見出し画像

初めての「ひとりで海外」に行く息子

Don't drink the tap water, k?
バックパック下ろしたら、足に挟むのよ?ぽんと置いちゃダメ。
「おかーさん!!Daaaad、why don't you say "have fun" and such? 」
ああ、そうなんだけどね?
そうなんだけど!!

そう、彼は初めて、一人で…でもないか。同じ学校の子たち、8人とアメリカに行くのだ。短期留学と言えば聞こえはいいが、まあ、サマースクール、留学というほどの濃さも長さもないが、本人の熱烈な希望もあるし、将来アメリカの大学に行けるほどお勉強好きでもないし、多分この手のことをやる最後の機会になりそうだしね…と決めた話だった。

私も夫も在米が10年ぐらい。その後も1年だの半年だの、夫の仕事の都合で滞在しているため、いろいろと覚えることはあった。
私の意見としては、「あの国は、慣れれば住める」ぐらい。
夫は「仕事があれば、まあ、住んでもいいよね」程度。若い頃はアメリカで仕事をしたいと思ったこともあったらしいが、結婚していた私が断然食べ物の違いに我慢が出来ず、「なるべく日本で就職して…アメリカでもなんとかするけど、出来れば日本がいい」と言ったため、今は日本在住。

息子の滞在経験は、小学生の時に2度、合計1年半。
英語は当時現地の小学校に放り込んでも問題ない程度には準備しておいたし、今もつまり年齢相応程度にはいけるはず(これはクラスメイトも同じ)だ。

そこは問題ないけど、問題は細かいところにある。
例えば、治安の悪さ。それから非常時の対応。
パスポートをなくしたら、どうするか。
シェアルームの寮に入るので、どうやって貴重品を保管するか。
週末街へ出て安全なのはどのぐらいの時間までか。

領事館の連絡先をメモして渡す。
貴重品はスーツケースに入れて保管すること…とクドクド教え、ランチはOKだが、ディナータイムは中高生の出歩く時間ではないこと、買って帰れ、とか、暗くなるまで出歩くな、とか、もう心配で仕方がない。

9時だの10時だのまで、ティーンエイジャーが電車に乗って移動出来る日本とは事情が違う。
ルームメイトや、掃除やメンテナンスの人による窃盗などという事態も十分想定しておかないといけない。
スマホを取り出して時間をみるのはやめておけ、腕時計もっていけ、な?安くて正確、お父さんのセイコーを貸してやるから(1000円)。
(スマホを取られたりするから。外では出さない方がいい(場所によるけど)

私の方はといえば、「洗濯機に入れるのは、洗剤が先だからね?その上から洗濯物載せて、coldかwarmで洗濯してね、hotだめだからね!
そう、アメリカの洗濯機は、ヨーロッパ式「煮洗い」を踏襲しているため、Hotの温度設定が半端ない。アメリカ製の靴下ならともかく、日本で買ったやつはあっちの「普通の温度」で洗濯、または乾燥させたら、激しく縮むのだ。

ああ、心配。
ドラッグ売られたらどうしよう…。
アメリカの大学にはマジでドラッグの売人が出る。
私も見たことある(州立大学)。
「わかってるって、大丈夫」

Don't leave your bag at the seat when you order, k?
そう。テーブルを確保ということで荷物を置いて、ファーストフードの注文に行く人は日本では多い。多いけどアメリカでそんなことやったら、あっというまにかばんがなくなる。
帽子や傘でもやらないぐらいだ。

"I know, Don't worry, Dad"
彼はそういうけど、ああ、心配…。
今まで一緒に連れて行ったことしかないわけで。
私達夫婦二人は、もう飛行機に乗ったら、切り替えていろいろ注意するモードに入っている。
荷物への注意の払い方、周りへの警戒度がぐっと上がる。
特に息子が小さかった時の私の警戒度の上がり具合は母熊同然。
これはまあ、習慣と慣れの問題なわけで。

財布の中に現金をたくさん入れないとか、ショッピングセンターで破裂音がしたら、とか、ガソリンは暗くなったら入れにいかないとか、ガソリン入れる時は必ず車のドアをロックするとか…駐車場に止める時の位置に気を付けるとか、そういうことは、もう二人とも無言で対処しているから、口に出して教えたことはそういえばなかった。

口では大丈夫といっても、忘れ物をしたり、テスト勉強がテキトーで点数が悪かったりする息子をみているわけだから、その「大丈夫」が、"you guys worry too much"が空手形に見えて仕方がない。

クラスメイトとdowntownに遊びにいったら…
バスのtransitの仕方、教えてなかったな…あれわかんないよな…
せめておなかの薬ぐらい持たせるべきだったか?
あー。あとボールペン!一本ぐらい持ってるといいんだけど…
あっちのボールペンひどいのがあるからな…。あと鉛筆で書くな、という授業もあったりするから…

ああ、心配。
高いお金出して行かせるんだから、何かをつかんで帰ってきてほしい、いい体験をしてほしいと思っていたけれど、もう無事に帰ってきてさえくれれば、なんでもいいよ…。

ふと、昔を思い出す。
息をしているか、確かめた赤ちゃんの時。
勉強なんか出来なくても、体育が苦手でもいい。
生きてさえいてくれれば。

そうだったなあ…。そうだった。
生きて、無事でいてくれさえすれば。
なるべく幸せでいてほしい。
自分の人生を、幸せに生きてほしい。

そう思いながらリビングにいったら、息子の靴下が落ちてた。
洗濯した新しいやつ(ペア)と脱ぎ捨てたやつ(バラバラの2つ)が。

だーかーら。洗濯物は洗濯籠へ!2歳のころから教えてるのに、定着しないなあ、もう!!!
それとこの新しいペアはスーツケースに入っているべきペアではないのか!足りなくなったらどうするのよ、何足入れてったの!

親の悟りは、10分もたなかった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?