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青春物語

57
携帯のない時代の青春物語です。 初めて本気で人を好きになった片想いのお話です。 1話〜57話ですが毎日少しずつUPしてたので案外短いです。
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2020年10月の記事一覧

安易に彼と関わりたくなかった/青春物語41

翌朝、会社でのラジオ体操後、小林さんが近づいて言った。 「おはよう。今日、ご飯食べに行か…

きなこ
3年前
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自分が一番許せなかった/青春物語40

お正月休みが終わった。 各部署ではお得意先への新年の挨拶回りに出かけ始めていた。 少しざわ…

きなこ
3年前
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不倫関係でもあるまいし/青春物語39

お正月に小林さんと会った。 母の実家から義兄の運転で寿駅まで連れて行ってもらった。 待ち合…

きなこ
3年前
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お正月休み、どうするの?/青春物語38

仕事納めの日、珍しく小林さんが私のところにやって来た。 「ねぇ桜田さんはお正月休み、どう…

きなこ
3年前
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ちっぽけなプライドを守ろうと/青春物語集37

しばらく走ると視界が遮られていった。 大粒の涙が両頬を伝っていた。 彼への想いが募っていた…

きなこ
3年前
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一週間前のあのひとときは何だったのだろう?/青春物語36

その日、彼とは朝 顔を合わせただけだった。 私はこれから何か変わるかもしれないと心の中で思…

きなこ
3年前
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彼にのめり込んでいく自分が怖かったのかもしれない/青春物語35

大川ちゃんの手元を見ながら、あの日のことを思い出していた。 週明けの朝礼前、永尾さんが私の机にやってきて「はい、コレ」と言った。 見ると机の上に(CABIN)のマッチ箱が置かれていた。 「ええ〜もらって来てくれたの?」 「だって金曜日、それが欲しいって言ってたじゃん」 「ありがとう。もらえるとは思わなかった。本当にありがとう」 私は嬉しくてたまらなかった。 それは欲しかったマッチ箱が手に入ったからではなく、彼がわざわざもらって来てくれたと言うことが嬉しかった。 「あれ?中

まだマッチ箱、集めている?/青春物語34

「次の次の信号を左だったよね?」 助手席の永尾さんはまっすぐ前を向いたまま言った。 「あ…

きなこ
3年前
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二人でどっか行くとかって思っているんじゃない?/青春物語33

開かれたダッシュボードの中にはマッチ箱が何個か入っていた。 「永尾さんも集めているの?」…

きなこ
3年前
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変なリアクションするなよ/青春物語32

「タバコ吸っていい?」 永尾さんは駐車場を出ると私の方を向いて言った。 「いいよ。落ち着…

きなこ
3年前
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バレるよ、私用で車を使ったって/青春物語31

雪道をノロノロと走りながら富樫さんは言った。 「映画でも観に行くか?」 「うん、行こう行こ…

きなこ
3年前
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私みたいな子供を手玉に取ることぐらい簡単だろう/青春物語30

一緒に朝を迎える。同棲…同棲… 思いがけない古賀主任の言葉に反応して何かが胸に突き刺さっ…

きなこ
3年前

彼が彼女と同じ朝を迎えていた/青春物語29

「なに言ってるの、永尾さんったら。飲み過ぎた?」 バックミラー越しに運転手さんと目が合っ…

きなこ
3年前
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俺がそばにいるみたいでいいんじゃない?/青春物語28

彼が離れると、それまで黙って私の隣にいた天野ちゃんが言った。 「あれ絶対、永尾さんも桜田ちゃんに気があるよ」 「そんなことないよ」 「だってコート着てストーブに当たってるのにダウン掛けて行くんだよ?」 「女の子に優しいんだよ、永尾さんは」 「自分は雪の中、出て行くのに着ないなんてさ」 「だから優しいんだって」 「今がチャンスだよ。気持ち伝えなよ」 「・・うん。できるかな」 そう言って私は彼のダウンに首をすくめた。 彼の匂いがした。 私は昨日のタクシーの中でのことを思い出した