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LIBYA UPDATES: April 2020 Week 2 (4/11-17)


こんにちは🕊
今週もリビア情勢のアップデート記事を出します。

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リビアのこれまで
リビアでは、2011年に40年続いたカダフィによる独裁体制が崩壊。その後、新たな政府樹立を巡り国が分断状態にある。
現在は、二つの「政府」が正当性を主張し合っている格好となっている。首都トリポリを拠点し、国連の仲介で作られた国民合意政府 (以下GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府(以下HoR) だ。
2019年4月、HoRとつながりを持つハフタル将軍率いる勢力(一枚岩ではない)が、首都トリポリへ向かって侵攻を開始。GNAに忠誠を誓う民兵組織などがこれに応戦し、軍事衝突へと発展した。 GNAにはトルコ、ハフタル勢力側にはUAE、ロシアなどがつき、軍事支援などを行ってきた。

☞先週のアップデートはこちらから


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1. パンデミックのなか続く戦闘

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世界的な新型コロナの感染拡大が進む一方、今週もリビアではGNA勢力とハフタル勢力の間で戦闘が続いた。

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GNAとハフタル勢力間の戦闘等の件数の月別の推移。新型コロナの拡大以降も件数が増加していることが分かる。
(ACLEDのデータセットをもとに筆者作成。)


3月中旬には両勢力は一度、パンデミックを受け停戦に合意。だが、長くは続かなかった。
以下は、ニューヨークタイムズの映像記者らが作成した表。ハフタル勢力は停戦に合意した直後の3月21日に、市民の暮らす地域に対する爆撃を行っていることを報じている。

*GNA、ハフタル両勢力は、複数の武装組織などにより構成される。そのため、それぞれが一枚岩として機能しているわけではない。


オスロ国際平和研究所によると、停戦合意が結ばれた紛争地のうち、既に合意が破られているのはリビアとウクライナの2ヵ国だという。


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こうした状況を受け、GNAのシラージュ首相は13日、イタリアのラ・リパブリカ紙の取材に対して、「二度とハフタルと交渉の席にはつかない」と話した。

首相は、6日に首都トリポリの病院がハフタル勢力による爆撃を受けたことも非難。「常に政治的な解決を試みてきたが、いかなる合意もハフタルによって拒否されてきた」と述べた。


同日には、GNA勢力はトリポリ西部の街、サブラタ (Sabratha / Sabrata) ほか数カ所を、ハフタル勢力より奪還。サブラタはハフタル勢力にとって、重要な軍事拠点の一つだった。

この過程でGNAは、ハフタル勢力の軍事施設のほか、サブラタの数カ所への爆撃を行ったという。

サブラタの位置はこちら。


国連リビア支援ミッションUNSMILは15日、声明を発表。
GNA勢力が奪還した地域での治安悪化を懸念すると同時に、ハフタル勢力によるトリポリへの無差別攻撃を非難した。


2. 新型コロナウイルス、対応に懸念

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リビアの新型コロナ感染者数は、16日(現地時間)時点で48人。先週の倍以上に増えた格好だ。


GNAは16日、ロックダウンを行うことを宣言。期間は17日からの10日間。


突然の知らせに、トリポリでは買い溜めを行うため、人びとがお店に殺到する様子も伝わっている。


米国のシンクタンクの記事によると、リビアでは検査体制が整っていないことや十分な検査が行われていないことが、少ない感染者数の背景にあるという。

国内にいる20万人の避難民を感染から守る必要もある。
密集して衛生環境の良くない仮住まいに暮らしている人たちもおり、クラスター発生が懸念だ。


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先週に引き続き、今週も医療施設への攻撃が続いている。

国際連合人道問題調整事務所OCHAによると12日、リビア第三の都市ミスラタ近くで空爆が行われ、医療従事者1人が死亡した。

医療施設が攻撃の被害にあうのは、今年に入って8回目だという。

ミスラタの位置はこちら。


首都トリポリでは激しい衝突により、医療施設など4箇所がサービス提供の一時停止に追い込まれた。
影響は500以上の病床に及ぶ。1週間で1万8千件以上の医療関連の相談にも対応できなくなるという。


OCHAは今週、リビアの新型コロナ関連の状況をまとめたレポートを発行。これによると、多くの地域で食糧の不足や価格高騰も起きているという。


3. 移民・難民と新型コロナ

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現在リビアには、多くの移民・難民が暮らしている。
主な出身国は、サブサハラ諸国など。経済的な機会を求めて来る人もいれば、紛争から逃れてきた人もいる。
リビア国内にとどまる移民や難民がいる一方、欧州を目指す人たちも少なくない。

だがこうした人びとの多くがいま、行き場を失っている


14日には、移民・難民50人以上を乗せて地中海を渡ろうとした船をマルタ領海で別の商船が救助。リビア沿岸警備隊がトリポリへと引き戻した。
少なくとも5人が死亡、7人が行方不明だという。

リビアでは、移民・難民の安全が守られていないことが知られている。
特に収容施設の衛生環境は劣悪で、最低限必要なものへのアクセスも絶たれる状態だ。多くが収容施設の職員などによる暴力を経験しているという。


イタリア政府は先週、新型コロナの影響で、移民難民を乗せた船の受け入れを少なくとも7月31日まで停止すると発表している。



参考

リビアにおける移民・難民の問題について整理した拙記事です。


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ニューヨークタイムズは13日、トリポリの様子を取材した7分の動画を公開しました。

新型コロナに感染するか、一瞬でミサイル攻撃に遭うか。どちらによる死がより深刻なものとなるだろうか
そのようなタイトルの付けられた動画には、暴力と新型コロナに苦しむトリポリの様子が収められています。

以下、ダイジェスト版です。映像だけでも現地のことが伝わってきます。


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リビアのこれまでを整理した記事です。
直近の戦争が20年近く続くアフガニスタン。
「わたしたちが続けなければ、"彼ら"が力を持つ。ただ殺されるくらいなら、活動を続けるほかない」。現地で平和教育を続けるアジマールさんのお話しです。



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