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「アクセサリ」ウルティマオンライン戦士編

先生にもらったルーンで出かけて、皮を集めるのも、最近は楽しくなってきた。
動物は問題なく狩れるようになってきたので、そろそろ行けるでしょう、といわれているのがこの大きな蛇。
この蛇は実はモンスターの一種らしい。
モンスターは先生と狩りに行く方がいい。でもこれは、普通のモンスターほど狡猾でもなく、動きも単純で魔法も撃たないので、大きいことを除けば、山や野原にいる蛇とそれほど変わらない。

…とか、言えるようになった自分がすごい。
前まではこんな大きい蛇、見ただけで足が動かなくなっただろう。
先生は「面倒ですからね、私は皮は店で買っています」と言っていたけれど、それはやっぱり御曹司。
先生の鎧づくりは、趣味なのだそうで、私が渡された鎧はよく見ると相当上等だった。

たかが蛇狩り、たかが鹿狩りで、傷んでいくのがもったいない。
自作の鎧で鹿を狩っていたら
「なぜ渡したのを着ないんです?」
もったいないから、としか言いようがなかった。

「いくらでも作れるんですから、毎日着ておきなさい」
とやんわりしたお小言をもらうことになったが、あの縫い目の細かさ、材質の均質な肌理、かかっている魔法に、防御に、抵抗値。どれをみても一級品で、本当にもったいない…。何なら晴れ着の代わりにしようかというぐらいだ。

アクセサリも渡されているが、これも同様にもったいない。
「ぴったりのアクセサリが手に入りましたよ」
と、大変上機嫌の先生が帰ってきて、そのあと手渡されたアクセサリは、武器の振り速度が10%上がるほかに、いろいろな能力値や、武器のダメージが上がるような効果が付いているものだった。

「これをしていれば、早く武器が振れて、さっさとモンスターが倒せて、体力もたくさん回復する、優れものですよ」
鎧を着て、アクセサリを両手につけた私を、先生が点検しながらニコニコと教えてくれた。

こんないいアクセサリ、みたことない。
普通の…もっと特徴がないものなら、それほど強くないモンスターでも、アクセサリを落とすことはある。
手に入れたことも、店に売っているのをみたこともあるけれども、確かこういうのはとても高いはず…というか、この近隣では見たこともないようなものだというのはわかる。
もったいないな…。

そんなわけで、そのアクセサリは私の部屋の宝石箱の一番上に飾られ、私は自分でとった、それほどすごくもないブレスレットをして、狩りをしている。
皮は、先生が使っている工房に入れておいてもいいし、自分で使って軽いアーマーや、服をつくってもいい。
それに売ったらお小遣いにもなるのだ。お金の重要性を最近ひしひしと感じている。
何でも自分で作って採ってどうにかして、ないものはない、で済ませていたのが、先生の所へ来てから難しくなっている。
まず訓練で物を作って売る時間がない。食べるものと住むところに不自由はないけれども、あまり先生にものをもらうのも気が引ける。細かいものは自分で買いたい。
それに…。あんまりみすぼらしいのも、先生と一緒にいるとよくない気がする。

いくら貧しい庶民の出とはいえ、下働きに来ているわけではないのだから、先生の評判にもかかわる。ある程度見栄えのいい恰好というのは、要る。
皮狩りはそんなわけで、必須なのだった。

***

「神秘装備を揃えましょうか。神秘宝石を取りに行きましょう」
先生が、神秘宝石というものを取りにつれて行ってくれることになった。
曰く、神秘装備というのは、皮で出来た手袋やブーツが代表的で、それに神秘宝石を使ってチャージをしておいてから身に着けると、秘薬を使わずに魔法が使えるらしい。

秘薬を持ち歩くより簡単なので、非常時のためにバックパックにいれておくといいということだった。

"Ilshenar mint"と、街へ飛ぶ水晶玉の前で唱えて着く、小さな村落から、洞窟を抜けて行った先で先生が「ジュカシリーズ」と呼んでいる、嫌に大きな敵と戦うことになった。

動きは遅いけれど、大上段から振りかぶられる剣は怖い。
こっちはちょこまかと手数を稼ぐしかないわけで。
「ちょっと、手袋外してください」
先生が私を止めた。
先生は、戦闘中だったモンスターにとどめを指し、手袋を外した私の装備を点検した。

「これは、私が渡したアクセサリではありませんね?」
あ…血の気が引いた。
これは、もったいないからと私が普段使ってるやつ…
「どおりで、最速で武器が振れていないわけですよ」

先生が私をくるりと回して手を後ろにねじりあげた。
ぴしりとされて悲鳴を上げた私の上に、大音響で雷が落ちる。
うわあん!!!!ごめんなさい!

先生は、どこからかこのナイフを調達してきた。振ると雷が出るもので、「教育的指導専用です」とご機嫌で先生が繰り出している。
もちろん先生が刃のエッジの方を使わないのはわかっているし、手加減されているのもわかっているけれど、痛いものは痛い。

「間違えるのなら、外さない!鉄則です」
半べその私に念押しをしてから、ゲートを出してくれた。
一度帰って、アクセサリをつけなおして、再度狩り。
「ったく、手間かけたんですから、さっさと狩るんですよ」

そんなわけで、このアクセサリはずっとつけたまま、外すの厳禁となった。
「減るのに…」
としょんぼりとアクセサリを眺める私に先生は
「なあに、そんなもの、取りに行きゃいいんですよ」
と涼しい顔。
えー?取りに、ってどこに?

「いいとこですよ、ふっふっふ」

きっと、すんごく怖いモンスターが出るところに決まってる!!
背中が、ちょっとぞくっとした。


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