これまで深いレベルでの明確な定義の無かった「仕事」の真意が見直され、その真意の変化が人生の価値観と結びつき、個人のレベルでも実感できるほどに社会や会社が変わったことに驚きを隠せない。良い意味で人生の選択肢が増しているように実感する。

④街の風景の同質化
人口の減少と共に街がコンパクトになり、都心や駅に人や住居が密集するようになってきた。特にここ5年の都心の地価の上昇は顕著で、あちらこちらにタワーマンションが建設されている。その上昇ぶりを目の当たりにして、海外に渡航する前にマンションを買えば良かったと心底後悔する。
ただ、この流れによってどの駅も同じ風景が繰り返されるようになる。それぞれの街の魅力を引き出す都市計画ないままに箱の建設が次々と進む現状は寂しくもあり、いずれは東京、そして日本の魅力を削ぎ落としていくことになりかねない。この点は特許庁長官の宗像直子さんが警鐘を鳴らしていて、僕も同じ思いである。
街のコンパクト化も進化の一端かもしれないが、どこかで一度立ち止まり「街」を最終製品に見立てて、企画・設計から街づくりを始めて欲しいと強く思う。

①~④に示すような個人レベルでも実感できる進化は、それは恐らく少子高齢化に代表される危機的な社会的課題などに端を発したものであると思うが、一方で政府が提唱するソサエティ5.0へ向けた動きに企業や個人が賛同し方向付けされていっていることも見逃せないだろう。限られたリソース(ヒト、モノ、カネ)をどこに投資すべきか、論点を定めて実行に移すには膨大なパワーを必要とするが、少なくとも過去5年でここまで進化できているのであるから、次の5年、10年もきっと暗いものにはならないと信じている。

どのトビラを開けるのか? 今後はまさに自分が身を置くITやテクノロジーが、社会的課題の中心を担いまた進化の一翼を担うだろう。僕個人としては、受け入れるべき同質化・標準化と、その対極の多様性・柔軟性のバランスを重んじながら、多様性の根源である「文化」、「デザイン」そして何よりそれを担うヒトを意識して、自分でできることは取り組んでいきたいと思う。

追伸①
では次にどこに向かうのか?についてはこの本が面白かった。彼の活動から、日本の取り組むべき課題の優先順位を真剣に定めようとしている意気込みを感じる。
落合陽一『日本進化論』(SB新書)
追伸②
意外であったが日本の「デザイン」戦略は"特許庁"が担う役割が大きい。宗像直子特許庁長官の記事は目からウロコであった。デザインの意味は広くそしてまた深い。見た目の美しさの話だけではなく、何事にもデザインが重視される社会になって欲しい。
「デザインは競争力を高める突破口」宗像直子特許庁長官に聞く(日経xTREND記事より)
【宗像x梅澤】「特許庁、デザイン経営への挑戦」(NewsPicks記事より)

いつも読んでいただいて大変ありがとうございます。