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LIBYA UPDATES: April 2020 Week 3 (4/18-24)


こんにちは🕊
毎週、状況が悪くなるばかりのリビアですが、今週も主な出来事をまとめました。

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リビアのこれまで
リビアでは、2011年に40年続いたカダフィによる独裁体制が崩壊。その後、新たな政府樹立を巡り国が分断状態にある。
現在は、二つの「政府」が正当性を主張し合っている格好となっている。首都トリポリを拠点し、国連の仲介で作られた国民合意政府 (以下GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府(以下HoR) だ。
2019年4月、HoRとつながりを持つハフタル将軍率いる勢力(一枚岩ではない)が、首都トリポリへ向かって侵攻を開始。GNAに忠誠を誓う民兵組織などがこれに応戦し、軍事衝突へと発展した。 GNAにはトルコ、ハフタル勢力側にはUAE、ロシアなどがつき、軍事支援などを行ってきた。

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1. ラマダン期間中も続く戦闘

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ラマダンが23日より始まった。
イスラム教にとって神聖な期間で、ムスリムは約1ヶ月間、日中の断食を行う。
だがリビアでは戦闘が終わる気配は見えていない。

トリポリ中心部から65km程度離れたタルフーナ (Tarhouna / Tarhunah) 周辺が戦線となっている模様。

タルフーナの場所はこちら。


ハフタルは23日、オンライン上で演説を実施。「トルコやテロリストに主導権を渡した」としてGNAを非難した。
演説では国民に対し、国連の仲介でGNAの樹立につながった2015年末の政治的合意を拒否することも呼び掛けている。

ハフタルが率いる民兵組織「リビア国民軍」の公式ツイッター。ハフタル、GNA両勢力はSNSを駆使し、プロパガンダ合戦を繰り広げている。


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市民の犠牲も無視できない。
国連リビア支援ミッションUNSMILは今週、人道的な状況が悪化していることに対する懸念の声明を出している。

最近は特に、トリポリ周辺のアイン・ザラ (Ain Zara)地区やアルスワニ (Al-Swani)地区などでの被害が目立つという。いずれも市民が多く暮らす地域だ。
UNSMILによると、この数日で少なくとも市民5名が死亡。28名が負傷している。女性や子どもも含まれているとのことだ。

アイン・ザラ地区はこちら。
トリポリ (Tripoli) と書かれている部分が首都の中心部。


紛争地での市民の犠牲をモニタリングしているAirwarsによると、リビアでは4月の20日程度の間に、市民が巻き込まれる暴力が29件起きている。
発生場所は、主にトリポリとのこと。

これはイラクやシリア、イエメン、ソマリアよりも悪い状態だという。


2. 新型コロナ感染拡大のなか、医療施設が攻撃対象に

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WHO東地中海事務所によると、23日時点で確認されているリビアの新型コロナ感染者は60名。先週よりも12名増えた格好だ。


トリポリを拠点とするGNAは17日より、10日間のロックダウンを宣言。
だが紛争の続くリビアでは、十分な検査や医療の体制が整っていないことが懸念されている。


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これまでに引き続き、医療施設への攻撃も止まらない。
今週は、少なくとも新たに3件の被害が発生した。

トリポリのアイン・ザラ地区では17日、病院が爆撃された。
国連のリビア調整支援事務所が投稿した写真には、壊れた建物やベットの残骸と思われるものなどが写っている。


さらに21日朝には、トリポリの野戦病院2ヵ所が爆撃の対象に。医療従事者5人が負傷。

国際連合人道問題調整事務所OCHAなどによると、リビアでは2019年4月から、23の医療施設が攻撃の被害に遭っており、80人が死亡60名以上が負傷している。
うち約半分の11回は、今年に入ってから起きたものだ。

野戦病院や救急車、医療従事者が巻き込まれた件数はさらに多く、63件になるという。


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英国では20日、リビア出身の医師が新型コロナ感染により死去した。
亡くなったのは、サディク・アルホーシュ医師。働いていた病院にご遺体が戻ってきた際には医師や職員らが集まり、拍手などをして出迎えたという。


地元紙もこのニュースを取り上げ、アルホーシュ医師の人柄を紹介。
外科医であると同時に、夫であり、4人の子を持つ父親だった。同僚からも愛されており、患者からは深く信頼されていた人だったという。


英国でリビア出身者のコミュニティづくりなどに取り組む団体、Libya in the UKも動画を共有。お悔やみの言葉をかけている。


3. 諸外国の動向

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諸外国による動きもあった。
UAEからは先週、飛行機に使われるジェット燃料1.1万トンがハフタル勢力へ輸出されていたことがわかった。Financial Timesが入手した書類による

輸出分は、16日にリビア第2の都市、ベンガジに到着したとのこと。事実なら、2011年より国連安保理により武器禁輸措置に反していることになる。
現在、この件は国連による調査が進んでいる段階だという。


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GNAの内務大臣は21日、ロシアの民間軍事会社(PMC)、ワグナーグループがGNA勢力に対して化学兵器の一種である神経ガスを使用した疑いがあると非難した。

プーチン大統領とのつながりが強いとされているワグナーグループは、約数千人規模の傭兵をハフタル勢力側に送っているとされている。
大統領はロシアの国としてのリビアへの関与を否定している。

国連のステファニー・ウィリアムズ暫定リビア特使は諸外国の介入を受けて、リビアが「あらゆる新兵器システムの実験場」になっていると言及している。


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こうした動きの影響は国連にも及んでいる。
前特使のガッサン・サラメ氏は、健康上の理由で3月に辞任。現在は、次のリビア特使が決まらずにいる状態だ。

次期リビア特使になる可能性があると見られていた、アルジェリアの前外務大臣であるラムタネ・ラマムラ氏が、候補を辞退したことが17日に報じられた。

国連安保理での米国が反対したことが原因。
中東のニュースを報じるMiddle East Eyeによると、背景にはエジプトとUAEによる圧力などがあると考えられるという。ハフタル勢力を支持する両国は、ラマムラ氏が「GNAに寄りすぎている」として、同氏の特使就任を好ましく思っていないとのことだ。


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最後に紛争だけではない、首都トリポリの様子をご紹介。
自分が住んでいた経験からもリビアは田舎と断言できますが、地中海がきれいで、人も親切な場所でもあります。


毎週金曜日の夜にリビア情勢をアップデートしています。
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