Lia the stitcher

ウルティマオンライン bajaシャード在住。

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最近の記事

ウルティマオンライン戦士編「初めてのダンジョン」

「大体の経緯はわかりました。どんなモンスターなら、戦えそうですか?」先生の質問はこうだった。 ええと…。ヘイブンの坑道の、土エレなら… あれは騎士と武士のスキルを習った時に練習したことがある。 「ああ、『訓練用からくり人形』と言われるやつですね」 確かに動きは単調だし遅いし、そうかもしれないけど!あれだって結構大変なのに! 「ほかに、戦ったことのあるモンスターは?ハーピーや、ガーゴイルはどうです?」 いや、あれは怖いです。ハーピーのあの爪だし、空は飛ぶし、ガーゴイル

    • 第五回飛鳥文学賞応募作品「罠箱のすすめ」

      この部屋を、使っている人へ。 この本を見つけたということは、あなたはこの部屋に、多分私の後に入ることになった人だと思います。 先生のところにどうしてくることになったのかは、わからないけれど、この本を読んで私がしたのと同じ失敗をしないでくれれば、と思ってこれを書きます。お役に立ちますように。 ============= 罠箱、trapbox、APB。いろいろな名前で呼ばれている罠箱というのは、要は軽く罠をかけた箱で、パラライズをかけられたときに、作動させるとちょっと自分にダメー

      • 第五回飛鳥文学賞応募作品「武器落とし」

        「いつでもどうぞ」 先生は、私に武器を落とす動きを練習させている。 どうぞ、と言われてもただその場にいるだけに見えるのに、それでは、といってかかっていくのは難しい気がするのは、なぜなんだろう。 「じゃあ、こっちから行きますよ、しっかり武器を持って」 言われた通りぐっと手斧を握る。 先生が細かく動作を分けて教えてくれた、武器落としの技は、いくつかの動きの組み合わせで出来ていて、最後の動きまで出せれば、相手の手から武器が抜ける「はず」。 当てる、巻き込む、押す、上げる。

        • 「チョコレイト」ウルティマオンライン

          少し夜明けが早くなってきた冬の昼下がりに、彼がやってきた。 濡れたブーツ、ちょっと袖口がだめになりかけた上着。 寒さの中を歩いてきたからだろう、頬は赤みを帯びていた。 どこか異国の香りのする、赤い箱。 ハートの形をした、とてもかわいい箱で、一目で女性への贈り物用に作られたことがわかる。きっと、ドレスをきた、美しいどこかのお嬢さんが、お祝いにもらうような。 中身は…。いい匂いがするところを見るとお菓子? バニラの、甘い香り。 この香りは一応は知っている。南の国の植物からとれ

        ウルティマオンライン戦士編「初めてのダンジョン」

          くまちゃん。ウルティマオンライン戦士編

          寒いところにいる、白いクマの姿をしたぬいぐるみは、幼馴染が、家を出る時くれた。 赤いハートを抱えた、かわいいクマはふんわりとしていて、夜にぎゅっとして眠ると、悪夢を見ない。 でも…。最近、このぬいぐるみを見るたびに、家に帰りたくなる。 さらさらの粉雪が降る、ムーングロウが懐かしくてたまらなくなるのだ。 かといって、クマなしで寝たら、悪夢を見て、目が覚めやすい。 ダンジョンで怖い思いをした日なんか、特に。 「どうしたんです?」 朝食の席で先生に訊かれた。 「眠れなかった

          くまちゃん。ウルティマオンライン戦士編

          「アクセサリ」ウルティマオンライン戦士編

          先生にもらったルーンで出かけて、皮を集めるのも、最近は楽しくなってきた。 動物は問題なく狩れるようになってきたので、そろそろ行けるでしょう、といわれているのがこの大きな蛇。 この蛇は実はモンスターの一種らしい。 モンスターは先生と狩りに行く方がいい。でもこれは、普通のモンスターほど狡猾でもなく、動きも単純で魔法も撃たないので、大きいことを除けば、山や野原にいる蛇とそれほど変わらない。 …とか、言えるようになった自分がすごい。 前まではこんな大きい蛇、見ただけで足が動かなくな

          「アクセサリ」ウルティマオンライン戦士編

          「罠箱 」ウルティマオンライン戦士編

          魔法をかけるモンスターと戦うのは難しい。 かなり離れたところから魔法を打つモンスターは駆け寄ってからでないと私には攻撃出来ないから、剣の届く距離に来るまでは、こっちが防戦一辺倒になる。 大体、大きい音が嫌いだ。例えば、本物の雷はもちろん、ライトニングの音が聞こえると、びっくりして硬直、ファイアボールは射程内にいなくても、その場から逃げ出したくなったりする。 多分突然出てくるものは音も光も全部だめ。 だから先生は私に魔法を見る訓練させた。 ライトニングを近くで打たれただけで

          「罠箱 」ウルティマオンライン戦士編

          第五回飛鳥文学賞応募作品「冬の祭り」 ウルティマオンライン

          食料を貯め、壁に厚手のタペストリーをかけて、絨毯を床に。 暇さえあれば薪を割り、瓶詰を作って、塩漬けに燻製に…。 時間はあっという間に過ぎた。 雨水をためる樽が、雪に埋もれたころ、彼がやってきた。 あたたかい部屋の中でなら、雪嵐のなかで穴を掘ってやり過ごす話や、突然の豪雪に迷子になった羊飼いが、羊の群れの中で暖を取り、救助を待った話を聞いてもさほど恐ろしくはない。珍しい話はいつ聞いてもいいものだ。 王城の周りには冬の祭りの屋台が出るらしい。 そこで供される、果物の香りを付け

          第五回飛鳥文学賞応募作品「冬の祭り」 ウルティマオンライン

          「Equip the last weapon-手斧」黒熊亭2023年読書の秋応募作品

          「絶対に、武器を手から離さないように。武器を離すのは、死ぬときだけです」 私がちゃんと攻撃して、ダメージを与えている間は、何も怖がることはないと先生は言う。 武器から私に体力、マナ、スタミナが送られてくる。 リーチのついた武器をしっかりと持っていれば、大丈夫なのだと。 とはいえ…。今日の訓練はちょっと、痛すぎの怖すぎだった。 先生が持っているナイフは、獲物の解体に使うような、戦闘用ではないタイプなのに、どうしてこうも武器が落とされるんだろう。 私が握っているのは、訓練

          「Equip the last weapon-手斧」黒熊亭2023年読書の秋応募作品

          ウルティマオンライン 黒熊亭読書の秋2023応募作品 「秋の海」

          「海を、見たことはあるか?」 突然、聞かれた。 ない。 ただ、うちのそばにある池からは川が流れだしていて、海につながっているのだと聞いたことはある。 この世界は、大きな水たまりの上に木の葉が浮いているような造りになっているのだという。 すべての地面、島の周りには水があって、船にのればどこへでもいけるのだと。 「じゃあ、見に行くか」 海は遠いところにある。 家畜の世話を考えると、遠出は得策ではない。 朝、家を出て、夕方には帰って来られる場所じゃないと出かけるわけにはいか

          ウルティマオンライン 黒熊亭読書の秋2023応募作品 「秋の海」

          11月の海

          #わたしと海 将来に展望が持てず、お金もなく。当時の私はブルーな毎日を過ごしていた。 バイト代は楽器のレッスン代に消え、伝統的な価値観を大事にしていた親は私が四年制の大学に進学するのに反対だった。 「おう、最近どないしとんや」 年上の友達の電話に、私は、ぐだぐだと愚痴をぶちまけた。 「気分転換に週末遊びに行こか、空いてる日ぃはあんのんか」 「海でも見に行って、飯食うて帰ろ、どや」 海なんて、ずいぶん見に行ってなかったし、私は食いしん坊だ。もちろんオッケー、行くよ、ありがと

          初めての「ひとりで海外」に行く息子

          Don't drink the tap water, k? バックパック下ろしたら、足に挟むのよ?ぽんと置いちゃダメ。 「おかーさん!!Daaaad、why don't you say "have fun" and such? 」 ああ、そうなんだけどね? そうなんだけど!! そう、彼は初めて、一人で…でもないか。同じ学校の子たち、8人とアメリカに行くのだ。短期留学と言えば聞こえはいいが、まあ、サマースクール、留学というほどの濃さも長さもないが、本人の熱烈な希望もあるし、将

          初めての「ひとりで海外」に行く息子

          あなたが誰でも…(ブリタニア飛鳥第四回文学賞投稿作品)

          私と、羊とヤギ、牛。それから鶏。 ささやかな藁ぶき屋根の家。そして小さな畑。 麻や綿を紡ぎ、春には家畜が増え、夏には収穫が。 秋には染色、そして冬には機を織る。 季節は廻り、年月は過ぎてゆく。 どこかから口笛が聞こえる。 くたびれた皮のコートとズボン 青いジャーキンに、同じ色の皮のブーツ。 「水を汲ませてくれないか」 そういって、彼は持っていた革袋に水を詰めた。 旅人の権利については、私も知っている。 平和に旅をする者は、共同の井戸から水を汲める。 それを邪魔してはいけ

          あなたが誰でも…(ブリタニア飛鳥第四回文学賞投稿作品)

          「月曜日のたわわ」に思ったこと

          私は実は結婚するまで、トランスジェンダーか、クロスドレッサーかと勘違いされるぐらいスカート履かなかったし、態度も女性ぽくならないようにしていた。 友達からも〇〇君と男の子っぽく呼んでもらっていた。 男女区別なく友達がいたし、グループでよく遊んだものだった。 グレーや、ブルーの無地のTシャツ、胸当てのついた、子どものはくようなデニムのオーバーオール。露出度は最低ライン、私は夏でも、長いパンツをはいていた。 私は、スカートを履いて、化粧をしている時に態度が変わる人が嫌いだった。

          「月曜日のたわわ」に思ったこと